「お父さん、もう列ができているよ」
息子に手を引かれて、列の最後尾に並ぶ。開場30分以上前だというのに、確かにかなりの人だかりだ。すでに列はスタッフによって整理され、子どもたちの声が賑やかに響いている。アークヒルズを吹き抜ける風が、少し肌寒い。
NTTドコモは3月27日、赤坂のサントリーホールにて、“子ども向け”コンサートイベント「ドコモ クリエイティブキッズコンサート」を開催した。これはドコモのキッズケータイもしくはドコモのファミリーユーザーが参加できるイベント(※注1)で、今回が3回目の開催になる。筆者はプライベートではドコモのファミリーユーザーであり、息子はちょうど5歳でイベントの対象年齢だ。また、ドコモが実施するクリエイティブキッズのプロジェクトには、携帯キャリアが子どもたちのために行う文化的取り組みとして以前から興味があった。
そこで今回のMobile+Viewsは特別編として、一組の親子としてドコモ クリエイティブキッズコンサートに参加。その内容について“楽しみながら”リポートしたい。
ドコモ クリエイティブキッズプロジェクト。これは未来を担う子どもたちの創造性や感性、コミュニケーション能力を、一流のアートや音楽に触れながら伸ばし育もうというもので、2007年にスタートした。総合プロデュースはアートディレクターの佐藤可士和氏。音楽やアートのイベントが定期的に開催されており、ドコモのキッズケータイユーザーや、ドコモのケータイを使う家庭の子どもたちが無料で参加できる。
今回息子と参加したのは、クリエイティブキッズの音楽イベント「クリエイティブキッズコンサート」だ。第1回は2007年8月に開催されており、今回は3回目。毎回演奏は東京フィルハーモニー交響楽団が担当し、司会・コンサートソムリエは朝岡聡氏が務める。子ども向け無料イベントとは思えないほど、本格的かつ豪華なコンサートだ。今回の指揮者は円光寺雅彦氏だった。
最近は未就学児も入場できるクラシックコンサートが徐々に増え始めているが、これだけの規模・内容が体験できるコンサートはほかになかなか例がない。さらに、クリエイティブキッズコンサートでは、毎回子どもたちが楽器を体験・演奏できるコーナーや、プレミアムシートに座れる抽選会が実施されている。開場前から列ができるのも当然だろう。
開場時間の午後2時になると、サントリーホール正面玄関の上壁から、老人と少年の人形が現れて、パイプオルゴールが鳴る。37本のパイプは本物のパイプオルガンと同じ素材でできており、その調べに、並ぶことに飽きはじめていた子どもたちの視線が吸い込まれた。開場の演奏が終わると、スタッフの誘導で列が進み出していく。
受け付けを済ませて席を確保し、真っ先に向かったのが、子どもたちが楽器を演奏できる体験コーナー。開場から開演までの時間と、コンサート終了後の30分ほど、この体験コーナーで生楽器の体験ができる。会場はかなり広く、多くの楽器が用意されているが、筆者が足を運んだときには、すでに各楽器に行列ができていた。
息子が「弾いてみたい」と選んだのは、チェロのコーナー。両隣にはバイオリンとコントラバスのコーナーがあったが、彼は“自分の背丈で弾けそうな一番大きな弦楽器”に惹かれたようだ。
楽器の体験は、楽団の指導員が簡単な音の出し方を教えてくれて、子どもが実際に演奏してみる。子ども向け音楽イベントなどでよくある「ちょっと触って終わり」ではなく、きちんと音を出せる。その分、1人あたりの体験時間はやや長めであり、列の進みは遅い。開場から開演までの1時間弱で体験できる楽器は、1つか2つといったところだ。
自分の順番になってチェロの前に座った息子は、指導員の指示を受けながら、ぎこちなく指で弦を押さえて弓を引く。いつになく真剣な表情だ。もちろん、演奏と呼べる音が出るわけではないが、指導員と一緒に弾くことで“音の変化”を感じることができる。
体験を終えた息子は満足げな表情で、次の楽器としてハープを弾きたいと言ったが、すでに開演20分前。今から並んでも到底間に合わない。体験開場には楽器コーナー以外にも、最新のキッズケータイの展示・体験や、過去のクリエイティブキッズワークショップの作品展が併設されていた。息子と一緒にそれらを見てから、コンサートホールへと戻る。
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