多くの人に「使いやすく、楽しいUI」を──多様性を重視するドコモのUI戦略神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2007年10月23日 11時24分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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らくらくホンがリードする「ドコモのケータイUI」

Photo 「らくらくホンは90xシリーズとは異なる方向性で、すごくハイテクなんです」(永田氏)

 携帯電話UIというと、iPhoneやHT1100のような“クール”なスマートフォンが注目されがちだが、UIの本質は複雑な機能やサービスを“分かりやすく、使いやすく”することだ。それにより利用者の裾野が広がり、各種機能やネットサービスの恩恵を多くの人が受けられるようになる。

 このUIの基本に立ち返り、ドコモがこの分野の牽引役と位置づけるのが「FOMA らくらくホン」シリーズである。

 「らくらくホンは歴代モデルで“最新機能を使いやすく”する取り組みを行っていまして、携帯電話UIという視点では実は先進的なものになっています。例えば、最新モデルのらくらくホンIVではGPS機能を搭載していますが、搭載技術としては(ハイエンドモデルの)90xシリーズと同じでも、GPSの活用にiアプリの知識がいらないなど、使いやすさの部分ではらくらくホンが上回っています。そういう意味で、らくらくホンは90xシリーズとは異なる方向性で、すごくハイテクなんですよ」(永田氏)

 らくらくホンのUIにおける先進性は、携帯電話の操作が苦手な人でも最新のサービスが利用できるように、という部分から生まれた。だが、これはリテラシーのある90x/70xシリーズのユーザー向けの技術としても重要な役割を担っているという。

 「“簡単にサービスが利用できるUI”は、らくらくホンだから必要なものかというと、そうではありません。リテラシーの高い90xシリーズのユーザーも、基本的には簡単な操作で使えるものを求めている。今後はらくらくホンで培ったノウハウや技術が、スタンダードモデルに反映されるという流れもあるでしょう」(永田氏)

UIをよくすればサービス利用も増える

 UIは端末操作の部分で注目されがちだが、携帯電話ビジネスで考えれば、サービス全体の入り口を広くする上でも大切なものだ。過去を振り返れば、iモードの登場は「メール」と「デジタルコンテンツ」の入り口を一般層まで広げた“UI革命”であったし、最近ではプッシュ型情報配信サービスのiチャネルなどで、サービス利用層を増やす取り組みが行われている。

 「iチャネルはプッシュ型コンテンツ配信を端末UIと融合させたもので、技術的にはさまざまな工夫があります。しかし表層的には“画面に情報が表示される”“ボタンを押すだけで詳細情報が見られる”と簡単な作りになっている。これは反省でもあるのですが、iモード登場以降、サービスが増えすぎて、個々のユーザーが求める情報にアクセスするための手順が増えてしまった。これを修正する取り組みは、(iチャネルに限らず)全体的に広がってくると考えています」(永田氏)

 携帯電話向けのコンテンツやサービスは増加の一途をたどっている一方で、携帯電話UIはPCに比べるとサイズ面で制限されている。iチャネルのようなプッシュ型のUI補完サービスは今後も重要であり、「将来的にはリコメンド技術やエージェント的なサービスの組み合わせが考えられる」(永田氏)という。これは携帯電話コンテンツ・サービスの利用促進につながり、ユーザーにとっては利便性の拡大、携帯電話ビジネスの視点では市場の活性化につながるだろう。

 また、今後の新サービス・新分野で見ると、操作性の点で改良の余地が大きく残されているのが「フルブラウザ」と「デジタル地図」だ。この2つはスムーズなフリーカーソル操作と見やすさの両立が必要であり、いまだ決定打と呼べるUIが登場していない。

 「フルブラウザとデジタル地図については、HT1100でタッチパネル、『SH904i』のTOUCH CRUISERや『N904i』のニューロポインターなど、複数のアプローチをしています。この中で人目を引くのはタッチパネルですが、(液晶と操作部が違う)セパレート型のUIも引き続き検討する必要があります。

 ドコモでは今後HSDPAにシフトしていきますし、そこでフルブラウザと地図サービスが重要になるのは間違いない。この2つに対して、どのようなUIが使いやすいのか。ここはメーカーさんと一緒に試行錯誤している段階です」(永田氏)

使いやすく、気持ちいいUI環境を作る

 ドコモは以前から、“多様なUI”や“実験的なUI”に前向きな姿勢を取っており、らくらくホンシリーズを早期に立ち上げるなど、使いやすさ向上も積極的に行ってきた。しかし、その一方で、巨大化したiモードが、ドラスティックにUI環境を変えるハードルになっているのも確かだろう。例えば、細かな部分を見れば、ニューロポインターやTOUCH CRUISERなどフリーカーソル系のUIを積極的に導入しても、iモードメニューなど基本的なサービス部分のUIは従来のカーソル操作を前提にしたままだ。端末UIとコンテンツ・サービスのUIの変革において、足並みがそろっていない状況である。

 「確かにiモードの多くの部分は、新しい端末UIに完全に適合していないところがあります。端末のUIは今後さらに多様化すると考えられますので、最終的にはiモードのUIも多様化すべきなんでしょうね。(異なる端末UIを使う)個々のユーザーごとにカスタマイズされる、という世界です」(永田氏)

 ドコモは多くのユーザーを抱えていることもあり、特定の利用者層や技術に偏らず、今後もさまざまなUIにチャレンジしていく考えだ。巨大化・複雑化したコンテンツ・サービスを「使いやすくするのは当然。その上で、“気持ちよく”ご利用いただける環境を作りたい」(永田氏)という。

 使いやすく、それでいて楽しい気持ちにさせてくれるUIは、携帯電話の魅力を底上げする。また、すべての端末が同じUIだったら、ケータイ選びもつまらないものになってしまうだろう。端末メーカーが切磋琢磨し、技術力・競争力を向上する術も大きく損なわれてしまう。

 ドコモがどれだけ多様で、かつ魅力的なUIの端末・サービスを市場に投入できるか。期待をもって見守りたい。

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