オーセンティックモダンという名の“ジャストサイズ”――「AQUOSケータイ W61SH」の狙い開発陣に聞く「AQUOSケータイ W61SH」(1/2 ページ)

» 2008年01月09日 21時00分 公開
[田中聡(至楽社),ITmedia]

 auの2008年モデル第1弾として年明け早々に発売された「AQUOSケータイ W61SH」は、au向けのAQUOSケータイとしては、「AQUOSケータイ W51SH」に続く2機種目のモデルとなる。

 ディスプレイには2.8インチのNewモバイルASV液晶を採用し、従来機よりも鮮やかな映像でワンセグを視聴できる。デザイン面では、背面のLEDディスプレイが目を引く。時計、バッテリー残量、電波状態などが大きく浮かび上がるほか、アニメーションも楽しめる。ヒンジ側の背面には、2分割したステンレスパネルを採用し、高級感も演出する。

 新機能として「名刺リーダー」、横画面対応のコミックとゲーム、オープンアプリプレイヤー、フェイク着信、緊急地震速報などに対応。日本語入力システムも最新のケータイShoin6にバージョンアップした。おサイフケータイ、EZナビウォーク、赤外線通信(IrSimple)、オートフォーカス(AF)対応2Mカメラなどの機能をコンパクトなボディに搭載している。

 ただ、W51SHで利用できたワンセグ映像の外部出力やデジタルラジオ、EZ・FM、Hello Messengerには非対応となった。このあたりはauの初代AQUOSケータイ W51SHや他社のAQUOSケータイと比べると見劣りする部分だが、押さえるべきところはしっかりブラッシュアップしている。W61SHはどのような狙いで開発されたのだろうか。

Photo シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第四事業部 商品企画部 副参事の後藤正典氏(右)と商品企画部の谷健氏(左)
PhotoPhoto W61SHのボディカラーはビビッドピンク、ピュアホワイト、クールブラックの3色

“幅”と“高さ”を重視してコンパクトサイズを実現

 2007年3月に発売したW51SHは「どちらかというとハイスペックな商品だったので、購入層は男性が中心だった」と通信システム事業本部 パーソナル通信第四事業部 商品企画部 副参事の後藤正典氏は話す。

 しかし「映像コンテンツやワンセグの視聴は、女性にも興味を持つ人が多い。携帯電話の中でワンセグ機能は一般化しているので、ユーザー層を拡大できるAQUOSケータイがあってもいいんじゃないか」(後藤氏)と考え、今回のW61SHは“より身近に使ってもらえるAQUOSケータイ”として「カジュアル&ジャストサイズ」をコンセプトとした。カジュアルは“広く使ってもらうこと”を狙い、ジャストサイズは“女性ユーザーでも手軽に使ってもらえるサイズ感”を狙った。

 特にこだわったのが本体サイズ。W51SHの109(高さ)×50(幅)×25(厚さ)ミリに対し、W61SHは104(高さ)×48(幅)×19.9(厚さ)ミリで、高さ/幅/厚さのいずれの数値もダウンしており、コンパクト化が図られている。

PhotoPhoto au初のAQUOSケータイ W51SHと並べると、ずいぶんコンパクトになっているのが分かる。高さと幅がぐっと小さくなっているのに加え、厚さも5ミリ以上薄くなっている

 「W61SHは、現行のAQUOSケータイの中では水平投影面積(編注:真上から見たときの面積)が一番小さいのが特徴です。我々がいう“ジャストサイズ”とは、“幅”と“高さ”がちょうどいいサイズであること。特に48ミリの幅は、コンパクトにまとめられたと思います」(後藤氏)

 通信システム事業本部 パーソナル通信第四事業部 商品企画部の谷健氏も「女性がバッグの中にケータイを入れるときに、長さ(高さ)を気にする方が多いという調査結果も出ていますので、(高さの)104ミリも、ユーザーの方には受け入れていただける点だと自負しています」と胸を張る。

 サイズを重視したことで、スピーカーはステレオではなくモノラルとなった。ただ「ヒンジの中に入れるスピーカーはモノラルに限定されてしまいますが、正面から音が出るので、ワンセグやビデオクリップは下にスピーカーを入れるよりも音の抜けはいい」(谷氏)という。スピーカーの穴は音がより抜けるよう2か所に空けてあるが、ディスプレイを閉じたときと開いたときに穴が見えないように配置している。

NewモバイルASV液晶とSVエンジン+で快適なワンセグ視聴

 AQUOSケータイの核となるワンセグ機能は、ディスプレイにNewモバイルASV液晶を採用し、画質をさらに向上させた。NewモバイルASV液晶は、大ヒットしたスタンダードモデル「W52SH」のモバイルASV液晶と比べて応答速度が約4倍になり、ワンセグ視聴時のコントラスト比はW52SHの500:1から2000:1に向上している。通常時も800:1のコントラスト比を実現しており、とても明るく見やすいのがポイントだ。

 「バックライトは高演色タイプに変更し、色再現性をNTSC比で約120%に高めています(u’v’色度図の場合)。特に赤をキレイに表現できるようになりました」(谷氏)

 ディスプレイの視認性が向上した点も見逃せない。液晶パネルと表面の保護用強化ガラスの間に隙間(空気層)がないエアギャップレス構造の「リフレクトバリアパネル」を採用することで、光の映り込みや反射を低減。特に太陽光の下で鮮やかな映像を再生できる。

 画像処理エンジンは、従来の「SV(SuperVivid)エンジン」を強化した「SVエンジン+」を搭載し、よりエッジの効いた画像を表示できるようになった。「今までのSVエンジンでもエッジを強調していましたが、さらに鮮やかに、くっきり表示できるようになりました」(谷氏)

 また、このSVエンジン+を使った画質設定として、「ビビッド」と「スポーツ」の2種類が追加され、ワンセグ視聴時には「標準(明るさ自動)」「標準(明るさ固定)」「ダイナミック」「映画」「節電モード」と合わせて計7種類の画質設定が可能になった。

 「ビビッドは、SVエンジン+の機能をフルに使って映像をより鮮明に見せる設定で、例えれば家電量販店のテレビ売り場のデモでご覧いただけるような明るさです。AQUOSは“自然に近い色合いを出す”のが基本コンセプトですが、W61SHはワンセグ機として屋外にも持ち歩くし、テレビよりも解像度が低いので、お客様の“もっと鮮やかな映像が見たい”という声を反映させました」(谷氏)

 従来モデルでも、ワンセグ視聴時の画面の輝度を上げるモードとして「ダイナミック」を用意していたが、「ビビッド」は、さらに明るくクッキリ見せられるという。「AQUOSケータイの画質は全般的にエッジを効かせていて文字も見やすいですが、ビビッドに設定すると、さらに明るくクッキリ表示できます」(谷氏)

Photo 左が「ビビッド」設定、右が「標準(明るさ自動)」設定の画面。明るさが全然違う

 なお、ビビッドに設定したのに画面が暗くては意味がないので、ワンセグ視聴時に明るさだけを設定することはできず、画質と明るさはセットで変更される。

 このほかワンセグを快適に視聴する新機能として「映像シーン別バックライト制御設定」も追加した。これは、映像の内容や明るさよって自動的にバックライト輝度と映像輝度をコントロールしてくれる機能だ。

 「暗いシーンになると、バックライトの輝度を自動で下げてくれます。ただし同時に映像の輝度を上げてバランスを取っているので、見やすい映像にしています。また、映像シーン別バックライト制御設定は、消費電力を抑えられるというメリットもあります」(谷氏)

 映像シーン別バックライト制御設定とは直接の関係はないが、W61SHは、画質設定を節電モード、DBEXをオフにした場合、ワンセグの連続視聴時間が最長約6時間半に延びている。この数値はauのワンセグケータイ、そして他キャリアのAQUOSケータイの中でもトップクラスを誇る。標準画質でDBEXをオン(イヤフォン使用時)にしても、約5時間20分の視聴時間を実現した。

 「連続視聴時間が延びたのは、SVエンジン+を搭載したことが大きく効いています。映像シーン別バックライト制御設定を加味すれば、映画など画面が暗いコンテンツでは、さらに視聴時間が長くなると思います」(谷氏)

 ディスプレイのスペックで気になるのが、W51SHの3インチから2.8インチに小さくなったことと、解像度がワイドVGA(480×800ピクセル)やフルワイドVGA(480×854ピクセル)ではなくワイドQVGA(240×400ピクセル)である点だ。ディスプレイのサイズは「本体のサイズ感を重視したため」(谷氏)、2.8インチを採用した。3.2インチになると幅48ミリには収まらず、本体サイズが長くなるのも厳しかったからだ。解像度については、「VGAは解像度が高いので、大きい液晶サイズを選ばなければいけないが、VGA液晶に2.8インチは小さく、現状ではワイドVGA液晶という選択はなかった」(後藤氏)という。

 今回はディスプレイのスペックよりもサイズを重視したため、2.8インチワイドQVGA液晶は妥当な選択といえるが、ドコモやソフトバンクの最新AQUOSケータイが3.2インチのフルワイドVGA液晶を採用していることを考えると、もの足りない感もある。大画面・高解像度ディスプレイは、次期モデルでの採用に期待したい。

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