防水にかける心意気はパーツに宿る──機構設計担当が解説する「W53SA」(後編)(1/2 ページ)

» 2007年08月01日 21時31分 公開
[青山祐介,ITmedia]

 IPX7、IPX5という本格的な防水仕様を備えた鳥取三洋電機製の「W53SA」は、三洋電機の“防水Xacti”開発チームとの協力、社内で組織した防水プロジェクト内の連携を経て誕生した端末だ。

 インタビューの後編では、バッテリー周りやアンテナ、ステレオスピーカーなど、パーツの防水仕様について、鳥取三洋電機のマルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信企画部 モバイル商品企画課の徳原康隆氏と、マルチメディア事業部 モバイル機構技術課の主任技術員、上山知毅氏に聞く。

“女”防水ワンセグの中身はこうなっている──機構設計担当者が解説する「W53SA」(前編)

鳥取三洋電機のマルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信企画部 モバイル商品企画課の徳原康隆氏(左)とモバイル機構技術課の主任技術員、上山知毅氏(右)

保存容器のフタがヒントに──防水仕様のバッテリーカバー

 防水ケータイで、その取り組み方が分かりやすいのはバッテリーの格納部だ。W53SAと同時に発表されたカシオ計算機の「W52CA」は、バッテリーカバーに柔らかい素材を使った“タッパーウェアのフタ”のような構造を採用しているが、W53SAはあえて強度を保つ構造を採用。しっかりとしたカバーとロック機構でスリムさと防水性能を確保することを選んだ。

 厚さ20ミリを実現するためには、キーボード側ボディの中でもっとも厚みがあるバッテリー周りを、いかに薄くするかがポイントになる。最もシンプルな解決法はバッテリーカバーを薄くすることだが、それでは強度が落ちるとともに防水性能を保つのが難しくなる。そこで開発陣は、強度を高めるためにディスプレイ側の筐体と同じ特殊プラスチックを採用するとともに、内側の周囲にリブ(補強壁)を立てて薄さと強度を確保することに決めた。

 バッテリーカバーの周囲に取り付けられたリング状のパッキンは、開発途上でその太さや断面形状を入念に検討した上で開発されている。ゴム製のパッキンは、押しつぶされたときの反発力で密閉性を保って浸水を防ぐ仕組み。設計段階で最適な太さや形を検討するだけでなく、試作したものを実際にバッテリーカバーに取り付け、閉めたときにどんな形状に変形するかをチェックする。

 フタを閉めてしまうとパッキンの“つぶれ具合”を目視できないので、X線を使ってフタの断面を撮影し、その画像を見て、設計値どおりの形状/圧縮量になっているかをチェックしている。「適正な値になるまで、設計のやり直しと試作品作りの繰り返しです」(上山氏)

 また、強度を保つために使ったバッテリーカバーの固い素材が、カバー開閉時の操作性を犠牲にするという問題も持ち上がった。特にリブ上の4カ所にはツメがあり、このツメによってさらに強固にフタが閉まるようになっているが、開ける場合には力が必要になる。この開閉時の“硬さ”を緩和するため、ボディ側のツメが引っかかる部分にコロのような部品を取り付け、コロの上でツメをすべらせることで、開閉しやすいようにしている。

 「バッテリー収納部のスペースは限られており、この“ツメ問題”を解決するのはもはや“お手上げ状態”でした。そんなとき、たまたま弁当箱や食品保存容器のフタを閉める機構からインスピレーションを得て解決できたのです。省スペースの中で確実にロックでき、さらにコロが付いているので信頼性も高くツメが折れにくくなるというメリットがあります」(上山氏)

PhotoPhoto 厚さ20ミリを実現するため、バッテリーカバーは極力薄くしつつ、内側にリブを設けて強度を確保した。また、防水性を確保するため、バッテリーカバーのツメがボディにしっかり引っかかるしくみになっているが、このツメが引っかかる部分にコロを用意して、開閉時に無理な力がかからないよう配慮している

ワンセグ用アンテナは、「とても高価なもの」に

 ワンセグ機能を備えるW53SAには、2段式ホイップアンテナが搭載されている。一般的なワンセグ端末と同様、ボディ内部に格納する構造だが、W53SAではアンテナも防水仕様にする必要がある。アンテナは完全に収納したときと完全に引き延ばしたときに防水性能が保たれる構造で、アンテナ格納部の入口にパッキンを備え、アンテナ基部と先端部のやや太くなった金属部が、伸ばしたときと格納したときにそれぞれそのパッキンと接触することで水を遮断するしくみだ。

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