“地方の法人契約率”は伸びしろが大きい──NTTドコモ九州、法人市場への取り組み神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2008年02月21日 17時50分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 携帯電話の契約数が1億を突破し、各キャリアの解約率も低下している。コンシューマー市場を中心に新規契約の伸びが鈍化する中で、“残された純増市場”と注目されているのが、「2台目新規」と「法人市場」である。特に後者は企業のセキュリティやコスト削減意識の高まりにより、2006年から大きく伸び始めた分野だ。

 この法人市場をめぐる競争では、すでに都市部の大企業を中心にした契約獲得は一巡し、現在は地方の中堅・小規模企業の獲得合戦が熾烈さを増してきている。この分野の開拓で先駆けたウィルコムやソフトバンクモバイルはもちろん、現在ではドコモやKDDIも中小・地方の法人市場に積極的にリソースをつぎ込んでいる。

 地方の法人市場をどれだけ開拓し、獲得できるか。

 今回のMobile+Viewsは特別編として、NTTドコモ九州 取締役 法人営業部長の板倉繁信氏にインタビュー。地方におけるドコモの法人向けビジネスの取り組みと、今後の展望を聞いた。

Photo NTTドコモ九州 取締役 法人営業部長の板倉繁信氏

九州は法人契約率の伸びしろが大きい

 九州の経済規模は全国の約1割。首都圏や関西、名古屋を擁する中部と比べれば小さいが、ここ数年は九州北部地域に製造業(自動車・半導体など)の大規模設備投資があるなど拡大傾向にある。地域経済は活発化しており、1人あたり所得も増加傾向にある。

 携帯電話の法人市場として見ると、九州に本社がある企業数は中小を含めて約15万社(平成18年度・総務省資料より)。このほかに「九州外に本社がある企業が数万社あると考えられる」(板倉氏)という。

 「(携帯電話の)法人契約市場の概況で申し上げますと、ドコモ九州の契約者数のうち法人契約の比率は約6%になっています。(法人契約率の)全国平均が約10%ですので、九州はいまだ法人契約が少ない。個人契約の携帯電話をビジネスで使うという状況から、法人契約化への転換が進む途上にあると考えられます」(板倉氏)

 一方で、企業側の携帯電話の法人契約化に対する関心は高くなってきている。特にニーズが高いのが“セキュリティ”だ。

 「個人情報保護法の施行以降、情報漏洩防止などへ意識の高まりもあり、法人市場のニーズとしては携帯電話のセキュリティが大きい。また、これは九州北部で特徴的な動きなのですが、製造業の工場が増えたこともあってか、法人向けのカメラなし携帯電話の需要が拡大しています」(板倉氏)

 セキュリティ以外の分野では、「コスト削減」や「業務効率の向上」への関心が高く、法人向けのオフィス割MAX50や、ドコモが得意とする豊富なソリューションサービスの訴求に力を入れているという。

MNP流出は少なく、純増が続く

 2006年10月からスタートした番号ポータビリティ(MNP)制度において、ドコモは一時的ではあったが純減を経験するなど厳しい競争環境に置かれた。しかし、法人市場ではMNPの影響は軽微だったと板倉氏は話す。

 「当初はMNPの影響があるのではないかと想定していましたが、実際には顧客のポートアウト(流出)はほとんどなく、コンシューマー市場ほどの影響はありませんでした。ソフトバンクモバイルやauの攻勢は確かにありましたが、法人市場ではドコモの対抗策も速かったため、影響を少なくすることができたのではないかと思います」(板倉氏)

 むろんMNPと、それによる他社の攻勢の影響がまったくなかったわけではない。契約数の少ない中小企業の顧客に関しては影響があった。

 「九州の状況で見ますと、契約数10回線未満の法人契約でポートアウト率が高かったです。このデータは(MNP)開始直後から把握していましたので、法人向け割引サービスの訴求に関しては、今までのアカウント体制中心の営業支援体制を根本から見直しました。具体的には、マス媒体を使ったプロモーションをかけたのです」(板倉氏)

 法人市場における広告宣伝は企業の導入決定権者への訴求となるため、通常はビジネス誌や業界紙、専門誌などを通じたプロモーションが中心になる。だが、ドコモ九州では法人向けサービスの訴求において新聞の15段広告を使い、幅広い広告宣伝を実施。「オフィス割MAX50の訴求では、九州の全国紙・地方紙13紙に15段広告をいれました」(板倉氏)という。

 「これらの取り組みは法人の新規顧客獲得にも結びつき、九州の法人加入率は純増基調で全国でも上位をキープできました。法人のお客様はリテンションの点でも有利ですので、全体の解約率低下にも貢献できたと考えています」(板倉氏)

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