ワクワク感のある製品を開発するのが我々の役目──ソニー・エリクソン 高垣浩一氏ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(1/2 ページ)

» 2007年07月09日 23時37分 公開
[石川温,ITmedia]

 日本の端末メーカーには国際競争力がない──。そう言われるようになって久しいが、例外といえるのがソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズだ。2001年10月に、ソニーとスウェーデンのEricssonが持つ携帯端末事業を統合して生まれた同社は、今やフィンランドのNokia韓Samsung米Motorolaに次ぐ世界第4位の携帯電話メーカーとして世界市場に君臨する。

 そんな同社の日本向け端末開発はどのように行われているのか。現在は海外向けの端末とは異なるプロセスで開発されている同社の製品だが、今後同社の製品展開はどうなっていくのか。常務取締役の高垣浩一氏に話を聞いた。

Photo ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 常務取締役の高垣浩一氏

改めて使い勝手にこだわった端末を出していく

ITmedia ソニー・エリクソンが今後重点的に力を入れていくポイントはどんな部分でしょうか。

高垣浩一氏(以下敬称略) 我々ソニー・エリクソンとしては、現在2つの点にこだわって端末開発を行っています。1つは、“BRAVIA”や“ウォークマン”といったサブブランドの付いた製品です。ただ、ブランドをつけただけでは意味がありません。技術的に優れたもの、BRAVIAなら色、ウォークマンなら音など、そのブランドに付随するこだわりを込めたものを出していく必要があります。

 もう1つのポイントは、スタンダードラインの差別化です。商品でいうと「SO704i」や「W51S」などが該当します。シンプルで基本機能がしっかりしているだけでなく、デザインや着せ替えなどのプラスアルファの要因を加え、女性を中心にユーザーを獲得していくつもりです。

 また、今年になって、使いやすさを向上させるために専門のプロジェクトを発足させました。ユーザーにいろいろアンケートをとると、まだ『使いにくい』という声が聞かれます。そのため、携帯電話の基本である使いやすさにこだわった製品を、今年から来年の商品として開発していきたいと思っています。

ITmedia 御社の場合、使い勝手のよさという点ではすでに定評があるかと思うのですが、どのあたりに開発のターゲットを置いているのですか?

高垣 使いやすさといってもいろいろな要素があります。一番分かりやすいのはキーのピッチやタッチです。ここにはガイドラインを設け、ベンチマークテストなども行っています。

 あとは感覚的に分かりやすいかどうか。それに加えて、レスポンスの速さですね。これはハードウェアとソフトウェア、両方に起因するものですが、カメラのシャッター速度やメール作成時の文字変換速度などは、ユーザーにとって気になる部分だと思います。

 つまり端末全体で、トータルな使いやすさにこわだわっていこうということです。現在、いろいろな部分で改善を進めている段階です。もっとも使い勝手の追求にゴールはないので、数年かけて改善していきたいと考えています。

ITmedia 具体的にはどんなことがプロジェクトを作るきっかけになったのですか。

高垣 あるモデルのユーザーアンケートに“使いにくい”という結果が多くありました。それが大きなスタートになっています。使いやすさはソニー・エリクソンがさらなる飛躍をする上で、欠かせないポイントです。いくら高機能な端末を開発できても、ベーシックな部分はしっかりできていなくてはいけないはずです。ロイヤルカスタマーを大切にして、「次もソニー・エリクソン」と言ってもらえるような製品作りをしていきたいですね。

ITmedia 今後、共通プラットフォームなどが登場していきますが、そういったときにもメーカー独自としての「使い易さ」は追求できるものなのでしょうか。

高垣 その点は追求できると考えています。メカの領域においては、そこのこだわりを忘れなければ、他社よりも使いやすくできると考えています。

 確かに、共通プラットフォームに起因する部分での差別化は難しくなっていくでしょうが、不可能ではないし、なんらかの形でチューニングは可能だと考えています。

ITmedia ダイヤルキーの形状のようなユーザーインタフェース(UI)の部分、またスライド、折りたたみといった端末のスタイルの部分では今後、変化はあり得るでしょうか。

高垣 中長期的なレベルで見ると、いくつか登場し始めているタッチパネルなどはブレイクする可能性があると思っています。しかし、日本人のすべてが、そういった端末を好むとは限りません。まずはテンキーベースの端末開発をしっかり抑え、先々に向けて先行検討、開発していきたいと考えています。

端末開発の差別化ポイントはAVライン、薄型化も追求

Photo

ITmedia AVラインの今後の戦略はどう考えていらっしゃいますか。

高垣 AVという部分は、我々にとって一番の差別化ポイントだと思っています。共通プラットフォームになると、なかなか差別化しにくくなりますが、その中で我々が特徴を出せる部分といえば、やはりAV系ということになっていくでしょう。

 BRAVIAやウォークマンなどに代表されるサブブランドを付けるか付けないかは別として、例えば動画再生時の絵作りや音楽再生時の音質などにはこれからもこだわっていきます。ただブランドを付けるのではなく、なぜそのブランドを付けたのか、なぜそのブランドが付けられたのかという、技術を裏付けるという点にこだわっていきます。

 1つ例を挙げると、au向けに供給している「ウォークマンケータイ W52S」であれば、ただウォークマンというブランドが付いているだけでなく、長時間の動作が可能なスタミナバッテリーや2Gバイトの内蔵メモリ、そして高い音質といったように、エンジニアレベルから意識してこだわりを持ったものづくりをしています。

ITmedia 「W44S」なども相当、こだわりが反映されたモデルになっていましたよね。

高垣 W44Sは、とてもうちらしい製品だと言えますね。ソニー・エリクソンはこういったことをやるんだというメッセージが示せたのは良かったと思います。まさに、企画意図通りの製品になりました。ユーザーからの反響も狙い通りだったので、ああいった製品も継続的に出せればいいと思っています。

ITmedia ただ、技術にこだわりすぎているのか、若干、製品投入のタイミングが他社に比べて、遅れているような気がするのですが。そのあたりは今後改善されていくのでしょうか。

高垣 おっしゃるとおりです。「SO903iTV」に関して言うと、投入のタイミングが遅れた影響はありました。FOMAでは最後発メーカーということもあり、正直今までは製品を出すだけで手一杯だった部分がありました。しかし今後は、発売時期に関しては追い付けると思っています。もう少し待っていただければ、それなりのタイミングで出せるようになるはずです。このあたりはエンジニアも理解しており、こだわりすぎて遅れるというのはなくす方向にあります。

ITmedia スタンダードラインは今後、どう差別化していくのでしょうか。着せ替えなどは、他社も追随してきていますね。

高垣 我々が他社に比べて遅れていると認識しているのが薄型化です。もう少し薄さにこだわった使いやすさを追求していきたいと思っています。単純にスペック争いをして薄型化を追求するのではなく、使いやすくするために薄さを求める方向を目指していきたいです。

 先日発表した「W53S」では、100枚以上の着せ替えに取り組んでいます。まだ詳細は明らかにできませんが、100枚はこだわりをもってやっています。単純に色を変えましたというのではなく、着せ替えの本家本元としての世界観を出して行ければと思っています。

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