第6回 KDDI 高橋誠氏──携帯の使い方を変えるGoogleとの連携石川温・神尾寿の「モバイル業界の向かう先」(1/2 ページ)

» 2007年08月10日 21時20分 公開
[房野麻子(聞き手:石川温、神尾寿),ITmedia]

 さまざまな可能性を秘めつつ、その変化の先はなかなか読めないモバイル業界。“秒進分歩の勢い”で進化し続けるこの業界の未来を探るため、キーパーソンを迎えて通信ジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏とざっくばらんに未来を語ってもらう「モバイル業界鼎談」。第6回目は、引き続きKDDI 執行役員 コンシューマ事業統轄本部長の高橋誠氏に、auならではのLISMOサービスの今後やGoogleとの連携について聞いた。

“音楽のau”は今後も期待大

神尾 “音楽のau”も、そろそろ次がほしいですね。

高橋誠氏(以下敬称略) ええ、次、行きますよ。今は言えませんが、まだ行きます。LISMOの発展はめちゃくちゃ真面目に考えています

神尾 音楽分野は他社もだいぶ追いついてきたな、という感じがあるので、auとしては、そろそろドンッと突き放したほうがいいんじゃないかと思うんですけど。

高橋 お任せください!

Photo 石川温氏

石川 他社には「うちのはもう着うたフルも聞けるし、ナップスターも聞けるし、色々聞けるんだ。もう音楽はうちの方が上なんだ」とおっしゃっる方もいらっしゃいますが、さらにその先を行くということですね。

高橋 そう思っていただいてかまいません。

神尾 すごく根本的な疑問なんですが、携帯に対するユーザーさんの音楽の分野での期待というのは、まだまだ底じゃないという感じですか? もっともっと深い、ニーズはまだある、とお考えですか。

高橋 やっぱり、もっと音質を良くしてほしいでしょうしね。でも今は、これ以上は言えません(笑)

神尾 携帯で楽しむ音楽の世界は、ユーザーが求めるレベルまでだいぶ達してきたかな、と思うんです。でも、まだ進む先があると思われているんですね。

高橋 KDDIは携帯電話事業だけを持っているわけではなくて、固定電話も持っているし、まあ、いろんなものを持っています。私たちとしては、生活シーンすべてのところで音楽をしっかりと楽しんでもらいたいという思いがあるので、まあ、そういう仕掛けはしていきます

神尾 「さすがは“音楽のau”だ」と言わせるようなものを準備されているということですね。

高橋 そういうものになると思っていますし、音楽を楽しんでもらうための媒体は、いろいろな形で整備していけばいいと思いますね。これ以上は、しゃべりすぎになってしまうのでやめておきます(笑)。でも、せっかく“音楽のau”と認識していただいているので、そこは維持しないといけないと思っています。

神尾 定額の音楽配信サービスくらいでやられたりはしない、ということですね?

Photo KDDI 執行役員 コンシューマ事業統轄本部長の高橋誠氏

高橋 ええ(笑) ナップスターに関しては、今の音楽業界の状況を考えると、ちょっと違うだろうと思っています。着うたフルの市場が順調に立ち上がってきているときに、「定額の配信サービスをやるから楽曲を提供してください」と音楽業界の人にいったって、提供してもらえるはずがないですよ。

神尾 実際、日本のレーベルには(ナップスターに)積極性が感じられませんね。楽曲がなかなか出てこない。

高橋 出さないででしょう。音楽業界も今、苦しいですから。せっかく新しいビジネスに取り組んで、価値あるものを一生懸命ユーザーに届けようとしているのに、それをガクンと下げるようなビジネスモデルをなぜ今、入れなきゃいけないのかと、普通は思うはずですよ。だから時期は悪いと思いますね。

石川 そういう意味で、今苦しんでいる業界が、auと組むことによってうまく回って、新たなビジネスチャンスが広がるというような、そういった組み合わせは今後まだ出てくるんでしょうか。

高橋 うーん。だから、もうちょっと待っていてくださいよ(笑)。もう少し時間がかかりますけれど、秋冬モデルとか、2008年春モデルくらいを目標にいろいろやっていますので。

神尾 着うたなどの音楽の場合は、御社が取り組まれたときが、非常にタイミングも良かったと思うんです。音楽業界の構造が硬直化していて、彼ら自らが何かを変えなくてはいけなかった時期でしたし、ユーザーのニーズも変わりつつありましたから。

高橋 そういう循環がうまく起きたのは、音楽がそうだったし、コミックなど電子書籍もそうです。そういうものは、これからもいくつも出てくるような気がしますよね。

神尾 話が堂々巡りになってしまうんですが、その中で映像ってどうなんだろうというのがすごく疑問なんです。この企画の第1回目でNTTドコモの辻村清行氏にお話をうかがったときは、「映像」というキーワードが出ました。でも映像業界というのが流通の部分も含めて、果たして転換期にあるのか、そして、大きなビジネスモデルの変化や流通構造の変化が、携帯がトリガーを引くような形で起きるような状況なのか、というのが我々の立場からだと見えにくいんです。

 音楽のときは、着うたフルが始まった直後くらいから、音楽業界も一緒に変わろうという感じで一気に変化しましたよね。それと比べると、分からない部分がすごくあります。

高橋 映像については、私たちは2000年12月から取り組んでいます。ここまで関わって、あの手この手といろいろ手をつくしましたけど、なかなか投資を回収できるところまで来ませんね。結構難しい分野であることはまちがいないです。ちなみにみなさんは動画で何が見たいですか?

石川 そうですね……。

高橋 いろいろな取り組みを始めていますが、1つ、映像でうまくいきそうなのはビデオクリップです(7月20日の記事参照)。ただ、それ以外、例えば映画を見せるとかは、今のままやっていても、ストリーミングでやっても苦しいような気がします。もう少し新しい価値観を見つけないといけません

石川 その秘策はまだ見つからない感じですか?

高橋 別に出し惜しみしているわけではないですが、LISMOの延長線上で当然映像系のサービスは載ってくるでしょう。たぶん、2007年の秋から2008年にかけて入れていくのも、1つの方法論だとは思います。だから映像は捨てたわけではないのですが、そんな簡単ではないな、という感じもしています。

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