アドビシステムズが10月31日、携帯端末向けのFlashプレーヤー「Adobe Flash Lite 3」の日本向け説明会を開催した。Flash Lite 3は、Flash Player 8相当の機能を備えたランタイムだ。すでにフィンランドのNokiaとNTTドコモが採用を表明している。
アドビシステムズ モバイル&デバイスビジネスユニット グローバルエバンジェリストのビル・ペリー氏は、Flash Liteがプリインストールされたデバイスが、2007年第3四半期に3億台出荷されたことを示し、携帯電話を中心に、任天堂の「Wii」やソニー・コンピュータエンタテインメントの「PS3」「PSP」といったゲーム機、家電などにまで、幅広く採用されている様子を紹介。特に急速に成長しているモバイル市場に対する期待を示した。
Flash Lite 3は、前述のとおりFlash Player 8の機能をベースに開発された携帯機器向けのFlashプレーヤーだ。Flash Lite 2.0および2.1と同様、Action Script 2.0をサポートする。Flash Lite 3における最大のトピックは、新たにFlash Video(FLV)の再生が可能になった点にある。
現在インターネット上で公開されている動画の約7割はFlash Video形式で、YouTubeなどの、ユーザーが動画を投稿できるサイトの多くはFlash Video形式での動画配信を行っている。Flash VideoのコーデックはOn2 VP6とSorenson Sparkをサポートしており、Web上で公開されている動画コンテンツの多くが視聴可能になる。
ただ、Flash Lite 3でサポートされる機能のうち、どの機能が端末に実装されるかは、キャリアの決める仕様によって変わるという。つまり、一概にすべてのFlash Lite 3搭載端末でYouTubeの動画が見られるようになる、というわけにはいかないようだ。
また、Flash Media Serverを利用した動画配信が可能になるのもFlash Lite 3の強化ポイントの1つ。これにより、動画配信方法が3種類の中から選べるようになる。1つは埋め込みによる配信。こちらは、再生する際にすべてのデータのダウンロードが必要になるが、比較的簡単に実現できる方式だ。2つめはプログレッシブ配信で、再生時に外部からFLVファイルを読み込む方式となる。そして3つめが、Flash Media ServerからFLVファイルを配信する方式だ。
Flash Media Serverからの配信は、サーバを介した双方向ストリーミングが可能なため、ファイルのダウンロードを待たずに再生が開始できるほか、早送りや巻き戻しなどのシーク操作も容易に行える。また不要な部分のダウンロードが発生しないため、無駄なトラフィックを削減できる。さらに、埋め込みやプログレッシブ配信のように、ローカルにデータをダウンロードする必要がなくなるので、クライアント側に映像ファイルが残らないというメリットもある。ユーザー認証や視聴制限、課金システムとの連携、ワンタイムURLなどへの対応も容易に行えるという特徴を持つ。
発表会場では、ソフトバンクモバイルの3Gネットワークを利用してバッファなしで動画を再生するデモを披露し、ダウンロードした動画を再生するのとほぼ同じような再生がストリーミングでも可能なことを示した。
もちろん、Flash Player 8相当の機能をサポートするので、今まで表示できなかったインタラクティブなコンテンツを多用するWebページなども、表示可能になるケースが出てくるだろう。Action Scriptのパフォーマンスは15から20%向上しているほか、画面の描画速度も20から30%程度速くなる。Flash Lite 3の機能を活用すれば、動画を用いたゲームなども作れるようになるという。
ちなみにさまざまな機能アップを果たしたFlash Lite 3だが、新機能や新たにサポートしたコーデックをのぞくと、プログラム容量は640Kバイトから380Kバイト程度にまで圧縮されている。コア部分に新機能を含めても約450Kバイトと、“高機能ながらコンパクト”になっている。
数年前まで、アドビシステムズのFlash Lite技術を採用した携帯端末は、日本市場向けが圧倒的に多かったという。しかし、最近は日本以外の地域でも、Flash Liteを始めとするFlash技術を採用した端末が増加しており、直近ではFlash Liteを採用した端末の7割が海外でリリースされている。
こうした動きは、海外の端末メーカーや携帯電話オペレーターが、日本の状況を参考にしながら、データARPUの底上げを狙って、Flash Liteの導入を進めているからだとペリー氏は指摘する。特に、ドコモがFlash Cast技術を利用して実現した「iチャネル」サービスが、1000万加入を超える契約を獲得し、2006年にはFlashコンテンツによるドコモとコンテンツプロバイダの収入が18億円以上に達したことなどが海外の事業者の注目を集めているという。
アドビとしてもこのFlash Liteのエコシステムを世界に広げるべく、米国で2番目に加入者の多いVerizon Wirelessや、中国で3億人の加入者を持つChina Mobileなどと協力し、Flash Liteを活用したサービスの導入を進めていることを紹介した。
「Flash Liteは、従来の平べったくつまらない印象を受けるWebサービスを、もっともっとリッチで楽しいものへと改善していける」とペリー氏が話すように、アドビではPCのWebの世界と同じようなリッチ化をPC以外のデバイスにも広げていきたい考えだ。ドコモがiチャネルで成功したのは、この“ケータイインターネットのリッチ化”にチャンスがあることの大きな裏付けだとしており、「携帯デバイスでのWeb体験をもっと魅力的なものにしていく」と話した。
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