あの“Carrots”が復活──東芝がPHSに再参入する理由(2/2 ページ)

» 2007年05月31日 21時50分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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 そのため「携帯他社のように何機種もいっぺんに出すというわけにはいかないが」(土橋氏)、ラインアップの強化は必須項目となる。例えば“カメラ付き携帯は持ち込み不可”などセキュリティレベルの高いオフィスで勤務する人も多く、仕事用に2台目を所持するビジネスユーザーに対してもニーズに沿ったさまざまな仕様の端末を用意しておきたい。

 また、「WX310SA」(2005年11月発売)を製造する三洋電機が携帯とデジタルカメラ事業を抜本的に見直す見通しであることや、音声端末以外にもソフトバンクモバイル向けの「X01T」など、W-ZERO3シリーズと同様のWindows Mobile搭載スマートフォンを開発できることなども、携帯端末製造、開発に長ける東芝をウィルコムが熱烈に口説いた理由の1つと思われる。

photo WX320TやWX320K、9(nine)の新色も含めた新ラインアップ。ウィルコムはこれら音声端末以外に、6月7日には注目の新スマートフォンの発表も控えている

東芝とウィルコムの組み合わせ、この先は

 2001年当時、KDDIグループだった当時のDDIポケット(現ウィルコム)を含めて、同グループは想定シーン別に──auを軸に、DDIポケットはデータ通信に特化、ツーカーはシンプル携帯というように──棲み分けされていた。しかし「当時、DDIポケットとしてのマーケットニーズが(データ通信のみでは)具現化しなかった」と土橋氏は当時を振り返る。そのため、結果として新製品を投入しなかっただけであり、「東芝さんはPHSを撤退したわけではないと理解している」(土橋氏)と説明する。

 ともあれ、ユーザーや市場から見ると「一時撤退し、再参入する」という理解でよいと思うが、少なくともかつてのPHS端末に冠していた“Carrots”ブランドを継続して採用し、「現在の市場環境ならば」と新機種を投入する東芝の意気込みは感じられる。

 2007年5月現在、東芝はauとソフトバンクモバイル向けを中心に端末を製造し、MM総研調べによる2006年の国内携帯端末出荷台数シェアで第3位にある。シェアトップはシャープ(携帯4キャリアとウィルコムに納入)、2位はパナソニック モバイルコミュニケーションズ(ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルに納入)。出荷台数シェアは納入キャリアが多いほど有利という状況にあるが、東芝がその施策としてウィルコムを選択したのは「ドコモ向け端末は技術開発やキャリアの要求レベルに追随するのが困難で、差別化や製品へのメリットもなかなか出せない状況がある」(岡本氏)ことが理由の1つのようだ。

photo ウィルコム 執行役員副社長の土橋匡氏(左)と東芝 モバイルコミュニケーション社統括技師長の岡本光正氏(右)

 東芝は自社端末のシェア拡大を狙うべく「ウィルコム向けのスマートフォンやW-SIM対応端末の開発も、時期や内容はまったく未定だが検討しているのは確か」(岡本氏)とし、ウィルコムも強力な料金プランを整えた今、ビジネスユーザーにも訴求できる端末ラインアップを強化したいという思いが強い。両社は今のところ相思相愛の様相で、光明も見えるわけだが、今後、どのような関係を続けていくのか。行き着く先はやはり携帯のように、“多品種少量生産”の方向なのだろうか。

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