ボルベール<帰郷>「なぜ電話に出なかったの?」Mobile&Movie 第268回

» 2007年07月20日 13時57分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名ボルベール<帰郷>(VOLVER)
監督ペドロ・アルモドバル
制作年・製作国2006年スペイン作品


 今回ご紹介する作品は、スペインの母娘孫3世代が強くたくましく生きる姿を描く『ボルベール』。ペドロ・アルモドバル監督の故郷ラ・マンチャを舞台に、どこか幻想的に、ユーモアも散りばめながら、女たちの人生が描かれています。主人公のライムンダの携帯電話がつながらない、空白の時間に事件は起きました。

 ライムンダ(ペネロペ・クルス)は、失業中の夫と思春期の15歳の娘と3人でマドリッドに暮らしていました。反抗期にさしかかった娘パウラ(ヨアンナ・コパ)は、ライムンダとはあまり口をきかず、いつも携帯電話をいじってばかり。そんなパウラに苛々しながらも、ライムンダは厳しくしつけていました。ライムンダは元々気性が激しい女性。ちょっとしたことで激昂してしまうので、家族に恐れられていました。

 ライムンダもまた、娘と同じように思春期を迎えた頃から、母親に反抗するようになり、一刻も早く親元を離れたいと18歳で故郷のラ・マンチャからマドリッドへ移って来たのです。そこで出会った夫と結婚しましたが、今の夫のだらしなさには怒りを隠せません。仕事も探さずに、家でゴロゴロしている夫に愛を注げないライムンダ。2人の溝は深まっていくばかりでした。

 ある時、姉のソーレ(ローラ・ドゥエニャス)とパウラ、ライムンダで、故郷のラ・マンチャへ墓参りに出かけました。そこには両親の墓が建てられているのです。数年前、火事で父と母をいっぺんに亡くしたソーレとライムンダ。ライムンダは、結局母に反抗して家を飛び出したまま、わかり合えなかったことが心残りでした。墓を美しく保つことがせめてもの親孝行と強い風の中、花を飾って帰ってきました。

 帰り道に、幼い頃から大好きだった伯母の家へ寄ったライムンダは、叔母が高齢になり生活に支障が出ていることを知ります。しかし、そのわりには料理が3人分きちんと用意されていたり、不可解な点も。ソーレはラ・マンチャは神秘的な土地だから、何が起こっても不思議ではないと言うのですが……。

 やがてまた日常に戻り、マドリッドで夫の分も働くライムンダ。仕事中に何度かパウラに、携帯から電話をかけますが繋がりません。ライムンダはパンがなくなっていたので、パウラにおつかいを頼みたかっただけでしたが、いつも携帯を手放さないパウラなのに、と不思議に思いながら帰路につきます。すると、パウラは夜のバス亭でひとり、母の帰りを待っていました。

 「なぜ電話に出なかったの?」

 ライムンダは思わず問いただしますが、何も答えない娘の様子がおかしいことに気付き、優しい口調に変わります。

 「何度も電話したのよ」

 雨に濡れたパウラをいたわり、早く家に帰りましょうと抱きかかえるライムンダ。そして帰宅後、見た光景にライムンダは強い衝撃を受けます。しかし、母として強くたくましく立ち振る舞い、娘を支え続けるのです。どんな逆境になろうとも、図太く立ち向かっていく女たち。そんなライムンダの前に、さらに驚愕の出来事が……。

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