多様化するニーズに合わせ、これからも端末ラインアップを広げていく──シャープ 長谷川祥典氏ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(1/2 ページ)

» 2007年06月19日 16時43分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2005年度、NECとパナソニックモバイルの「2強メーカー」を下してトップシェアを獲得したシャープ。昨年のワンセグ人気と、番号ポータビリティ(MNP)による端末特需でもシャープはその強さをいかんなく発揮し、引き続き端末市場シェアナンバーワンの座をキープしている。

 シャープはなぜ強いのか。そして、今後の携帯電話端末市場をどのように見ているのか。シャープ通信システム事業本部長、常務取締役の長谷川祥典氏に聞いた。

Photo シャープ通信システム事業本部長、常務取締役の長谷川祥典氏

シャープが目指す「オンリーワン」のモノ作り

ITmedia シャープは2005年度に端末シェアナンバーワンの座を獲得し、その後、その位置をキープしています。シャープでは今の好調をどのように分析していますか。

長谷川氏(以下敬称略) 昨年で言えば、(番号ポータビリティ開始直前の)後半から我々のシェアが高くなってきました。製品で言えば、AQUOSケータイの第2弾が出てきてから、市場の評価がいっそう高くなったと感じています。

ITmedia AQUOSケータイは昨年のシャープを象徴する端末でしたね。

長谷川 特に「911SH」では液晶が大きくなり、一方で端末は薄型化。サイクロイド機構も(ユーザーに)受け入れていただき、“AQUOSケータイ”が本当の意味で認知されたモデルだと思っています。

 また、AQUOSケータイ以外では、シャープ端末全体で素材感を追求しました。金属や金属蒸着を用いるなどして、質感の向上に努めました。これらの取り組みが評価されて、“シャープのファン”になっていただくユーザーが増えてきたと感じています。

ITmedia なるほど。シャープは液晶やカメラなどデバイスの魅力が強いメーカーで、それは今も変わらないわけですが、AQUOSケータイのように消費者にとって“わかりやすいシャープブランド”ができてきたのもポイントですね。

 ところで、シャープというと液晶デバイスの性能に定評があるわけですが、それ以外の競争優位性というのはどこにあると考えていますか。

長谷川 これはシャープ全体のDNAと言えるのかもしれませんが、常に“オンリーワン”にこだわっている点が挙げられます。携帯電話の世界でオンリーワンというのは出しにくくなってきていますけれど、意識としてはオンリーワンや世界初を目指しています。

 むろん、このスタンスが取れる背景には、デバイス開発や家電開発を行う部門の存在があります。こういった横の連携が取れることも、今後の強みになってくるんじゃないかと思います。

ITmedia 振り返ってみますと、シャープの携帯電話は古くはカメラ付きケータイやカラー液晶搭載機に始まり、最近ではAQUOSケータイやPANTONEケータイなど、ユーザーの目を引くものが多いですね。驚きがある。

長谷川 驚かせようとしているわけではありませんが、商品を出すときには「いかにお客様に感動していただくか」を重視しているのは確かです。すべての端末で新鮮さや感動をお届けできるかというと難しいですが、端末開発における命題の1つですね。

“FULLFACE”が狙う新たなセグメント

ITmedia 今年の夏商戦モデルで最も目新しかったのが、ソフトバンクモバイル向けの“FULLFACE”「913SH」 です。昨年、サイクロイド機構を搭載したAQUOSケータイがかなり強いブランド力を得たわけですが、その成熟期のさなかに“FULLFACE”という新たな機構を打ち出した。その狙いは何でしょうか。

長谷川 AQUOSケータイを最初のワンセグケータイとしてブランド化しましたが、我々はワンセグがかつてのカメラのようにほとんどの商品に搭載されると考えています。となると、全部(のシャープ製端末)が全部、サイクロイド型になるというのは違うだろう、と考えたわけです。

ITmedia ワンセグケータイのもう1つの形が913SHである、と。

長谷川 ええ。すべての人がワンセグを中心にケータイを選ぶかというと、それは違うと思います。何かの時にワンセグを見ることがある。しかし、メインはケータイとしての使い勝手。そういう人はもちろん多いわけですから、ワンセグ対応の端末として多くのフォルムを模索しておく必要があるわけです。

ITmedia 昨年お話を伺ったときは、まさに“これからはワンセグ”という時期で、その中でワンセグを見やすい端末としサイクロイド機構のAQUOSケータイが注目されました。しかし、これからはワンセグが普遍化していくので、求められるフォルムもまた変わるわけですね。

長谷川 二極化すると考えています。テレビを中心に考える人はAQUOSケータイのような端末を選ぶでしょうし、メール中心の人は(サイクロイドとは)別のフォルムということになるでしょう。“FULLFACE”は両者の中間的なポジションを狙うものです。

「使いやすさ重視」で成功したベーシックモデル

ITmedia シャープはAQUOSケータイなどハイエンドモデルのイメージが強いのですが、最近、私が高く評価している端末に、ベーシックモデルの「SH703i」や「812SH」があります。実際、SH703iは販売も順調で、このセグメントが比較的弱点だったシャープにとって“変化”ではないかと感じています。

長谷川 ベーシックモデルで最初に手応えを感じたのは、(ソフトバンクモバイル向けの)「705SH」ですね。あれを作った後に、このまま薄型化していくのか、それとも“使いやすさ”という方向に舵を切るのかという議論がありました。705SHは金属キーで若干使いにくいという声もいただいていたのですが、ベーシックモデルはやはり使いにくいと言われてはいけないんだろうなあ、と考えて「薄さはそこそこで、使いやすさを重視したモデル」に舵取りしました。その結果、誕生したのがSH703iや812SHです。

ITmedia 最近の携帯電話は音楽やワンセグ、おサイフケータイなど多機能化が進んでいるわけですが、一方で「使いやすさ」の追求が重要である、と。

長谷川 そうですね。将来的にはハイエンドモデルも使いやすさ重視になっていくのでしょうけれど、現時点で見れば“ハイエンド”と“使いやすいベーシックモデル”は分かれていますね。

ITmedia 使いやすさ重視というと、中高年層向けモデルも売れていますね。販売ランキングを見ていると、ドコモでは「らくらくホン」が売れに売れています(6月15日の記事参照)。シャープも先日、ソフトバンクモバイル向けに「GENT 812SH s」を出されました。この市場はやはり大きいのでしょうか。

長谷川 我々はさまざまな調査を行っているわけですが、そこで「ケータイは普通のデザインが欲しい。だけど(ケータイの)文字が見えにくくなってきた」という声がかなりあることに気づきました。それならば、デザインは普通のもので、文字だけ大きくして使いやすくしたモデルで市場に問うてみようかな、とGENTを開発しました。

 まだ発売前なので結果はわかりませんが、個人的には、この市場は今後も広がるのではないかと見ています。

ITmedia GENTは、ドコモのらくらくホンに比べるとターゲット層が若いといいますか、もう少し幅広い年齢層にフォーカスした端末ですよね。

長谷川 視力が落ちてくるという点では、40代後半から携帯電話の文字は見えにくくなってくるのです。僕もそうですけれど(笑)。それで、そういった人たちがシルバー層向けの端末を持ちたいかというとそうじゃないでしょう。

 それにもう少し上の年齢層を見ても、今の50代は昔の50代と違います。まあ実年齢の8掛けくらいです。今まで携帯電話を活用されてきた人たちでもあるので、(これまでのシルバー向け端末のような)シンプルフォンじゃなくて、これまでと同じ携帯電話で文字だけ見やすくした端末の市場があると考えています。

ITmedia GENTは「シルバー向け」というイメージがないのが好印象なのですが、そこは狙ってやっているわけですね。

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