ソフトバンクモバイル、M2M分野に本腰──シーメンスのグローバル通信モジュール投入

» 2007年10月01日 17時22分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 左からsiemens AG オートメーション&ドライブ ワイヤレスモジュール事業部のノバート・ムーラ社長、ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長とシーメンスのペーター・ツァップ社長

 人と人との通信をサポートする携帯電話の契約数が頭打ちに向かう中、携帯業界が注目しているのが「M2M」と呼ばれるマシン間通信分野。その用途は車載やテレメトリング、セキュリティ、決済など幅広く、今後の利用の伸びが期待されている。

 10月1日、ソフトバンクモバイルが、シーメンスのグローバル通信対応モジュールを投入し、この分野に本腰を入れると発表。ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長とシーメンスのペーター・ツァップ社長、siemens AG オートメーション&ドライブ ワイヤレスモジュール事業部のノバート・ムーラ社長が、M2M通信市場の展望と日本市場での展開について説明した。

ネットはソフトバンク、モジュール販売とアプリ開発はシーメンス

 

 ソフトバンクが投入するのは、シーメンス製の通信モジュール「HC28」。HC28は、3周波数(850/1900/2100MHz)のUMTS(W-CDMA)と4周波数(850/900/1800/1900MHz)のGSMに対応した通信モジュールで、海外でも利用できるのが特徴。またHSDPAに対応していることから、下り最大3.6Mbpsの高速通信も可能だ。ソフトバンクモバイルの松本氏は、「1つ機器を開発すれば、海外にも展開できる。日本だけより効率的に開発できる」と、このモジュールの持つメリットを説明する。

 日本では、キャリアが通信モジュールを販売するのが一般的だが、このHC28モジュールはシーメンスが自社ブランドで販売する形をとり、ソフトバンクは3Gのネットワークを提供。「ネットはバンク(が責任を持ち)、機器はシーメンス」(松本氏)という役割分担にすることで、顧客がシーメンスから直接、技術面のサポートを受けたり、グローバル向け開発のノウハウを共有したりできるようにした。

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M2M市場の可能性

 M2M市場はまだ始まったばかりで、今後の伸びが期待できる分野だとムーラ氏。2006年から2009年にかけての世界での出荷台数の伸びは、Gartnerが38%、ABIが36%と予想しているという。日本市場についてもメリルリンチが2009年以降の純増数が毎年100万加入を超える水準と予測し、2014年の累計加入を1340万と見込んでいる。「世界には、車載、自販機、POS、信号機、コピー機など500億台のマシンがある。遠隔で操作したり、モニタリングしたりといったさまざまな用途があり、この市場は始まったばかり」(ムーラ氏)

 同氏が新たな用途の一例として挙げたのは、クレジットカード決済のワイヤレス化。「顧客からの“手元でカード決済の処理をしてほしい”という要望からクレジットカードリーダーのワイヤレス化が進んでいる」(ムーラ氏)。また、すでに利用が広がりつつある輸送ビジネスの車載用途でも、場所や走行パターンだけでなく、貨物の状態や車のメンテナンスが必要かどうかの情報を送るなどの新たな用途が生まれており、市場の拡大を実感しているという。

Photo ワールドワイドの市場規模予測(左)と日本の市場規模予測(右)

日本市場で狙うのは、「動態監視」と「汎用通信ユニット」

 ソフトバンクモバイルとシーメンスは、日本市場でのフォーカス分野として、物流事業の車両管理などを行う「動態監視」と、電子マネーやクレジットカード決済などを軸とした「汎用通信ユニット」を挙げる。ソフトバンクモバイルの松本氏は、この通信モジュールの投入を皮切りに、M2M分野に注力するとしている。

Photo 通信モジュールの用途(左)。ソフトバンクモバイルとシーメンスのフォーカス分野(右)

 通信業界においては、単にネットワークを作る競争は終わっており、これからは、いかに便利なソリューションを提供できるかが重要だというのが松本氏の考えだ。「ソリューションはプロ向けやB2Cなどいろいろあるが、今回のモジュール提供では、ビジネスの丁寧な開発とサポートを行う」(松本氏)。こうしたソリューションを積み重ねて、「世界中でも最強のサプライヤーを目指す」(松本氏)とした。

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