Woooケータイ W53Hの特徴の1つに「有機ELディスプレイ」がある。携帯のメインディスプレイに採用するものとして2007年12月現在で最大級となるワイドQVGA(240×400ピクセル)表示対応の2.8インチのパネルを採用する。
「“映像にこだわる”。そして“Woooブランドを使う”。そのため、現段階で最もきれいなパネルを使うと開発当初から決めていました。結果的には技術的なハードルはかなり高いものでしたが、有機ELが使えそうだということが見えてきた時でした。何より発色がよく、赤は鮮やかに、黒は締まる。そして視野角は比較にならないという、液晶とは違う次元で画質を追求できたのが大きなメリットです」(白澤氏)
Woooテレビで培った高画質化技術の搭載も大きな特徴の1つだ。高画質化回路「Pictuire Master for Mobile」は、シーンによって映像のコントラストを自動調整する“ヒストグラム伸張型γ補正”や映像の黒つぶれ、白飛びを補正する“画面輝度対応イコライジング補正”、外光下など周囲の環境に応じて明るさを補正する“光センサー連動γ補正”、映像を色鮮やかに補正する“彩度補正”などの画像認識技術を採用し、繊細で色鮮やかな映像へ自動的に補正する。
Pictuire Master for Mobileそのものは、前機種のW52Hにも採用したものだが、有機EL向けのチューニングの仕方はまったく異なるという。
「有機ELパネルはそもそも発色がよく、特に赤と緑がすごくきれいに出る傾向があります。しかしテレビの映像となるとすべての色がバランスよく出なければならず、赤と緑だけよいとなるとどぎつい絵になってしまいます。有機ELのよさを残しつつ、見やすく高画質な絵に。その調整はかなり大変でした。ただ、W52Hと比べても、かなり鮮やかな絵で表示できるようになったと思います」(白澤氏)
「“絵”のチューニングは、Woooテレビと同じところでやりました。当然、Woooと同じ方向性でまとめてもらいました」(吉田氏)
ワンセグアンテナは今回から、本体に内蔵することにした。Woooケータイのテレビとしてのシルエットにこだわりを込めたからだ。
ただ、今までのロッドアンテナより受信性能が大きく劣るのは許されない。設置場所のほか、ワンセグのチャンネル(受信する周波数)や状況に応じてより細かく最適にチューニングするといった工夫を設け、なるべくアンテナの特性をよくする取り組みを行った。幅広い周波数の電波を拾わなければならないため、回路設計でサポートすることで十分な感度を実現した。
ちなみにワンセグ放送は水平波。そのため、ロッドアンテナは垂直でなく横に伸ばすのがいいらしい。アンテナを内蔵するWoooケータイ W53Hは、ユーザーがそれを気にせず、かつ“いかにもワンセグ観ています”がなくなる心理面も含めて、「結果として実用的な条件はそれほど変わらず使えると思います」(長谷川氏)という。蛇足だが、高周波の関係で、端末は開いた方が受信条件がよくなるようだ。
ワンセグアンテナと(GPSアンテナ)はヒンジ部、通信用アンテナは、ヒンジとバッテリーの下、そしてFeliCaアンテナは裏面。半分になった基板と容積も減った中に、これらのアンテナも内蔵される。
「アンテナの配置は、いつも一番厳しいです。今回はさらにスペースがなかったのでなおさらでした。デザインと設計、双方の間にある立場としてどれを優先させるか、毎日悩みの種でした」(白澤氏)
薄さを追求したWoooケータイ W53Hで気になる、裏面の1ミリ強の“出っ張り”。これはなんとかならないだろうか──。裏面に備わるカメラはパンフォーカスの197万画素CMOSに落ち着いた。最近の携帯に当たり前となってきている300万画素以上のカメラにするかという議論はかなり長期に渡って行われたが、それにはプラス数ミリが必要だった。また、電池容量を減らしてFeliCaを省けばもう少し薄くでき、設計も楽だった。これをユーザーはどうとらえるか。そんな胃がきりきり痛むようなことを開発チームは毎日考えたことだろう。
おそらく次期モデルの開発はすで始まっている。Woooケータイ W53Hで実現した「薄さ」は次から“当たり前”になり、さらにそれ以上のものが求められる。
冒頭の言葉や文中で記したいくつか言葉は、今回のWoooケータイ W53Hの開発初期にチーム間で交わされた議論の1例。数カ月で新機種が登場してしまう携帯開発の現場は、毎回、毎日このような一触即発の議論が交わされ、開発されている。
新規で開発された薄型回転2軸ヒンジ。このヒンジは従来機と異なり、全開のほか約40度付近で保持できるようになっている。このスタイルで机に立てたまま待受の時計表示やワンセグ視聴、待受ゲームアプリなどを表示できる。
「W42H」など、以前から日立製作所製端末に備わる、仕事/プライベートなど状況によって2つのテーマを使い分けられる「Wシーン設定」のほか、端末に保存するプロフィール以外のプロフィールを登録し、表示できる「セカンドプロフ」機能なども用意する。セカンドプロフを表示しながら、ディスプレイを表にしてスーツの胸ポケットに差すと……「合コン用の“名札”として最適です。注目まちがいなし(笑)。そこからすっとFeliCaを利用するTouch Messageでメッセージを送れるわけです」(白澤氏)とのこと。
EZアプリとしてプリインストールする「Dogz 3D Remix(体験版)」も、なんとなく“らしい”。アプリ名称のとおりペットを飼う、いわゆる“育てゲー”だが、なぜか犬のほかに“白くま”が選べる。そう、この子は日立製作所のエアコン製品でおなじみ「白くまくん」なのである。
さらに「白くまくん」を飼う部屋には、“Wooo”テレビと洗濯乾燥機“ビッグドラム”、ノートPC“Prius”(個人用PC事業の撤退が少し残念)など、日立製品がさりげなく……そこだけ妙にリアルに描かれる。だからどうしたといわれてしまうとそれまでなのだが。
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