「こんなの無理だ、無茶すぎる」
「いや、“あれ”を実現するにはこれでやるしかないんだ。やるんだ」
日立製作所のAVブランド“Wooo”の名を冠した初めてのワンセグ携帯、それが「Woooケータイ W53H」。厚さ14.2ミリの薄型ボディに、精悍な顔つき、そして華麗なカラーリングが特徴の端末だ。
日立製作所はかつて、2006年4月に始まったワンセグ本放送以前の2006年2月に、auで2機種目となる「W41H」を発売。以来「W43H」(2006年9月発売)、「W52H」(2007年6月発売)と続き、今回のWoooケータイ W53Hは4世代目ということになる。
そんなワンセグ携帯の開発で実績がある日立製作所およびカシオ日立モバイルコミュニケーションズが、携帯へ初めて冠する“Wooo”の名にどのような思いを込めたのか、Woooケータイ W53H開発チームに話を聞いた。
2.8インチの有機ELディスプレイを採用し、厚さ14.2ミリの薄型ボディを備えた「Woooケータイ W53H」は、日立製作所のAVブランド“Wooo”を初めて冠する端末として登場した。
「W43Hあたりまでは、ワンセグが付いているということで“ある程度は許される”風潮もありました。しかし、ワンセグが当たり前になった今は、もう許されません」(日立カシオモバイルコミュニケーションズ 企画担当の白澤聡氏 以下、白澤氏)
そこで、Woooケータイ W53Hの開発は、「徹底的な薄型化」、そして「Woooブランド」を冠して勝負すると決めた。
「目標は13ミリ台。スライドやストレートなど、薄くて平べったいものは他社さんからすでに出ていますが、ユーザーが使うシーンを考えると、折りたたみスタイルはやはり使いやすいと思います。薄くするからといって、安心感や使い勝手を損ねてしまうのは絶対だめ。そのため、使い勝手を損ねずにテレビ視聴にも向く、ワンセグ初代機から培った回転2軸スタイルを継承することにしました」(白澤氏)
ディスプレイを表にして折りたためる回転2軸スタイルは、ワンセグ携帯の黎明期に登場したW41Hから継承するもの。中央にディスプレイ、左右にパンチング加工を施したスピーカーネット風のデザイン、そして横向きに設置できる卓上ホルダとともに、携帯にも“まさにテレビのようなたたずまい”を築いたエポックメイキングな端末だった。
回転2軸のヒンジ機構は、通常の折りたたみやスライドと比べると構造が複雑である分、どうしても厚めになってしまいがちだ。徹底して薄型を目指すにあたり、従来機までの部品はもはや使えない。ヒンジ機構は完全に新規で開発することにした。
回転ヒンジ部分は、一見するとディスプレイが回転することさえ言われなければ分からないほどブレや隙間がない高い精度を保ち、カチッと小ぎみよいクリック感もまったく損なっていない。
もう1つの新規の取り組み、それは基板の完全な刷新。つい数カ月前に登場した2007年夏モデル W52Hのサイズの“半分”にしないと、まったく話にならないことが分かった。
「“これは……こんなの無理だよ、無茶だ”と思いました。いきなり半分ですからね」(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ設計・開発担当の長谷川修氏 以下、長谷川氏)
auのCMではないが、基板サイズがいきなり半分。しかも、携帯のサイズはご存じのとおり。高機能化にともなう高集積化が著しい携帯だが、載せる部品がいきなり半分に減るわけでもない。設計チームは「チャレンジングな取り組み」(長谷川氏)として、部品の配置ピッチを詰め、ごく狭い場所に性能も落とさず配置する設計に挑んだ。もちろん生産設備などの変更も含めてだという。
「部品の高さも重要です。1つだけ出っ張っていると置く場所がなくなってしまうかばかりか、そこ周りにデッドスペースが生じてしまいますから」(長谷川氏)
もちろんこの話は、コンマ数ミリ、いやコンマゼロ数ミリの世界の話である。
「基板の3D設計図を拡大していくと、ぎゅっと詰まったビルばかりの1つの街のようですよ(笑)」(白澤氏)
携帯の裏面は上半分にカメラやスピーカー、下半分にバッテリーがある。このバッテリーの下にも基本基板があったというW52Hの“半分”。つまりWoooケータイ W53Hの基板は上半分だけのサイズであり、そこに携帯として必要な部品が詰まっている仕組みだ。
バッテリーを外すとその裏はすぐダイヤルキー。指でつまむと紙を持ったかのような印象を受けるほど何もない。Woooケータイ W53Hを購入したユーザーは、ぜひこれを試していただきたい。
「それだけ無茶な設計だったんです」(白澤氏)
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