さまざまなシーンでワンセグを楽しめるように──「SH903iTV」開発秘話ワンセグをスマートに、より美しく──「FOMA SH903iTV」 第3回(1/3 ページ)

いつでもどこでも、気軽にワンセグを楽しんでほしい──。ドコモのシャープ製ワンセグ端末「SH903iTV」は、そんな思いから開発された。ドコモ向けのAQUOSケータイ誕生の裏側を開発陣に聞いた。

» 2007年03月16日 10時00分 公開
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 ケータイにワンセグ機能を求める多くのユーザーの声に応える形で、ドコモにも独特のサイクロイドスタイルを採用したAQUOSケータイ「SH903iTV」が登場した。

 シャープとしては、すでに他キャリア向けにサイクロイド機構を採用したワンセグ端末を供給しており、ドコモ向けワンセグ端末の開発も容易だったと考える読者もいるかもしれない。しかし、ドコモ向けのワンセグ端末開発は初ということで、過去機種からのノウハウもほとんどなく、事実上一から開発するに等しい状態だった。

 開発陣の思いは「いつでもどこでも、気軽にワンセグを楽しんでほしい」という一点に集約される。開発の現場では、そのためのさまざまな努力を惜しまなかった。SH903iTV誕生にまつわる数々の秘話を、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部の大屋修司氏、福山享弘氏、第一ソフト開発部の大久保宏氏、第二ソフト開発部の西田陽亮氏、第一技術部の山下宏人氏、第二技術部の片山智文氏、そして通信システム事業本部 デザインセンター 水野理史氏に聞いた。

Photo 左から通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 第一ソフト開発部 大久保宏氏、パーソナル通信第一事業部 第二ソフト開発部 西田陽亮氏、デザインセンター 水野理史氏、パーソナル通信第一事業部 商品企画部 福山享弘氏、パーソナル通信第一事業部 商品企画部 大屋修司氏、パーソナル通信第一事業部 第一技術部 山下宏人氏、パーソナル通信第一事業部 第二技術部 片山智文氏

「テレビが見たくなったらディスプレイを横に倒してほしい」

Photo 商品企画部の大屋修司氏

 SH903iTVの開発者たちがドコモ向けAQUOSケータイの開発をスタートするにあたり、まずクリアしなくてはならなかったのは、新しく作る製品が“AQUOS”の名に恥じない機能と性能を備えた、業界を引っ張っていくような製品であるということ。商品企画部の大屋氏は「大前提として、AQUOSケータイとはこうあるべきという姿がある」と話してくれた。

 「まず、大きく高画質なディスプレイを持つこと。そしてテレビ視聴に最適なスタイルを備えていること。さらにAQUOSというブランドにふさわしい高品位なデザインを備えていることが条件となります」(大屋氏)

 もちろんSH903iTVはこれらの条件を満たしているわけだが、本機の魅力はそれだけにとどまらない。この“AQUOSケータイのDNA”といえる部分を継承しつつ、さらに新しい考え方を盛り込んでいる。それが、FOMAのマルチタスクを活用した「マルチウインドウ」だ。

 「ワンセグの画面とメールを同時に表示できる端末は以前からありました。しかし、FOMAにはもともとマルチタスクで複数のアプリが同時に動かせる土壌があったため、ここにいかにワンセグを入れ込むかというところで頭をひねりました。結果的に、テレビを見ながら何かができる、“ながら見”の機能を搭載できました」(大屋氏)

 SH903iTVでは、ほかの機能を使っているときでも、テレビが見たいと思ったら、ディスプレイを横に倒すだけでワンセグが起動する(一部非対応の機能もある)。iモードサイトの閲覧中やメールの作成中であっても、画面を横向きにするだけでテレビが見られるわけだ。ワンセグが起動しない場合でも、必ずユーザーインタフェースは横向きに切り替わる。ワンセグと共存できないアプリや機能を終了すればワンセグが起動するし、横向き表示に対応していないiアプリなどを利用していた場合は「縦に戻してご利用下さい」といったメッセージも表示される。ワンセグ起動後も、ダイヤルキー下部に用意された[TV]キーを押せば、いつでもワンセグ起動前に使っていた機能に戻れるなど、ユーザーが直感的に操作できるよう配慮されている。

快適な使用感を実現するための数々の苦労

PhotoPhoto 第一ソフト開発部の大久保宏氏(左)、第二ソフト開発部の西田陽亮氏(右)

 ユーザーから見ると至れり尽くせりのワンセグ機能だが、開発側では苦労も多かったようだ。ワンセグの録画機能など、ミドルウェアの開発を担当した第一ソフト開発部の大久保氏は「ドコモ向けのワンセグ搭載端末の開発が初めてということもあり、ノウハウもなく、ソフトも一から開発する必要がありました」と当時を振り返った。

 リファレンスとなるものもなかったので、最初は「どう作ったらいいか」という検討から始めた。実際にアプリが動き始めてからも、マルチタスク時のパフォーマンス配分などで苦労を重ねたという。「マルチタスク環境では、例えばワンセグの録画中であってもいろいろなことができます。何か別の作業をこなしながらでも、録画に失敗するわけにはいきません。マルチタスクの組み合わせにはいろいろなパターンが考えられるので、それぞれの作業を考えながら試行錯誤を繰り返し、負荷のバランスを検討しました。特に企画担当者からは、録画していてもしていなくても同じように動作するようにしてほしいとの要望があり、苦労しました」(大久保氏)

 一方ワンセグ視聴アプリなど、ユーザーインタフェース周りの開発に携わった第二ソフト開発部の西田氏は、「液晶が横に回転し、画面いっぱいに表示してテレビを見られるので、いかにユーザーが使いやすいテレビ機能を実現するか試行錯誤を繰り返しました」と話す。特にマルチウインドウ周りはアイデア段階からこだわりを持って作り込んだ。マルチウィンドウは、試作するまではワンセグの画面が小さくなりすぎて、見にくいのではないかと懸念されていたものの、実際に動かしてみると思った以上にきれいに表示できたことから、完成したときの喜びもひとしおだったという。

 横向き表示への対応も、ソフトウェア開発担当者が苦労した部分である。大屋氏をはじめとする商品企画のメンバーは「ディスプレイが回ったときに画面が横向きになるのは許さない!」と主張していたとのことで、SH903iTVはディスプレイを回転させると必ず横画面で操作できるようになっている。横向き表示は全アプリケーションに関わるため、ワンセグとの同時表示を含め、ソフト開発者全員が今までのソフトウェア資産を生かしながら実現するのは大変なことだった。

 SH903iTVの、約5時間20分というワンセグ連続視聴時間も、開発陣の努力のたまものだ。これは贅肉を落とすように、消費電力を少しずつ削って実現したという。ワンセグの機器部分やディスプレイの画質など、SH903iTVの要となるAV機能を中心としたハードウェア全般の開発に関わった第一技術部の山下氏は「例えば液晶のバックライトを効率のいいものに変えたり、自動調光の精度を従来より向上させ、周りの明るさに合わせたバックライトの輝度調節を可能にするなど、細かな項目まで徹底して削減しました」と話した。

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提供:シャープ 株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日