競争激化の携帯業界、トップは新入社員に何を期待するのか――携帯/PHSキャリアの入社式

» 2008年04月01日 22時13分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 4月1日、携帯電話/PHSキャリアのトップが入社式で、会社の現状と新入社員への期待を話した。2008年度の新入社員はNTTドコモが236人、KDDIが222人、ソフトバンクとモバイル、テレコム、BBの通信3社が903人、ウィルコムが31人、イー・アクセスグループが91人となっている。

顧客の声から何かをつかんでほしい――NTTドコモ中村社長

Photo NTTドコモの中村維夫社長

 ドコモ社長の中村維夫氏は、相次ぐ新規キャリアやインターネット企業の参入で、携帯電話業界の競争が厳しくなっていると説明。また、スーパー3Gや4Gの導入、インターネットとの連携、海外での事業展開など、これから取り組むべきことが多いことにも触れ、「携帯電話の将来をどのように作っていくのかは、みなさんの双肩にかかっています」と激励した。

 新入社員に期待することとして挙げたのは“ユーザーの声から何かをつかんでくる”ことだ。ドコモショップやコールセンター、支店など、ユーザーに近い職場での業務を経験する中で、多くのユーザーの声を聞き、それをベースに「自分のことや、これからのことを考えていただきたい」と話した。

KDDIの存在意義は、真にNTTグループの対抗軸となること──KDDI小野寺会長

Photo KDDIの小野寺正会長

 KDDI社長兼会長の小野寺正氏が、新入社員に心に留めてほしいこととして最初に挙げたのは「KDDIの存在意義は、真にNTTグループの対抗軸となること」だ。NTTグループによる独占状態への回帰を許すことがあれば、それが日本の通信業界の発展を止めてしまうと語気を強めた。

 その例として挙げたのが、日本における光ファイバーのシェア争いだ。NTT東西のFTTHのシェアは70%を超えており、一方のKDDIはこの事業で多額の赤字を計上するなど厳しい状況にある。こうした苦境を打開し、2010年度の同社サービスエリア内におけるシェア30%の確保と、黒字化の達成を目標に、勝ち抜くことを使命としてがんばってほしいと訴えた。

 2点目として挙げたのは「顧客満足のあくなき追求」。“通信事業は設備産業ではなくサービス産業である”という方針のもと、ユーザーの声に耳を傾け、それを商品やサービスに生かすことが顧客満足度の向上につながるとした。

 携帯電話事業については2007年度の苦境を踏まえ、「2008年度は再度原点に立ち返り、商品やサービスが真に顧客本位であるかを総点検し、競合他社に対する強みと弱みを分析・把握した上でKDDIならではの“価値創造”に取り組む」と宣言した。

インターネットを通じて社会生活を豊かに──ソフトバンクモバイル孫社長

Photo ソフトバンクモバイルの孫正義社長

 「ソフトバンクにとって一番大切な事業の目的は、日本と世界の人々の生活をより豊かにすること」――。ソフトバンクモバイル社長の孫正義氏は、同社のビジョンをこんな言葉で表現する。同社が目指すのは、インターネットを通じて世界中のあらゆる情報を効率よく手にいれることができ、社会生活が豊かになる事業を行うことだと語った。

 競合との戦いについては「通信の世界に革命を起こすことによって、人々のコミュニケーションをより良くするという同じ志を持った、同志としての戦いである」といい、やる以上はそれぞれが完全燃焼してほしいと呼びかけた。

実行する、そして成功するまで全うする──ウィルコム喜久川社長

Photo ウィルコムの喜久川政樹社長

 ウィルコム社長の喜久川政樹氏は、次世代PHSの免許取得後初の新入社員を前に「新しい通信規格の立ち上げに携わることができるのは、10年、20年に1度という非常に貴重な体験です」と話し、新しい力が加わることで、より多くのことが実現可能になることを期待するとした。

 新入社員に期待することは「“実行する。そして成功まで全うする”ことを肝に銘じてほしい」「次世代PHSの実現に向け、我々とともに大きな気概をもって取り組んでもらいたい」「次世代PHS免許取得の際に高く評価された“ウィルコムならではの強み”を生かしていく」という3点だ。

 そのためには、自ら率先して主体的に学ぶことと、納得がいくまで粘り強く突き詰める姿勢が大事であるとし、これまでの常識にとらわれることなく「全社一丸となってPHSの可能性を証明していきましょう」と檄を飛ばした。

革新的なビジネスモデルに則ったベンチャーは必ず成功する――イー・モバイル千本会長

Photo イー・モバイルの千本倖生会長

 イー・モバイル会長の千本倖生氏は、3月28日の音声サービス開始で“名実ともにモバイル総合サービスを確立した”タイミングで入社したことについて「(イー・アクセスグループへの)入社を決めたことも、この時期に入社したことも、本当に良い選択をしたと思う。10年後、20年後には、いい選択をしたとみなさんが思うことであろう」と明言。そしてイー・モバイルは“4番目の携帯電話会社”ではなく、データ通信を中心とした「ブロードバンド携帯を打ち出した世界初の会社」だと胸を張った。

 そしてイー・アクセスグループが、既成概念にとらわれないビジネスモデルを打ち出して成功してきたことに触れ、「新しい・革新的なビジネスモデルに則ったベンチャーは必ず成功する」と宣言。厳しい競争の中で勝ち抜くには、他通信キャリアのスタッフよりもさらに働く必要があり、現場に近いところで声を集めサービスに反映させることが大事だとした。

 「チャレンジングでアグレッシブで、ベンチャーでリスクを取って、しかもチームで動ける方になってもらいたい。当社の強みを引き継いでいける人材に育ってほしい」(千本氏)

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