デザインより、実用性・こだわり機能で勝負!の携帯電話韓国携帯事情

» 2007年06月15日 23時25分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国では「プラダケータイ」や「チョコレートフォン」などデザイン重視の携帯電話が人気を博している。しかし、実用性や機能にこだわった端末がなくなったわけではない。デザインケータイのような派手さはないが、特定ターゲットへ向けた端末や、ビジネスに役立つ端末など、機能や実用性重視の携帯電話に注目してみた。

人間工学に基づくケータイ“ワインフォン”

photo ワインフォンのカラーはブラックとレッド。本体にパールを効かせた深い光沢を持つ、高級感あふれる外観だ

 LG電子は、30〜40代をターゲットにした“ワインフォン”こと「LG-SV300(SK Telecom)/LV3000(LG Telecom)」を発表した。“ワイン”には、成熟した世代、経済力があり自分だけのスタイルを追い求める世代、といった意味が込められているという。

 ワインフォンの特徴は「分かりやすさ」に集約される。ボタンやスピーカー、ディスプレイが表示する文字は「通常より2倍大きくした」(LG電子)もので、ディスプレイの下にアラーム・日程・音声録音・環境設定にアクセスするための4つのワンプッシュボタンが付いている。

 カメラはマクロ撮影にも対応し、小さな字を拡大して見るなど虫眼鏡や拡大鏡の役割も果たすという。

 LG電子は「ユーザーが携帯電話の販売店に入り、携帯電話の電源を入れたところからのすべての行動を綿密に観察した」とコメントしており、徹底的なリサーチを行ったことがうかがえる。ユーザーの不満の声を分析した上で開発されたワインフォンは、大韓人間工学会が主催する人間工学デザイン賞を受賞した。

photo LG電子は好評を博したバナナフォンに、さわやかではつらつとした夏らしい印象を与える「緑のバナナフォン」も追加した。LG電子によると「緑は心理的な安定感やストレス解消、集中力強化に効果があり、カラーセラピーでもよく登場する」という
photo IM-S200Kはホイールキーを採用している。同社では以前も別の機種でホイールキーを搭載していたが、キーを回す際に指が滑ると不評だったのでこれを改善。IM-S200Kではホイールキーに滑り止めが装着された

 LG電子はほかにも、使いやすさに配慮した“バナナフォン”こと「LG-SV280(SK Telecom)」もラインアップしている。これは顔の輪郭にあったカーブした形状が特徴の携帯電話だ。

 スライド携帯で気になる点といえば、スライドさせた際にマイク部分が口元から遠ざかり、声が届いているのか不安になること。顔の輪郭に沿うようなバナナフォンなら、そうした心配とも無縁だ。

 Pantech&CuritelがSKYブランドでリリースしている「IM-S200K」(KTF)は、手にしたときの「グリップ感」を追及した端末だ。本体の幅41ミリという数値は、同社の調査結果から、ユーザーがもっとも握りやすい数値として割り出したものだ。

 角張ったふちをカッティング処理し、本体に丸みがついている。これが手にフィットするので、しっくりと手の中に収まる。

スピード命の携帯電話

photo LG電子のLG-KH1300。日本をはじめとした海外でのローミングが可能となっている。価格は40万ウォン台(約5万3000円)

 HSDPAといえば高速通信が大きな特徴だが、そのスピードを最大限に生かす携帯電話も増えてきた。LG電子の「LG-KH1300(KTF)」は、下り最大3.6Mbpsの高速データ通信が可能だ。韓国のHSDPA対応端末はまだ最大1.8Mbpsまでしか対応していないものが多く(2006年2月の記事参照)、通信速度を重視する人を中心に、LG-KH1300が人気を集めている。

 またLG-KH1300は、HSDPAでテレビ電話をいっそう楽しめるように、チャット用ウィンドウでアニメーションやアイコンを送る機能を備えた。さらに、暗い場所でもテレビ電話を楽しめるよう、低照度でも鮮明な画質を維持するディスプレイを採用した。

 韓国の高速移動通信といえば「WiBro」もあるが、今まではPCカードモデムしか出ていない状況で、PCがなければWiBroを利用できなかった。しかし最近、Samsung電子がWiBro対応のスマートフォン「SPH-M8100」を発売した。KTのWiBro網で利用でき、スマートフォンで動画共有やWebメール、教育用コンテンツが楽しめる。

photo SPH-M8100は地上波DMBの受信も可能。ディスプレイは2.8インチと大きく見やすい

今後、販売予定の実用性重視携帯

 数多くの携帯電話が登場する韓国で、もっとも大きな注目を集めているのがMotorola製の「RAZR 2」だ。折りたたんでいても、メールなど一連の操作ができる「Tandem display」を採用し実用性が増している。発表時は日本でも話題になった。

 このRAZR 2は、6月に世界に先駆けて韓国で発売される。Motorolaは韓国で最初に販売することについて「韓国市場を重要視しているため」とコメントしている。

 韓国では初代RAZRが大変な人気となり、Motorolaのシェアを3位に押し上げた。しかし最近は、そのRAZRブームも下火となり、Motorolaもシェア3位から転落している。供給側としても、RAZR 2にかける期待は大きい。

photophoto 「RAZR 2」(左)。デザインに加え機能性も追加したモデル。DMB機能(デジタル放送)がなく残念という声もあるが、SKTのGPSサービス「NATE Drive」に対応し全国地下鉄路線図や33万語の英韓辞書も内蔵する。予想価格は50万ウォン台(約6万6000円)

「SCH-B710」(右)の価格は70万ウォン台(約9万3000円)といわれている。6月中に発売予定

 Samsung電子は、地上波DMBと衛星DMBの双方を受信できる「デュアルDMB携帯」こと「SCH-B710(SKT)」を発表した。地上波・衛星DMBに両対応するのは韓国初。テレビ視聴に最適な横向きディスプレイに対応し、2つの番組を1画面で表示するPIP(Picture in Picture)機能もある。

今後はどんな機能が登場するか

 携帯電話は今後、どんな機能を搭載しようとしているのだろうか。韓国の特許庁によると、最近は携帯電話によるセキュリティ機能に関する特許が増加傾向にあるという。

 こうした特許は1997年ごろから出願され始め、2000年に入り出願数が増加。2005年8月には96件に達し、現在は401件が出願されているという。出願数の急増ぶりがうかがえる。

 特許出願の内容としてもっとも多いのが金融関連で、40%を占める。次にビルへの入出管理・防犯、ユーザー認証、車両保安などの順だ。

 特許庁ではこのほか、禁煙を助けるような機能、音楽や映像に立体感を与える機能などに関する特許も増加中と報告している。

 こうした機能が実際に搭載されれば、携帯電話はさらに多様化し実用性も高くなっていくだろう。ただし、今回紹介した携帯電話にはそれほど奇抜なものはなく、ワインフォンのように基本に立ち返ったものが多い。

 端末は今後も進化を続け、新しい機能を持つだろう。しかし多くのユーザーは、分かりやすい操作で確実に動作し、かつ長く使っても飽きが来ない、基本的な端末を選ぶのかもしれない。

photo 特許出願される、セキュリティ機能の内容の比率(特許庁資料より)

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年