「我々は安物のキャリアにはならない」──イー・モバイル、新規参入への強い意気込みInterview(1/2 ページ)

» 2007年03月26日 11時11分 公開
[神尾寿,ITmedia]
Photo イー・モバイル代表取締役社長の種野晴夫氏

 3月31日、新規参入キャリアのイー・モバイルが、ついに携帯電話事業を開始する。すでに同社は3月1日から予約申し込みの受け付け中(3月1日の記事参照)。最大3.6Mbpsの高速データ通信、シャープのスマートフォン「EM・ONE」の投入など、注目度も高い。

 イー・モバイル 代表取締役社長の種野晴夫氏に、携帯電話新規参入の意気込み、今後のビジョンについて聞いていく。

固定からモバイルにブロードバンドを広げる

 2005年11月、総務省から新規参入キャリアとして携帯電話事業の免許が交付されたのが、イー・モバイル、BBモバイル(ソフトバンク)、アイピーモバイルの3社だった(2005年11月の記事参照)。その後BBモバイルは、ソフトバンクがボーダフォンを買収したことで1.7GHz帯の新規参入からは撤退し(2006年4月の記事参照)、“既存キャリア”になった。残った2社のうち、先陣を切って商用サービスを開始するのが、イー・モバイルということになる。

 イー・モバイルは新規参入が議論されていた当時から現在に至るまで「日本の携帯電話料金が高すぎる。特にデータ通信はスピードが遅く、ユーザーが満足できるサービスになっていない」(種野氏)と主張してきた。

 「我々はADSLの会社として、固定系で高速・定額のサービスを実現しました。今度はそれをモバイルの分野で実現しましょうというのが、基本スタンスなんです。こういった(高速で定額の)データ通信サービスは、日本にはまだない。それを我々が提供すれば、お客様のニーズはあると考えています」(種野氏)

 携帯電話料金の部分だけに目を向ければ、ボーダフォン買収後のソフトバンクモバイルが音声定額(ゴールドプラン)や基本料の安いプラン(ホワイトプラン)を矢継ぎ早に投入するなど、価格競争が活性化する動きは見え始めている。しかし、イー・モバイルはそれでも価格競争が不十分と感じているようだ。

 「もともとはイー・モバイルとソフトバンクが新規参入事業者として切磋琢磨し、日本の携帯料金を下げて行ければと考えていました。しかし、ソフトバンクがああいう形(ボーダフォン買収)でドロップしてしまって、新規参入キャリアではなくなってしまった。我々としては残念に思っています。

 特にデータ通信料金の部分に目を向けますと、お客様が安心かつ満足して利用できる環境にないと感じています。我々としては、まずデータ通信料金の部分で競争して、その後に音声の部分で競争していく戦略をとっていきます」(種野氏)

 その結果として、イー・モバイルのデータ通信料金は、下り最大3.6Mbpsで月額5980円になった。むろん、PCも含めて完全な定額制だ。単純なコストパフォーマンスで見れば、携帯電話キャリアはもちろん、ウィルコムに対しても優位性がある。この価格は、「お客様のニーズや利用傾向を分析し、サービス発表の一週間ぐらい前まで議論して決めたもの」(種野氏)だという。

 「この値段はお客様の(料金値下がり)ニーズに応えられるようにと頑張ったものですが、新規参入キャリアですので最初から採算度外視というわけにはいきません。採算がとれるギリギリの価格設定をしました。

 我々は良質なサービスをフェアな価格で提供したい。(マーケティング的に)奇をてらうつもりはありません。不当に安くもしないし、不当に高くもない価格設定ではないかと自負しています」(種野氏)

EM・ONEのクオリティにかけた想い

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 イー・モバイルは新規参入当初から、料金面での競争活性化を訴えていた。それを鑑みれば、採算のとれる範囲内で、市場にインパクトのある価格で参入したのは想定どおりと言える。一方で、多くの業界関係者とユーザーをいい意味で驚かせたのが、シャープ製の「EM・ONE」投入だろう。これはWindows Mobileを搭載したシャープ製のスマートフォンであり、性能・デザイン・質感ともに日本メーカーの面目躍如ともいえる高いレベルを誇っている。イー・モバイルは新規参入ながら、国内でトップレベルのスマートフォンを最初から導入するのだ。

 「我々は安い料金でサービスを提供しますが、“安物のキャリア”にはなりたくない。(携帯電話業界の中で)存在感があって、きちんとした品質のあるキャリアになりたい。

 お客様に端末を見ていただいた時に、優れた品質のものでないと、キャリアのイメージが悪くなってしまう。(EM・ONE投入は)安っぽい端末で安い料金ではなくて、高品質な端末で安い料金という形にしたかったのです。日本のお客さんは、いいモノが欲しいんです。安物は欲しがらない。その点で、EM・ONEは高品質な端末を求めるお客様のニーズに応えられるものになっています」(種野氏)

 確かにEM・ONEは、同じシャープ製のスマートフォンの中でも質感が高く、「コストがかかっている」と感じさせる。触った時の感触はノキアのEシリーズなど海外のハイエンドスマートフォンに近く、高級感がある作りだ。「安物のキャリアになりたくない」という想いは、EM・ONEの中にしっかりと息づいている。

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