カメラがつながると、何ができる?神尾寿の時事日想

» 2008年03月26日 11時01分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 監視カメラのネットワーク化が進んでいるという(参照記事)。フジサンケイビジネスアイによれば、ネットワークカメラの世界市場は2011年に2300億円。現在のほぼ4倍になる見通しだ。

 筆者は様々な企業や団体でコンサルタントをしているが、そこでも「設置したカメラのビジネス活用」が話題になることは多い。例えば先日、ある地域の高速道路管理会社で意見交換を行ったのだが、そこでテーマの1つとして取り上げられたのが高速道路各所に設置された“カメラ映像の有効活用”だった。現在、路上センサー網が渋滞情報を収集し、VICSとしてドライバーに提供しているが、これを補完するものとして映像を使えば、テレマティクスや各種ネットサービスにとって有用なコンテンツの1つになる。特に交通渋滞では「渋滞の発生状況が視覚的に見られれば、ベテランドライバーなら通過にかかる時間のおおよその把握がつく」(自動車ジャーナリスト)からだ。

 道路状況を把握するライブカメラは、すでに複数の稼働例があり、インターネットや携帯向け有料コンテンツとして公開されている。しかし、その対象道路がバラバラだったり、サービスのUIも使いにくいのが現状だ。公開するカメラの数を増やしてネットワーク化し、UIの改良を行えば、もっと使いやすいサービスが構築できるだろう。

「混雑の確認」でカメラ映像を使う

 すでに稼働している例もある。長崎県佐世保市では、全国的な話題にもなった「佐世保バーガー」の人気店17店舗にNTTドコモのFOMA対応ライブカメラを設置(参照リンク)。ドコモの携帯電話から、店内の混雑状況を映像で確認できるようになっている。

 佐世保バーガーは一般的なファストフードのハンバーガーと異なり、少数手作りが特徴であり、週末には1〜2時間待ちということもある。そこでドコモ九州が佐世保観光コンベンション協会に協力し、佐世保バーガーの主要店や人気店にFOMAライブカメラを設置。店内にある「待ち時間ボード」をカメラで映し、それを携帯電話向けに配信するという手法で、各店の混雑状況が来店前に分かる仕組みを構築した。

 携帯電話を使った店舗の混雑状況確認システムとしては、店舗に来店者の受付登録用の情報端末を設置するタイプがあるが、佐世保バーガーの事例で注目したいのは「店内に設置したカメラ映像を公開するだけ」とシンプルな点だ。初期投資が安く抑えられ、運用の負担もほとんどないので、小規模な店舗でも導入できる。ユーザーには、店内の混雑状況を“視覚的に”把握できるというメリットがある。待ち人数は何人かといった細かな状況までは把握できないものの、混雑具合を知るには十分に実用的だ。

 このようなライブカメラを用いた映像がネットワーク化し、マッシュアップが可能な形で公開されていけば、様々なサービスが生まれる素地になる。特にケータイ向けの検索サービスや地図ナビゲーションサービス、カーナビ向けのテレマティクスは、“街のリアルタイム映像”を多く取り込むことで、新たなサービスの可能性が広がるだろう。

 監視カメラというとネガティブな印象を受けがちだが、ライブカメラネットワークを通じて“自分がいない場所の映像を見る”ことによる利便性向上の可能性は大きい。ライブカメラを通じた個人の特定・追跡を技術的に不可能にするなどプライバシー保護の点で勘案すべき部分はあるものの、街に増加するカメラの有効活用として、ライブ映像のネットワーク化とオープン化は検討する価値がある。

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