Symbian OS v9.5でマスマーケットに斬り込む──SymbianのクリフォードCEO

» 2007年07月17日 23時40分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo Symbianのナイジェル・クリフォードCEO

 「売上の25%を占める日本は、Symbianにとって重要な市場。2007年第1四半期は2006年第4四半期から販売数が30%伸びており、ライセンシーの良い製品が良い結果を出した」──。Symbianの2007年のビジョンを説明するために来日したナイジェル・クリフォードCEOは、日本市場が同社にとっていかに重要であるかを、このような言葉で示した。

 日本市場は3月末時点でSymbian OS搭載機の累計出荷台数が2000万を突破するなど好調に推移している。1000万台を突破するまでに3年かかったものの、2000万台突破はその後1年で達成。開発期間の短縮や端末の差別化を簡単に行えるというSymbian OSのメリットが数字に反映された格好だ。

 この2000万台突破を、世界中のSymbianスタッフが「寿司と酒でお祝いした」とクリフォード氏。シンビアンの久晴彦社長は「Symbian OS開発者の多くは英国人。開発者が日本の端末のパフォーマンスや機能を知らないと本当にいいものができないので、こうしたイベントを通じて“日本は重要でおいしい市場”というイメージを持ってもらうことが大事」と話す。また、定期的に“ジャパンデー”を設け、日本の最新端末を開発陣に見せて機能を説明しているといい、「日本に開発拠点を持たない会社にとって、このような取り組みは重要なこと」と説明した。

Photo 日本のSymbian OS搭載機の出荷が2000万台に到達するまでのマイルストーンと寿司パーティの様子。回転寿司と酒、ビールで2000万台突破を祝ったという

2007年第1四半期も好調に推移──シンビアン久社長

Photo シンビアンの久晴彦社長

 Symbianの2007年第1四半期の業績について説明した久社長は、この四半期のトピックとして(1)第1四半期出荷台数1590万台(2)ワールドワイドで1億2640万台の累計出荷台数(3)日本で2000万台の累計出荷台数(4)114モデルのSymbian OS搭載機(5)7478種のアプリケーション(商業ベース)(6)Sony EricssonへのUIQ売却完了 を挙げた。

 売上高は2006年第4四半期の4490万ポンドから4130万ポンドと減少しているが、これはUIQからのロイヤリティ収入がなくなったことや、“数量割引のロイヤリティ”を取り入れたSymbian OS V9搭載機の出荷が始まったことなどによるもので、「健全な状態」(久氏)とした。

 第1四半期のスマートフォン市場におけるワールドワイドのシェアは72%を占め、市場に投入されたモデルが累計114機種、開発中の端末が63機種にのぼるなどペースが上がっていると久氏。日本市場でも累計出荷台数が2000万台を突破したことに加え、7月17日時点で搭載モデルが60機種に到達。2006年度の国内市場で55%のシェアを獲得するなど好調に推移している。「富士通のらくらくホンシリーズが好調で、シャープや三菱電機、ソニー・エリクソン・モバイルも底堅い需要がある。Symbian OSを搭載することで、メーカーも順調にシェアを伸ばしている」(久氏)

 今後も携帯向けOSの専門メーカーとしてパフォーマンスや基本機能、省エネなどの面で機能の向上を図ってキャリアやメーカーをサポートするとともに、メーカーの海外進出にも協力するとした。

Photo 2007年第1四半期の出荷台数(左)と財務データ(中)、スマートフォン市場でのシェア

Symbian OS v9.5はマスマーケット向け端末もサポート──クリフォード氏

 クリフォード氏は、2007年にスマートフォンの出荷台数がPCを上回ったことに触れ、机の上のPCがもたらしたパーソナルコンピューティングを携帯が次のレベルに推し進めているとした。「コンピュータよりも安価な携帯電話が、どんどんパーソナルコンピューティングの役割を担ってきている」(クリフォード氏)

 こうした需要が増える中、スマートフォンには安定と成熟、すばやく必要な情報にアクセスできる機能が求められるという。先進的な携帯電話の市場でユーザーのニーズを満たすために必要な要素としてクリフォード氏が挙げるのが、端末開発時に容易にセグメント化できるようにする技術や、個人やユーザーが簡単にカスタマイズできる機能、さまざまなハードウェアやフォームファクターに対応できるようにする能力などだ。

 このような市場動向から、ソフトウェアプラットフォームを構築するネットワーク事業者が増えており、欧州の5つの通信事業者がSymbian OSとUIをプラットフォームとして選んだとクリフォード氏。採用した通信キャリアが享受できるメリットとして端末の開発コスト削減や開発期間の短縮、容易に差別化した端末を開発できる点などを挙げた。

 また、安定したプラットフォーム上に、より多くの機能を統合できるのもメリットの1つだと説明。日本のSymbian OS搭載機に平均して3カ月ごとに新たな機能が搭載され続けた例を示し、これが端末の差別化に貢献して新たなセグメントへの訴求につながるとした。「われわれは多様性があり、変革をもたらす力を備えたエコシステムのハブになっている」(クリフォード氏)

 クリフォード氏は、このSymbianの好調なスタートを2007年の後半以降も維持するとし、3月に発表した「Symbian OS v9.5」がそれに貢献するという。「Symbian OS v9.5には70以上の新機能が盛り込まれ、その中にはバッテリーの持ちを良くしたり、メモリを効率的に使うようにするための機能も含まれる。このプラットフォームで、高度なマルチメディアやエンタープライズの用途だけでなく、マスマーケットの市場にも斬り込んでいける」(クリフォード氏)

Photo Symbian OS v9.5の特徴と主な機能

 例えば新機能の1つであるデマンドページングは、必要なコードだけを読み込む仕組みで、トータルでアプリを動かすのに必要なメモリが少なくて済むというメリットをもたらす。端末メーカーは、(1)搭載するメモリを減らす(2)節約されたメモリをよりリッチなアプリに使う という選択肢から、開発する端末に合った方法を選ぶことが可能になるわけだ。「キャリアやメーカーは、Symbian OS v9.5で、より多くの機能をより少ないコストで得られるようになる」(クリフォード氏)

 こうしたアプローチでSymbianが目指すのは、すべてのポートフォリオのすべての部分を網羅することだ。「Symbian OS v9.5やその他のイノベーションで、マスマーケットに対応する。これにより、Symbian OSが対応できる市場は4分の3以上を占めることになる」(クリフォード氏)

Photo 左が現在、Symbian OSが対応する市場。今後はローエンドに近いミッドレンジモデルまでSymbian OSで対応できるようにするという

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