外観もすごいが中身もすごい──「INFOBAR 2」“溶けかけた飴”への挑戦開発陣に聞く「INFOBAR 2」(1/2 ページ)

» 2007年12月19日 19時21分 公開
[田中聡(至楽社),ITmedia]

 「いまだに初代INFOBARをお使いのお客様が多いんです」

 商品企画を担当した鳥取三洋電機 マルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信企画部 モバイル商品企画課 主任企画員の徳原康隆氏が話すとおり、INFOBARには根強いファンが多い。

 「次のINFOBARはいつ出るのか」という声は常に挙がっていたようで、初代INFOBARを使い続けてきたユーザーにとって、INFOBAR 2はまさに待望の機種といえる。

 INFOBAR 2は、INFOBARに引き続き、プロダクトデザイナーの深澤直人氏がデザインを担当した。「四角い飴が口の中で溶けて丸みを帯び始めたようなかたち」を実現すべく、スクエアなフォルムの初代INFOBARとは打って変わって、徹底的に“曲面”が強調されているのが大きな特徴だ。

 デザインに注力した端末は機能が犠牲になるケースもあるが、INFOBAR 2はワンセグ、おサイフケータイ、FMラジオ、オートフォーカス(AF)付き有効197万画素カメラ、GPSなど、現行機種で必要とされる機能やサービスにもしっかり対応する。

 発表会でKDDIの高橋誠氏が「INFOBAR 2はau design projectの集大成」とアピールするのもうなずけるほど、INFOBAR 2はデザインと機能ともに完成度の高いモデルに仕上がっている。それだけに、開発には高い技術力が要求されたことは想像に難くない。あの丸みを帯びたボディはどのようにして実現したのか。薄型軽量化の秘密、高画質化の手法とは――初代INFOBARに引き続き、開発を担当した鳥取三洋電機に話を聞いた。

Photo 左から鳥取三洋電機 マルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信開発部 モバイル回路技術課の加藤亮太氏、マルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信開発部 モバイル機構技術課の岩佐圭一郎氏、マルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信企画部 モバイル商品企画課の徳原康隆氏

視認性と操作性を損なわぬよう、ディスプレイとキー面に曲線を反映

Photo マルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信企画部 モバイル商品企画課の徳原康隆氏

 鳥取三洋電機がINFOBAR 2の具体的な検討をスタートしたのは、2006年10月にKDDIがINFOBAR 2のコンセプトモデルを発表した直後だった。コンセプトモデルを初めて見た開発チームにとって、あの丸みを帯びた形は想像を超えたものだったという。

 「コンセプトモデルの発表後、ショップなどを回ったときに「ぜひ(INFOBAR 2を)作ってください」と多くの人に言われましたが、『2〜3年くらいかかりますかね』と答えざるを得ないほど難しい形でした」(徳原氏)

 機構技術を担当したマルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信開発部 モバイル機構技術課の岩佐圭一郎氏は「コンセプトモデルのサイズで部品を配置することはある程度決まっていたのですが、開発当初はまだ正式な図面がなかったので、モックアップを借りて寸法を測り、そこから内部構造を検討しました」と、開発初期のエピソードを紹介してくれた。

 しかし最初に作ったモックアップを深澤氏見せたところ、「これはちょっと違う」と難色を示した。深澤氏がINFOBAR 2で特にこだわったのが、“四隅の曲線”だ。深澤氏が納得のいく曲線ができ上がるまでに何度もやり取りを重ね、3台目のモックアップでようやくOKが出た。

PhotoPhoto 右から順に古いモックアップ。一見すると同じような形だが、見比べると全体的な曲面や四隅の角の丸みが違う。白いモックに比べ、一番左の青いモックのほうが四隅が丸みがかっている

 ボディ全体が丸みを帯びているため、外部接続端子、イヤフォン、microSDカードスロットのカバーにも丸みを持たせている。カバーは筐体と同じ素材を使っているので、しっかりと開閉できる。また、曲線と同様にこだわったのが“フラットなボディ”だ。「出っ張りを絶対になくしたいという深澤氏の要望があったので、サイドキーは搭載していません」(徳原氏)

PhotoPhoto カードスロットや端子のカバーも丸みを帯びている。このカバーの製造は、筐体と同じメーカーに依頼した

 INFOBAR 2を手にして驚かされるのが、ディスプレイ面にも曲線が反映されていることだ。ディスプレイが曲面だと、斜めから見た時にだと画面が歪んで見えることが心配される。これは、どのようにして曲線をつけたのだろうか。

Photo マルチメディア事業部 技術統括部 モバイル通信開発部 モバイル機構技術課の岩佐圭一郎氏

 「ディスプレイカバーは、表の曲面は同じままで、“裏も曲面”と“裏は平面”の2パターンを試作しました。裏が平面のほうが強度は有利なのですが、横から見るとレンズ効果でゆがんでしまうので、いろいろな材料と厚さのパターンを試しました」(岩佐氏)

 材料4種類、厚さ3種類ものパターンで試し、最終的には裏面にも曲線を設けて中央に少しだけ厚みを持たせたディスプレイカバーを採用した。ディスプレイの強度は「平面とは違って、1点に負荷がかかるため若干不利だが、形状や材料を工夫したことで、これまでのケータイと同等の耐久性を実現できた」(岩佐氏)そうだ。

 また、ディスプレイには初代INFOBARと同様にハードコート処理を施してある。普段使いで簡単に傷が付くことはなさそうだ。

Photo ディスプレイ面も曲面になっているが、斜めから見ても視認性には影響がない

 もう1つ、注目したいのがダイヤルキーの形状だ。ディスプレイと同様、ダイヤルキー面も曲線を帯びているためにキーの操作性への影響が懸念されるが、もちろん、こちらも初代INFOBARと同等の操作性を実現するために、さまざまな工夫が凝らされている。

 「一般的なケータイのキー部分は平面なので、どのキーも操作性は同じなのが普通です。そのため曲面だからといって操作性に差が出てはいけません。どのキーを押しても同じ操作性を得られるようにしています。INFOBAR 2のキーは一見すると押しづらそうな印象がありますが、キー面積には十分なスペースを確保できているので、一番端の湾曲している部分を触っても、それほど使い勝手が悪いとは感じられないはずです」(徳原氏)

 「十字キーを微妙に出っ張らせることで、隣り合うキーを同時に押してしまわないよう配慮しました。当初はもっと出っ張らせたかったのですが、フラットな曲面が崩れてしまうので、わずかな段差にとどめています」(岩佐氏)

 十字キーの出っ張りは0.1ミリほどなので、見た目にはほとんど分からない。初代INFOBARよりもキーはフラットだが、キーを押すとしっかり沈むので“押した感覚”は損なわない。ここはデザインと操作性を両立できた部分だといえる。

 一方で、INFOBAR 2では縦のキーピッチは初代INFOBARよりも狭くなった。これは「ディスプレイ面とキー面を均一にしたいという深澤さんの要望があった」(徳原氏)ためだ。しかしその分横幅を広げることで、初代INFOBARと同等のキー面積を確保している。

Photo ほぼ隙間のない状態でダイヤルキーが敷き詰められている。正面からでは分からないが、十字キーがわずかに盛り上がっている
PhotoPhoto 卓上ホルダも深澤氏がデザイン。INFOBAR 2をセットしたときに一体感が出るよう、出っ張りのない形状が採用されている。なお、コンセプトモデルの卓上ホルダは異なるデザインだったが、今回の製品化ではコストも含めて制限が多かったため、最終的にはオーソドックスな形になった
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