2台目需要を狙う“コミュニケーション”に最適な音声端末──ウィルコム 喜久川政樹社長(1/2 ページ)

» 2008年01月21日 23時33分 公開
[園部修,ITmedia]
Photo 新端末「HONEY BEE」を掲げるウィルコム 代表取締役社長の喜久川政樹氏

 ウィルコムは1月21日、2008年の春商戦に向けた新端末を発表した。同社では音声、スマートフォン、データ通信、次世代PHSを事業の4つの柱に据えて事業を展開していく考えで、まずは第1弾となる音声端末の拡充を発表。ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏は「スマートフォンやデータ通信料の改定などについては、また近いうちに発表したい。総務省か免許を受けた次世代PHSは1日も早いサービス開始に向け、全身全霊で取り組む」と話した。

12月契約数が純増に戻った理由

 発表会の冒頭で喜久川氏は、2007年の8月、10月、11月に契約数が純減したことに触れ、「多くのみなさまに心配をかけた」と振り返ったが、12月には純増に戻ったことをアピール。2008年1月の契約数の伸びも引き続き好調とのことで「1月も純増の見込み」(喜久川氏)と笑顔を見せた。

 ウィルコムの契約数が再び純増ペースに転じた理由は、

  1. 割賦販売や割引、サポートなどの新制度の導入
  2. アカデミックパックによる新市場の開拓
  3. 企業向け新サービス「W-VPN」の導入

という3つの要因が大きいと喜久川氏は話す。

 特に割賦販売制度「W-VALUE SELECT」の導入によって、端末代金の実質負担額が安くなり、新規契約や機種変更がしやすくなったことが、契約増や解約率の低下に影響しているという。また学生を対象にした、Advanced/W-ZERO3[es]のアカデミックパック(専用メニュー搭載、実質負担額0円)を提供したことで、新しいユーザー層を開拓できたことも少なからず影響があったようだ。実際、Advanced/W-ZERO3[es]とW-ZERO3[es]の発売後の販売数をグラフ化してみたところ、発売から4カ月程度はほぼ同じくらいの伸び率で販売数が推移していたが、アカデミックパックを導入してからAdvanced/W-ZERO3[es]の販売数が大きく伸びており、大学生などを中心に、Advanced/W-ZERO3[es]の販促活動が実った証しとした。

 法人向けに、オフィスの電話とウィルコムのPHS間の音声通話を定額にする「W-VPN」を導入したことも、12月の契約増につながった。このW-VPNは、11月からプレセールスを行っており、すでに数万回線の見込み契約があるとのこと。その一部が12月に開通したことで、契約数を上乗せできたという。1月の純増に自信を見せたのも、このW-VPNのセールスが好調なことが理由の1つにあるようだ。

PhotoPhotoPhoto 2008年のウィルコムは、音声、スマートフォン、データ通信、次世代PHSの4本柱で事業に取り組む(左)。12月に契約数が純増に転じたのは、新制度の導入や新市場の開拓、新サービスの導入が大きかったという(中央)。Advanced/W-ZERO3[es]の販売数は、アカデミックパックの導入によってW-ZERO3[es]の販売数を大きく上回った(右)

「もっとコミュニケーションが好きになる」端末ラインアップ

 ウィルコムは、2008年を「現行世代のPHSできっちりと純増して足場を作りつつ、既存の16万のマイクロセルとIP通信網を活用できる次世代PHSの開発に力を入れていく重要な年」(喜久川氏)と位置づける。次世代PHSに注目が集まっているが、既存のPHSも重要であり、「現世代が純減しても次世代で純増すればいい、という考えでやっているのでは決してない」と喜久川氏は話す。

 この“現世代をきっちり純増させていく”ための鍵を握るのが、ウィルコムの4本柱のうちの3本である「音声」「スマートフォン」「データ通信」だ。このうち音声では、“制限のないコミュニケーション”を実現した、ウィルコム定額プランによる24時間通話定額、メールの送受信無料、低廉なパケット通信料などを前面に押し出してユーザーの獲得を目指す。

 過日、ウィルコムが独自に携帯電話ユーザーに対して調査を行ったところ、多くの回答者はウィルコムのPHSサービスが、ウィルコム同士なら24時間通話が無料で、メールの送受信も無料、パケット通信料金も低廉であることなどが魅力として挙げられたが、多くのユーザーはウィルコム定額プランのメール送受信が無料であることや、パケット通信料が携帯電話に比べて割安であることを認知していなかったという。そこで2008年の春商戦では、従来から訴求してきた音声定額に加えて、メールやパケット通信を使ったコミュニケーションが低価格で行えることも訴求する。特にメールを使ったコミュニケーションは、通話と並んで重要なものと位置づけ、機能を強化してアピールする。

 具体的にはドコモ、auとの絵文字の相互変換サービスを1月22日から導入。ソフトバンクモバイルとの相互変換も今春までに実現する。また“デコメ”との愛称で若年ユーザーに人気のHTMLメールサービスも、新機種の発売と同時に「デコラティブメール」という名称でスタートする。メールボックスの容量は1Mバイトから15Mバイトに拡大予定だ。ウィルコム定額プランに契約していれば、これらのサービスがすべて無料で利用できる。

PhotoPhoto ウィルコムの独自調査で、ウィルコム同士が通話無料というウィルコム定額プランのメリットは比較的よく知られているものの、メール送受信が無料だったり、パケット通信料が安いという、ニーズの高い項目に対しての認知度が低いことが分かった(左)。そこで2008年春モデルでは、メールサービスの機能を向上し、コミュニケーションに最適なケータイとしてPHSをアピールしていく(右)
PhotoPhotoPhoto ウィルコム定額プランでのメール料金と、携帯キャリア各社のメール料金を比較した表(左)。また1.5Kバイト程度のテキストメールを他キャリア宛てに送信する場合(中央)と、100Kバイト以内の写真付きメールを他キャリア宛てに送る場合(右)の通信料の違いを示し、ウィルコム定額プランの優位性をアピールした

コンセプトは“Fun! Communication”と“Mature”

Photo 2008年春モデルのコンセプトは“Fun! Communication”と“Mature”

 2008年春商戦向け音声端末のコンセプトは“Fun! Communication”と“Mature”の2つ。Fun! Communicationは、読んで字のごとくコミュニケーションを楽しむ人を、Matureは低電磁波、高音質といったPHSの特性なども評価する、30代以上の長期ユーザーをターゲットとしたコンセプトだ。

 特にコミュニケーションを楽しむユーザー(Fun! Communication)を強く意識し、音声定額による、いつでもどこでも話せるメリットに加え、HTMLメール「デコラティブメール」の送受信機能を実装してメールによるコミュニケーションも可能なことをユーザーにアピールするのが京セラ製の「HONEY BEE」こと「WX331K」だ。厚さ9.9ミリのスリムなストレートボディにポップなデザインを施し、ケータイを使ったコミュニケーションを重視する若者に向けて販売する。もちろん赤外線通信機能やOperaブラウザ、W-OAM対応などの最近のトレンドはしっかり抑えている。

 一風変わったセイコーインスツル製の小型端末「X PLATE(テンプレート)」は、ウィルコム最軽量の64グラムを実現した音声通話に割り切った端末。中国で販売されている、PHS用のSIMカード(契約情報などを記録したメモリカード)、PIMを装着すると中国のPHSエリアでも電話として利用できるのが特徴だ。プリペイド契約などで現地のSIMを入手すれば、ドコモなどの国際ローミングを利用するより圧倒的に安い価格で通話ができる。ウィルコムでも、日本国内で中国のPIMカードのレンタルサービスを行うことを検討しているとのこと。

 一方、ウィルコムならではの強みや特徴を、スリムな折りたたみボディに詰め込んだMatureな端末が「WX330K」となる。厚さ15.6ミリの細身ボディにOperaブラウザやIrSimple対応の赤外線通信機能、microSDスロットを搭載するほか、W-OAM対応、絵文字・デコラティブメール対応など、ウィルコム端末の最新機能をすべてサポート。これまでウィルコムの音声端末を使ってきたユーザーが機種変更しても満足度が高い端末を目指したという。

 またロングセラー端末「9(nine)」は、赤外線通信機能を新たに搭載したほか、要望の高かった前面着信LEDを用意して「9(nine)+」として投入。“定番”の音声端末として、すでに発表済みの「WX320T」や「nico+」とともに、低廉な音声端末を望むユーザーのニーズに応える。

 このほか、WX321JをW-VPNに対応させた「WX321J-Z」と、W-SIMをPCカードスロットでできるデータ通信カード「WS014IN」も合わせて発表している。

Photo 今回発表された6機種と、すでに発表済みの新モデルを合わせたウィルコムの2008年春モデルは8機種

 端末価格はオープン価格だが、ウィルコムストアの直販価格は、ハイエンド端末のWX330Kが毎月の実質負担が500円程度、そのほかの端末は実質負担0円で入手できるような価格になるとのこと。

 なお、気になる既存機種のデコラティブメール対応は、「すでに発売中の音声端末に関しても、できる限り対応を進めていきたい」(執行役員 開発本部長 兼 サービス開発本部長の黒澤泉氏)という力強い話を聞けた。

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