「親バカが集まって作りました」――。ドコモの2代目キッズケータイ「F801i」の発表会に登場したNTTドコモ プロダクト&サービス本部 マルチメディアサービス部長の夏野剛氏は、開発に関わった顔ぶれをこんなコメントで紹介した。
同氏を筆頭に、1児の父となった佐藤可士和氏、子供とのメールのやりとりを楽しむプロデューサーの秋元康氏、キッズアドバイザリーボードのメンバーが開発に携わり、キッズケータイユーザーの親たちの要望も取り入れて開発したのがF801iだという。
ドコモが初代キッズケータイ「SA800i」を発売したのは2006年3月。当時、子供向けのケータイといえば、人気キャラクターをあしらった“子供が飛びつくケータイ”という考え方が主流となっていたが、あえてこうした要素をはずした“親と子供の両方に受け入れられる携帯”を開発。アートディレクター兼クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏がデザインを手がけたSA800iは、2007年11月末時点の累計販売台数が約48万台に達するロングセラー製品となった。
キッズケータイの大きな特徴は、端末だけを単体でリリースするのではなく、関連サービスと合わせて提供している点だ。初代キッズケータイは、(1)親も子も愛着を持って使える質の高いデザイン(2)イマドコサーチやキッズiモードなどの安心サービス(3)防犯ブザーなどの防犯機能(4)子供が楽しみながら学べるプリセットコンテンツ の4つの要素を組み合わせて展開したことが好評を博し、子供の居場所を確認できるイマドコサーチは50万契約に到達し、キッズケータイ購入者の約8割がアクセス制限サービスに加入しているという。「サイトのアクセス制限がなかなか使われていないと指摘されるが、キッズケータイでは使われている。サービスと端末を一体化してパッケージ化したのは世界初で、新しいケータイの流れを作れた」と夏野氏は胸を張る。
F801iは、前モデルのSA800iの安心・安全機能を引き継ぎながら、機能とサービスの両面をバージョンアップした端末だと夏野氏は説明。安心をイメージさせる円のモチーフを「ひかりリング」として背面のデザインに取り入れ、ブザーの鳴動時にはこのリングが光って音と光で緊急事態を周囲に知らせる。
ブザーの鳴動と連動して親の携帯に場所を通知する仕組みもバージョンアップし、“ブザーを鳴らすほどではないものの、親に居場所を知らせたい”といった場合にも通知できるよう、「ちょこっと通知」機能を用意した。端末側面の通知キーを長押しすると、親に居場所のメールを自動で送信するもので、ブザーを鳴らすことなく居場所だけを親に知らせることができる。
また、「P903i」に搭載実績がある「あんしんキー」をキッズケータイ向けにアレンジした「はなれたよアラーム」も用意。端末に同梱される「おまもリモコン」とキッズケータイ本体が一定距離以上(障害物のない場所で最大30メートル程度)離れてしばらくすると、親にメールで端末の場所を通知するとともに端末にロックがかかる仕組みで、端末の置き忘れによるトラブルを防げる。「リモコン側のボタンを押すとケータイが鳴るので、家の中でどこに置いたか分からなくなった時にもすぐ見つけられる。大人向けのケータイにも搭載して欲しい機能」(夏野氏)。
ほかにもIPX5/IPX7等級の防水機能や、親子で話し合いながら端末の設定を行う機能を備えるなど、前モデルから大幅に機能が強化された。
子供が携帯を通じて犯罪に巻き込まれることを懸念する声が高まる中、ドコモではアクセス制限サービスを積極的に啓蒙周知する姿勢だと夏野氏は説明。同社では、iモードメニューサイトのみにアクセスできる「キッズiモードフィルタ」、iモードメニューサイトと出会い系などを除く一般サイトのみにアクセスできる「iモードフィルタ」、iモードの利用時間を制限する「時間制限」をアクセス制限サービスとして提供しており、新規申し込みユーザーに対しては、全員に利用意向を確認し、既存契約者には請求書に同梱する冊子で訴求するとしている。
夏野氏は、端末とサービスを一体化したキッズケータイの新たな取り組みの1つ「Creative Kids'」の活動も紹介した。このプロジェクトは、子供の創造性や感性、コミュニケーション能力を伸ばすことを目指して、一流のアートや音楽に触れる機会をキッズケータイユーザーに提供するもので、佐藤可士和氏が総合プロデューサーを務めている。
第1回目は「自分のシンボルマークをデザインしよう」というテーマで、佐藤氏が講師を担当。「“自分自身のいいところや、他の人から自分はどう見えるのか”を考えるきっかけになるこのテーマで課題を出し、その場でアイデアを出してもらってアドバイスしながら進めた」(佐藤氏)という。「予想以上のクオリティのマークがあがってきて面白かった。子供の創造性は、うまく場を提供すれば開花する」(佐藤氏)
今後も東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートや、書道家の武田双雲氏を招いたワークショップを予定するなど、“端末を出して終わり”ではなく、サービスやデザインが加わって1つのサービスを作っていくキッズケータイの世界を広げる考えだ。
キッズケータイの開発にあたっては、四半期に1回のペースで警察関係者や教育関係者、子を持つ親を中心に意見を聞く機会を設けており、その意見や顧客の要望を端末に反映させたのが2代目キッズケータイだと夏野氏は説明。今後は、学校との特別なプロジェクトなども検討したいとしている。
子供を包み込む“繭”をイメージしたという、丸みを帯びた形の初代キッズケータイとは、がらりと趣を変えて登場したのが、2代目キッズケータイの「F801i」。デザインを手がけたのは初代キッズケータイと同じ、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏だ。
端末デザインの基本コンセプトは初代と同じ“子供にこそ本物を”というものだが、形はスクエア基調の大人っぽい雰囲気を持つ端末へと変化。この理由について佐藤氏は「調査をすると、子供も、“大人が持つようなかっこいいものを持ちたい”という意見がある。子供らしさを残しながらスタイリッシュにバージョンアップした」と説明する。“安心”や“守ること”をイメージさせる円のモチーフは、端末の背面にある「ひかりリング」や決定キーに採用し、それがデザインのアクセントになっている。
F801iは、安全に関わる機能を使うためのパーツをシルバーで統一し、分かりやすくしているのも特徴の1つ。背面の「ひかりリング」、長押しすると自分の居場所を自動で通知する「ちょこっと通知キー」、引っ張ると大音量でブザーが鳴るリングをシルバーで塗装し、「ぱっと見て分かりやすいように」デザインしたという。携帯の置き忘れを防ぐ「おまもリモコン」は、初回出荷分に腕時計型のホルダー付属する。「首にかけると危ないとかいろいろ考えて、時計のようにしておくのもいいかなと。鉄人28号を呼ぶような感じで」(佐藤氏)
ボディカラーはベーシックなホワイトとブラックに加え、前モデルでも人気があったライトブルーと、エマージェンシーを形にしたようなインパクトのあるオレンジの4色をラインアップする。「ライトブルーとホワイトは女の子向け、ブラックとオレンジは男の子向けというイメージ」(佐藤氏)
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