「TouchFLO」は高性能でも簡単──HTCが考える未来のUIとは

» 2007年09月01日 10時01分 公開
[園部修,ITmedia]

 HTC Nipponは8月31日、台湾HTCのCEO(最高経営責任者)、ピーター・チョウ氏と最高マーケティング責任者のジョン・ワン氏の来日に合わせて記者説明会を開催。同社のこれまでの歩みと新技術「TouchFLO」の概念、携帯端末のユーザーインタフェース(UI)についての考え方などを紹介した。

 HTCは、1997年に台湾で創業した、PDAやスマートフォンを開発・製造・販売する企業だ。現在はWindows Mobileを搭載するスマートフォン専業のメーカーで、日本市場には2006年に参入し、NTTドコモに「hTc Z」、ソフトバンクモバイルに「X01HT」「X02HT」を供給している。国内ではまだ知名度は高くないが、世界的に見ると、Windows Mobile搭載端末市場で約80%のシェアを誇る。世界各地の50を超えるオペレーター/キャリアと緊密な関係を持ち、米Microsoftや米QUALCOMMなどとも強いパートナーシップを結んでいるという。

 HTCが非常に高い技術力を持つことは、ドコモやソフトバンクモバイルに端末を供給していることでも明らかだが、同社はPDAやスマートフォンの市場で、さまざまな“世界初”の端末を開発してきた実績も持つ。

 世界初のパームサイズPCに始まり、世界初のワイヤレスPDAフォン、世界初のカラーワイヤレスPDAフォン(O2 Xda)、世界初のスマートフォン(Orange SPV)、世界初の3G PDAフォン、世界初のCDMA2000 1x EV-DOスマートフォン、世界初の3Gスマートフォン(MTeoR)、世界初のトライバンドUMTSスマートフォン(HTC TyTN)などがすべてHTC製で、まさにスマートフォン市場の最先端を走っていることが分かる。日本のPDAユーザーにはなじみのある初代「iPAQ」も、HTCが米Compaq(当時)にOEMしたものだ。

PhotoPhoto HTCは、世界初のパームサイズPCに始まり、さまざまな“世界初”のWindows CE/Windows Mobile搭載デバイスを開発してきた。日本でもユーザーの支持を集めた「iPAQ」も同社が開発しCOMPAQ(当時)にOEMしたもの

Windows Mobileに対する顧客の不満を解消する「TouchFLO」

Photo HTCのCEO、ピーター・チョウ氏

 そんな同社が、2007年6月にリリースした「HTC Touch」は、チョウ氏が「UIの革新」と胸を張る新技術「TouchFLO」を搭載しているスマートフォンだ。同技術は、8月30日にドコモから開発発表があったスマートフォン「HT1100」にも採用されており、ディスプレイ上で指先を動かすだけで、メニューやアプリケーションなどを直感的に操作できる。

 このTouchFLOが生まれたのは、「ユーザーは、非常に高度で複雑、かつ退屈なWindows MobileのUIに対して不満を持っている」(チョウ氏)ことを認識したからだという。「多くのコンシューマーユーザーには、このままのインタフェースでは簡単には使えないと考えた」(チョウ氏)

 そこで同氏は、HTC社内の開発部門に「シンプルなUIとスタイリッシュなデザイン」を持つ製品の開発を命じた。数カ月後に開発チームから提案された端末は、まだ満足できるものでなかったために却下したが、そのさらに2カ月後にもたらされた別の提案は「まさに求めていたものだと感じた」(チョウ氏)という。それがTouchFLOを搭載したHTC Touchだった。

 「HTC Touchは、スマートフォンの操作性に大きな変革をもたらした。従来、スマートフォンを使うスタイルといえば、片手に端末を持ち、もう一方の手にスタイラスを持ってタッチパネル上で操作をする両手操作が基本だったが、TouchFLOを搭載したHTC Touchなら片手で使える。しかもUIは単純化されており、Windows Mobileの難しいUIは出てこない」(チョウ氏)

 HT1100の写真で解説する記事にある動画でも分かるとおり、TouchFLOは非常に直感的な動作を実現している。待受画面で下から上に指を動かせば、専用のキューブ状のメニューが立ち上がり、指を左右に動かすとキューブを回してメニューを切り替えられる。ある機能を呼び出したければそのアイコンを押せばよく、アドレス帳のスクロールは上を動かすような感覚で指を任意の方向にスライドさせればいい。

 HTCではTouchFLOをスマートフォンの重要な要素の1つに位置づけており、今後発売するタッチパネル搭載機には基本的にTouchFLOを搭載していく方針だ。

TouchFLOは操作を学ぶ必要をなくす

Photo HTC最高マーケティング責任者のジョン・ワン氏

 TouchFLO技術のコンセプトは、最高マーケティング責任者のジョン・ワン氏が説明した。同氏はHTC TouchのUIの特徴を「学習する必要がないインタフェース」だと表現する。

 「多くの人は、“簡単なUI”を実現する方法として、メニュー構成を変える、あるいはアイコンをきれいにするといったことを考える。しかしそれだけでは簡単にはならない。本当の意味で“簡単”を実現するのは、学習する必要がないインタフェースだ。我々は学習しなくてはならないことを“減らす”のではなく、学習する必要が全くないものを開発した」(ワン氏)

 何も知らない子供でも、何か物を動かしたければそれに触れて動かしたい方向に動かす。オモチャを取りたければ、それに手を伸ばす。つまり、直感的な操作性と理にかなった動きを実現すれば、子供でも簡単に使えるインタフェースになる。TouchFLOはそんな考え方から生まれたという。

 ワン氏は「携帯電話には長い間、キー操作しかなかった」と振り返る。端末自体は、年を経るごとに機能面や性能面で変化を遂げてきたが、いまだにキー操作だけは変わっていない。しかも最新の端末には、かつての機種よりさらにボタンが多い。「端末を正しく操作するためには、正しい順序かつ正しいタイミングで、正しいキーを押さなくてはならない。とても高機能にはなったが、とても複雑だ」(ワン氏)

 しかしTouchFLOなら、どのボタンを押したら操作できるか、といったことを考えることなく、画面を操作できるようになる。

 「いまから5年か10年ほどたったら、2007年はボタンを押す文化からタッチ操作の文化への“転換点”だったと認知されるようになるだろう。これはPCの操作がキーボード主体からマウス主体に変わったときのような大きな変革といえる。TouchFLOを体験したら、携帯電話に対する考え方が変わるだろう」(ワン氏)

 HTCはTouchFLOを用いて、かつてないほど高性能で、なおかつ簡単なデバイスを提供するという。

 ただしワン氏は、今後すべての端末がTouchFLOを搭載することになるのか、との質問には「1つのデバイスがすべてのユーザーを満足させられるとは考えていない。メールをたくさん打ちたい人にはQWERTYキーが必要だろうし、ダイヤルキーがないと困るという人もいる。一方で、デザインが美しく、簡単に操作できるものがいいという人もいる。市場にはさまざまなセグメントがあり、それに合わせたフォームファクターや製品がある。各製品にベストな革新をもたらしたい」と答えた。

PhotoPhotoPhoto 会場には日本では未発売の「HTC TyTN II」も展示されていた。TyTN IIもTouchFLO技術を用いたユーザーインタフェースを装備する

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