「W44K」は京セラにとっての新たな一歩──“WIN最薄”が生まれるまで「W44K」開発陣インタビュー(1/3 ページ)

» 2007年01月15日 18時58分 公開
[遠藤学(聞き手:平賀洋一),ITmedia]

 auの2006年秋冬モデルの中で、最薄を誇るのが京セラ製のWIN端末「W44K」だ。薄型モデルではあるものの、塗装面などの傷の付きにくさを表す鉛筆硬度の規格で、一番硬い「9H」相当の強化ガラスを液晶パネルに採用。強化ガラスは背面のハーフミラーパネルにも使っており、折りたたみ時でも傷が付きにくい仕様となっている。

 厚さ15.3ミリ──現行のWIN端末では最も薄いW44Kはどのようにして誕生したのか。薄さを実現するための工夫や端末へのこだわりを、京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部 商品戦略部 商品企画1課1係の宮坂俊至氏と、通信機器関連事業本部 マーケティング部 商品戦略部 デザイン課 デザイン係 責任者の板野一郎氏に聞いた。

Photo (写真左)京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部 商品戦略部 商品企画1課1係 宮坂俊至氏
(写真右)通信機器関連事業本部 マーケティング部 商品戦略部 デザイン課 デザイン係 責任者 板野一郎氏

何も犠牲にせず薄型化を実現

PhotoPhoto ボディカラーはスティルネスシルバー、フレグラントピンク、ラストラスブラックの3色を用意。「ピンクは膨張色にならず、甘くなりすぎないように心がけた。若干鋭さのあるピンクというか……本体表面のみピンクで、そのほかの部分はシルバーにしたのもそれが狙い。コンセプトカラーのシルバーは、ブラックとのツートーンにすることで、実際よりもかなり薄く見せることに成功した。ブラックは端末の表面部分をピアノブラック、中をマットブラックにして変化をつけている」(板野氏)

 薄さと持ち運びやすさを重視して作られたというW44K。15.3ミリという薄さにどうしても目がいきがちだが、W44Kはユーザーが欲しいと思う機能をしっかりと詰め込みつつ薄さを実現したことが最大の特徴だと宮坂氏は話す。

 「数字だけを見れば、W44Kより薄い端末はある。ただそれらの端末は、薄くするために何かの機能を失っていることが多い。それでは駄目だろうと考えた。W44Kは基本的なトレンドスペックを搭載したうえで、どれだけ薄くできるかに挑戦した。バッテリーも通常の端末と遜色のないものを採用している」(宮坂氏)

 W44Kの連続待受時間は約260時間、連続通話時間は約190分。カメラはAF付き有効201万画素CMOSで、2.4インチのメインディスプレイと0.76インチのサブディスプレイを備える。また、メインとサブの液晶部分には強化ガラスを採用。これにより薄さだけでなく、強度も確保した。基本的なトレンドスペックを搭載し、ユーザービリティを大切にしながら、これまで京セラが培ってきた技術を昇華して薄型化を実現した。その例となるのが「W31K」でも採用されたフレームレスキーだ。

Photo キーとキーの間に段差を設けることで、境目が分かりづらいという問題を解決した

 「ダイヤルキーの押しやすさを確保しつつ、できるだけ薄くしている。薄くするだけならシートキーという選択もあったが、これだとユーザビリティとのトレードオフになる。フレームレスキーは厚みがあるので不利だが、使いやすさを考慮してあえて使った。キーのところに段差を設けることで、フレームレスキーにありがちな、つながっている隣同士のキーの境目が分からないという問題を解消している。ユーザビリティを大切にしつつ薄くする。トレードオフをせずに薄型化を実現できた」(板野氏)

 何かの機能を犠牲にしてでも薄くするという考えはなかったため、当初は厚みの寸法に目標値を設定しなかった。しかし、目標値がないと何と何がトレードオフになってしまうのかも議論できない。そこで厚みの目標値を15ミリに設定した。次に取りかかったのはこのサイズで剛性をどのように確保するか? という問題だった。

 「薄くすればするほど物理的に剛性を確保できなくなる。それを補うために強化ガラスを使った。強化ガラスを大きく使ったため、ねじれない、たわまないという副次的な効果も生まれた。試行錯誤の連続だったが、京セラはツーカー時代に薄型モデルを出しており、その技術資産がW44Kに生きている」(板野氏)

 「強化ガラスは薄くできて、傷に強い。耐久性の指針では、6B〜9Hの鉛筆硬度で9H。通常のアクリル処理だと2H。理屈から言えば、一番傷に強い素材になる。薄くしたうえで強化する。ユーザー的には傷がつかないというのがかなり響いているようで、良い要素になったと思う」(宮坂氏)

 薄くする、耐久性を高めるというだけでなく、ねじれない、たわまないというメリットも生んだ強化ガラス。今後も薄型モデルを継続していくかについては、まだ具体的に詰めていないとしたうえで、「薄くなればなるほど開けにくさなどの問題も出てくる。開けやすくするための機能など、問題をしっかりとつぶしていき、薄さと使いやすさを両立させたい」(宮坂氏)と話した。

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