シャープが携帯電話事業に参入したのは1994年。国内メーカーとして最後発の参入となったが、カメラ付き端末を他社にさきがけて投入するなど、ユーザーの支持を集める携帯作りに取り組み、国内の携帯シェアで2年連続1位を獲得するまでに成長した。
ワイヤレスジャパン2007の基調講演に登場したシャープの松本雅史副社長が、人気端末を生み出すための仕組み作りや、今後の課題について話した。
松本氏はシャープの携帯開発の特徴として「縦と横の融合」を挙げる。縦の融合では、デバイス部門と商品部門の連携で最先端のデバイスを商品に結びつけることを、横の融合では、シャープ内のAV、通信、情報などの部門間で技術や人材を共有してシャープの強みを端末に反映することを目指している。
松本氏が縦と横の融合の好例として挙げるのが、AQUOSケータイだ。国内3キャリア向けに提供し、人気を博しているこの携帯は、デバイス部門との縦の融合により高精細液晶を始め、ワンセグモジュール、カメラモジュール、調光センサー、赤外線モジュール、白色LEDといった自社デバイスを搭載。ワンセグ機能は薄型テレビ「AQUOS」を開発するAV事業部との横の連携で開発しており、シャープの持つデバイスと技術を最大限に生かした端末に仕上がった。
事業部間の融合は、全社を挙げてサポートしていると松本氏。ほかにない技術や商品を開発する際の体制として「緊急開発プロジェクト」を設け、各事業部や研究所から最適な人材を招集するという。開発を迅速に行えるよう、リーダーには強い権限が与えられ「垣根を超えて仕事をできるような体制で、オンリーワン商品を生み出している」と松本氏は胸を張る。
「携帯電話は、人類の進化の歴史を非常に短い期間で取り込んでおり、どんどん進化している」(松本氏)──こうした携帯の進化を見据え、シャープが携帯開発のテーマとするのは「軽薄長大」だ。
「“軽く薄く”を極め、画面は大きく、バッテリーは長時間持つ。こうした(相反する)キーワードは、シャープ自身が解決すべき課題。(薄く軽く、画面が大きくとなると)PDAとの境界領域が微妙になってくる。これをキーワードに進化を重ねていく」(松本氏)
松本氏はまた、今後の進化のキーワードとして「新たな機能の融合」「シームレス化」「ウェアラブル化」「ライフスタイルとの密着」を挙げ、刻々と変化するユーザーニーズを捉えた携帯の開発を目指すとした。
「日本メーカーは、GSM方式が世界全体のシェアの大半を占める中で弱いのであって、W-CDMA方式が伸びて土俵が変われば、競争の状況も変わってくる」──。モバイルビジネス研究会などで、日本の携帯メーカーの国際競争力が問われる中、シャープの松本氏がこんな見方を示した。
松本氏は、シャープ携帯の世界シェアをW-CDMA市場のみで見ると、その出荷台数は8.5%で世界3位だと説明。「日本のメーカーは、技術的に先を行く開発をしているので、端末のマルチメディア化など新しい流れの中ではチャンスがあるのではないか」とした。
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