KDDIは先日、音楽の世界をさらに広げるサービスとしてデジタルラジオによる楽曲のダウンロードサービスを開始すると発表した(11月16日の記事参照)。「音を中心にした新たな放送サービスを展開したいと考えている」と竹之内氏は話す。
通信ネットワークを使った音楽情報のダウンロードは、例えばテレビの音楽番組で“着うたプレゼント”などを実施すると、番組終了後にトラフィックが急増するという。その結果「ネットワークの接続状況はほぼフルフルで、たまにはパンクするかな、というところまで行く」(竹之内氏) そこで、デジタル放送波を使って音楽ファイルをダウンロードする方法を導入する。
例えば、放送中にナビゲーターがいろいろな音楽をレコメンドした場合、通信ではこうした音楽をいっせいにダウンロードするのは不可能に近い。しかしデジタルラジオなら、これを暗号化した音楽ファイルとして放送受信中にあらかじめ端末に配信しておくことができる。視聴者がその楽曲を欲しいと思えば、無線ネットワークでライセンスだけ取得すればいい。KDDIではこのように「通信と放送をうまく切り分けた形で、今後、音楽に対する利用者のニーズに応えていきたい」(竹之内氏)と考えている。
auの「EZブック」は、専用ビューアを用意し、ケータイ向けに最適化された文字や画像で小説や漫画を楽しめるサービスだ。特徴としては、先にデータを一冊分丸ごとダウンロードすること、BREWにより高速な動作環境を実現していること、専用ビューアで最適化されており見やすいこと、効果音や振動など、ケータイならではの表現効果が得られることなどが挙げられる。
このKDDIの電子書籍サービスが今、著しい伸びを見せている。旧来のPCやPDAによるサービスの市場は、1995年から2002年までの8年間でようやく年間10億円の規模に成長したのに対し、現在では年間で24億円、月間では10月に3億円と、急成長している。市場成長率は、他のデジタルコンテンツが100〜110%程度なのに対して、EZブックは190%と、その伸びの早さは類を見ないほどだ。
「電子書籍が面白いのは、女性に人気が高いこと。いままでデジタルコンテンツというとたいてい男性が購入しており、だいたい7対3くらいの割合で男性だったが、電子書籍は女性が多い。最新のデータでは男性が45%に対して女性が55%と、コンテンツでは初めて女性が男性と逆転した。いままで女性というといわゆるコミュニケーション系サービス、メールやSNSを中心に携帯電話を使っていたが、初めて女性にウケるデジタルコンテンツとなった。中心となっているユーザーはだいたい20代〜30代の女性だ。男性も伸びてはいるのだが、コミックや小説よりも、アニメや写真集の利用が多い。今後はコミック系に力を入れて、男性ユーザーも掘り起こしていきたい」(竹之内氏)。
auのデジタルコンテンツは「SMIL(スマイル)」形式を利用している。このフォーマットはほとんどの端末がサポートしており、マルチメディアファイルを一括して配信できるのが特徴だ。動画付き、壁紙付き、着メロ付きといった、付加価値をつけた配信が可能。それぞれのコンテンツは単品でも提供できるが、複数のファイルを1つにまとめられる。竹之内氏は、これによっていくつかのコンテンツが活性化できるのではと考えている。
「コンテンツのカテゴリー別の売上げ状況から見ると、着メロは微減、画像も横ばいだ。こうした、コンテンツプロバイダの持っている権利を活性化しようと、KDDIではいくつかのコンテンツプラットフォームを用意している。今まで提供していた着メロや待受画像のデータをいかに活性化させるかが今年度のテーマになっている」(竹之内氏)。
今秋から始まった「EZトークコレクション」「EZケータイアレンジ」「デコレーションメール」「待受Flash」「着Flash」(8月29日の記事参照)などはまさにその活用例だ。
「EZケータイアレンジは、特にMNPで他社から移ってきたユーザーにとって便利なサービスだ。MNPで新たにauの端末を入手したり、機種変更で新しい端末に変えたたりしたユーザーは、最初に単品でいろいろなものをダウンロードしている。自分好みのケータイに変えていくことを最初の1週間くらいは一生懸命やる。それが、ケータイアレンジなら一気に変えられる」(竹之内氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.