「使いやすさとは“思った通りに操作できる”こと。これは非常に大切なことだと思います」(新井氏)
最近の携帯の多機能化は、同時に操作に対するレスポンスの悪化を生むこともある。この点を考慮しWX320Tは、動作の軽快感を重要視したという。メニューUIなどには携帯と同じような、動きのあるFlashメニューを採用するが、動作は極めて軽快だ。
「そのほか、通話時に耳が当たる部分──クリアランスキーパーといいますが、この部分のみ素材を変えて耳を当てた時に柔らかさが感じられるものを採用しています。カタログなどで大々的に扱われる部分ではありませんが、実際に使ってみて使いやすいな、買って良かったなと思われる部分にもこだわる。これも“フレンドリー”に通じるところです」(田中氏)
ウィルコムは、24時間音声定額の「ウィルコム定額プラン」が特徴の1つ。長時間通話するユーザーはもちろん、家族との通話用にウィルコムを契約するユーザーも多いため、子どもや年配ユーザーにも優しい配慮だといえる。
「ボディの“くびれ”も開けやすさのためです。とにかく通話やメール操作を快適にするための工夫をいろいろ盛り込みました。“でかキー”によるキーの打ちやすさもそうですが、端末を開いた時にトップヘビーにならないように重心をダイヤルキー側にすることで、長時間メールを入力していても疲れないようにしています。ボディの“くびれ”は操作時のホールド性の向上にも寄与しますので、長時間通話しても大丈夫ですよ」(田中氏)
開けやすさや持ちやすさのために採用したくびれた形状。しかし、このような複雑な形にすると内部にデッドスペースが生じやすくなる。WX320Tは、この部分にもぎっちりとパーツを詰め込んで、サイズが大きくならないよう基板形状や部品を設計したという。そのため、部品のレイアウトが決まるまでかなり時間がかかったそうだ。とにかく使い勝手のため、カタログスペックに見えない部分にも大いにこだわることが“フレンドリー”につながるわけである。
「そのほかにすごい部分と言えるのはバッテリーですね。930mAhの大容量のものを採用しました。もちろんこちらも“フレンドリー”を実現するためでして、連続待受で約850時間、連続通話で約7時間半という長い時間を実現しています」(田中氏)
かつて携帯電話でも待受時間競争があり、2G携帯端末では連続待受時間が500時間を越える端末すらあった(なお、2007年春モデルのソフトバンクモバイル向け3G端末「911T」の連続待受時間は約330時間、連続通話時間は約2時間20分)。現在もPHSのウィルコム端末では連続待受500時間を越える性能を持つ端末は珍しくないが、約850時間という数値は「WX310J」と並ぶ最長クラスのもので、連続通話7時間半も「安心だフォン」に次いで長い。音声定額が特徴のウィルコム向け端末には必須の性能といえよう。
WX320Tは、今携帯に望まれる機能をしっかり搭載する端末。しかし、そのほかに使って初めて本当のよさが実感できる端末でもある。そのためまずは、店頭でとにかく触ってみてほしいと言う。“フレンドリー”は押しつけるものではなく、自分で実感できなければ意味がない。
「とにかくモックでもいいので、店頭で触れてみてください。アンテナ内蔵でシンプルなフォルムとキーの打ちやすさが体感できると思います。Carrotsが復活することでPHSのよさを再認識してもらえればうれしいですね」(田中氏)
東芝のPHS復活第1弾は“フレンドリー”。しかし、高機能機種の開発にも長ける同社だけに、今後の動向も大変気になるところだ。
ウィルコムの端末はモデルチェンジまでの期間が他社の携帯端末と比べて長いこともあり、現時点では次機種の開発は始まっていないという。しかし、WX320Tを発売することで得られるフィードバックを次の端末へつなげたいとし、もちろんウィルコム向け音声端末がこれっきりでないということは語ってくれた。今後、どんな東芝製ウィルコム端末が登場するかを期待する楽しみも、帰ってきた“Carrots”が切り開いてくれるのではないだろうか。
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