勝ち負けがはっきり分かれた端末メーカー──iPhoneショック、共通プラットフォームの動向2007年の携帯業界を振り返る(3)(2/4 ページ)

» 2007年12月30日 23時55分 公開
[房野麻子,ITmedia]

神尾 あと、シャープの別格的な強さは今後どうなるのか、というのが気になりますね。

石川 そうですねえ、どうなるんでしょうね。

神尾 少し前まで「イメージで底上げ」されている部分もあるかなあ、と思ったこともあったんですけど……実は今「SH905i」を使っているんですが、「やっぱりいいわ」って思うんですよ。総合力、実力がある。

石川 そうそう。僕もSH905iです。

神尾 他メーカーを使った後にSHを使うと、我々のひねくれた心でも納得させられちゃうところがありますよね。特に今年のシャープ端末には、文句が言えません(笑)

石川 そうなんですよ。穴がないですよね。そこがSHのすごさです。端末レビューを書いているとよく分かるんですが、文句が言えない。

ITmedia ドコモのSHは、ちょっともっさりしてはいますね。シンビアンのもっさりさだと思うんですが。でもSH905iでは改善されてきているようですね。

神尾 だいぶ直っていますし、トータルで使いやすいとか、この作りだったら納得だな、というところがあるんですよ。批判できないってのは、少し悔しいんですけど(笑)

石川 ブランドがあり、使い勝手もいいとなれば強いでしょうね。あと、5キャリアで展開しているところが……

神尾 まさに別格ですね。強いですよ。

ITmedia AQUOSケータイの“サイクロイドスタイル”は、ユーザーにちょっと飽きられてきている、ということはありませんか?

石川 AQUOSケータイの後に何かないと、という気はしますね。

神尾 私は今回、AQUOSケータイよりもソフトバンクモバイルの「820SH」と「821SH」を評価しています。あそこまでスリムで、作りこんで、かつワンセグを入れている。あのアンテナの処理なんかもすごいじゃないですか。やっぱり広島(編注:シャープ通信のシステム事業本部は広島に所在)は強いよ、と思いました。

石川 確かに。

神尾 あれが新しいスタイルになるとは思いませんが。それと、個人的に可能性を感じているのは、「FULLFACE 913SH」です。あれは、次か、その次くらいでもっとよくなるんじゃないでしょうか。シャープの端末って、最初に出したものよりも、2世代目、3世代目ですごく良くなってくるので。

石川 シャープは海外事業に力を入れるようなシフトを組んでいるようなので、そうなってくるとまた面白くなってくるかな、と思います。

神尾 そうなると、海外はスライド型の端末が売れているので、やはりスライドなんですよ。(日本では)AQUOSケータイとスライドの2本立て、それにプラス、数を取れる折りたたみの薄いヤツですね。

石川 コンパクトスライドの「816SH」は、もともと海外向けとして作ったモデルですね。あの手の派生系や進化系が出てくれば、海外でも強くなってくるかな。でも、シャープが世界で勝てなかったら、日本のメーカーはもう無理だ、という気がしますから、なんとかシャープには頑張ってもらいたいです。

神尾 この冬商戦で、シャープが久しぶりにドコモの中でパナソニック モバイルに負けたじゃないですか。あれはいいと思います。最近のシャープは「勝ってあたりまえ」の市場環境だったから、ボリュームの大きいドコモ向けで一度負けるのは、いい刺激になります。勝ちすぎると油断しちゃいますしね。

石川 そうですね。あれで火がついてくれると、また面白くなりますね。

ITmedia 他のメーカーだと、東芝なんかはどう思われますか?

神尾 「KCP+」をがんばれ!

石川 それに尽きるかなあ。去年は端末もいっぱい出したし、良かったと思うんです。でも今年は、なんだろう、驚きがないというか、やっぱり穴が多いですよ。VGA端末を作ってもフォントがギザギザ、みたいな詰めの甘さがあるし、「W55T」という9.9ミリのカードサイズ端末を作りましたといっても、横幅が55ミリもがあって、最も幅広な端末なんじゃないかと思わせるようなものだったりするし。そう考えると、いいものは作れそうなんだけど、もう一押しかな、という気がしますね。

ITmedia 今年(2007年に)成功したといえるのは、“着せ替え”くらいでしょうか。

石川 でも、「fanfun. 815T」は、東芝の端末というよりは、ソフトバンクモバイルの、ですからね。

神尾 あれはコンセプトさえあればいいだけの話で、東芝じゃなきゃ作れない端末ではないですからね。東芝って「シャープみたいになりたいんだろうな」とは感じるんですが、それだけの力量がまだないというのが一番の問題でしょうね。

石川 その路線にも行きたいんだろうけど、シャープみたいに“尖れない”というところがあるのではないでしょうか。

神尾 実力がないとは思わないですが、全体のデザインも含めたパッケージングの能力がいまひとつですよね。あのカードサイズにしてもFeliCaが入っていませんし。カードというんだったら当然おサイフケータイだろう、と思うんですが。

石川 もったいないですよね。

神尾 そういう意味で、東芝さんは中途半端感がありますね。今は的を絞って、1つ1つ印象に残る「いい端末」を出してほしい。あと、迷走気味と言いますか、実力が発揮し切れていないと思うのが、ソニー・エリクソン。

ITmedia 今年はややインパクトに欠けましたね。尖ってもいませんでした。

石川 そうそう、尖ってない。最たる例が「SO905i」。あれは端末的にはよくできていて、穴もないんですが、尖っていないんですよね。なんでかなあと思っているんですが。

神尾 存在感のないソニエリなんて、存在意義がないですよ。量が取れればいい、という考えになったときに、「ソニエリさんはなんでここにいるの?」と思ってしまいます。少なくとも多くのソニーファンは、「万人受けするけど、凡庸なソニー端末」なんて期待していないんじゃないでしょうか。「売れなくてもいいから」っていうと語弊はあるけれど、やっぱりソニエリは他と違うもの、かっこいいものを出してほしいですよね。

石川 難しいところですね。ソニエリも迷っているんだと思いますね。preminiみたいな個性派の端末は、確かにファンはいるし、彼らは飛びつくけど、なんだかんだいって、そんなに売れていないんですよ。ソニエリとしては、やっぱり売れる端末を作りたいんだな、と。数がさばける端末を作りたいから、若干保守的になっているのかなと思います。

神尾 販売方式が変わったんだから、それを利用したらいいじゃないですか。毎シーズン出す必要はないわけですよ。販売後期になってもあまり値下がりがないんだから、1年に1回、気合の入ったものをガンと出して、1年間売り続ければいい。さらには10万円の端末を作って、割賦で売ればいいんですよ。技術的にもデザイン的にも、ソニーに中途半端は求められていないと思いますね。今のソニエリに対するモヤモヤとした感じとか、SO905iだけが販売ランキング外とかっていうのは、彼らの作る端末が中途半端でお客さんの求めるものに応えていないからだと思うんです。

 ソニエリは恵まれていると思うんです。ブランド力が高いし、ソニー・エリクソンと言われて持つイメージがあるじゃないですか。かっこよさに妥協せず、他とは違うんだっていうイメージ。それに合う端末を出せば、値段が高くても売れるんじゃないでしょうか。

石川 そうですね。それこそデザインセンターが海外にあって、ワールドワイドでやっているのだから、日本を意識しないで、海外の格好いいものを持ってくればいいのにと思いますね。

神尾 例えば、チタンやアルミを使ったすごく格好いいスライド端末で、フルスペックで販売価格は10万円です、というのを作ればいい。たぶん一括払いじゃ買えないけれど、割賦だったらなんとか買える、という話になりますよ。他のメーカーはそんなこと許されないけれど、ソニエリだったら許されます。ソニエリには、市場性やコストといったことをあまり考えずに、彼らが信じる「革新的で、かっこいい端末」を妥協せずに作ってほしいですね。

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