かなり優れた“Bluetoothモデム”だ──イー・モバイルの「H11T」をデータ通信端末として使いこなすBluetooth+MacでもOK(4/4 ページ)

» 2008年04月07日 20時05分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

Bluetoothモデムとしての機能、使い勝手

photo 下りで500kbps超えを記録。Bluetoothはかなり便利だと思うと同時に、Advanced/W-ZERO3[es]にBluetoothが内蔵されない点が悔やまれる

 H11TはBluetoothも備え、ワイヤレスモデムとしても利用できる。モデム(DUP)機能の利用もUSB接続時と機能的な違いはなく、基本的には同じと思ってよい。

 これは、メールやワンセグ、音楽再生時の同時利用制限も同じだ。ただ、ほかのBluetooth機器(ハンズフリー機器など)が接続中である場合はインターネット接続が行えない点に注意したい。移動中は常時Bluetoothヘッドセットを利用するようなユーザーだと不便を感じそうだ。

 Bluetooth接続用ドライバは、Bluetoothモデムのクライアント機能を持つ機器ならたいていは備えているはずだ。なお、Bluetoothアダプタを接続した「Advanced/W-ZERO3[es]」からBluetooth経由でイー・モバイル通信によるインターネット接続が行え、CorePlayerを利用し、YouTube動画も再生できた。相互にエリアと通信速度を補完できるという意味で、このような組み合わせによる使い方もなかなか魅力的であろう。


photo ペアリングしたBlluetooth機器は個別に信頼関係のオン/オフが可能。オンにしたBluetooth機器からの接続は確認操作なしに行える

 Bluetoothモデムとして利用する場合、ペアリングするとともに信頼関係を有効にしておけば、H11Tには触れずにそのままBluetoothモデムとして利用できる。H11Tはカバンやポケットに入れたまま、Bluetooth対応のPCやPDA、スマートフォンなどからインターネット接続というような使い方ができる。

 さて、ワイヤレスのBluetooth接続において気になるのは、USB接続との通信速度の差だ。H11TのBluetoothはv1.2で、非対称通信時の通信速度は最大約720kbps。インターネット接続時の通信速度もこれが事実上の上限になる。USB接続時の計測と同じ電波状態のよい場所で計測した結果は以下の通り。なお、この場所は公衆無線LANスポットでもあり、確実に無線LANの干渉がある点には留意したい。

USBとBluetooth接続の速度差USB接続Bluetooth接続Bluetooth接続
+別途A2DP並行利用
1回目2回目3回目1回目2回目3回目1回目2回目3回目
下り速度1.827Mbps1.720Mbps2.011Mbps0.582Mbps0.577Mbps0.582Mbps0.546Mbps0.553Mbps0.544Mbps
平均1.853Mbps0.580Mbps0.547Mbps
上り速度0.360Mbps0.366Mbps0.362Mbps0.365Mbps0.367Mbps0.364Mbps0.362Mbps0.366Mbps0.366Mbps
平均0.363Mbps0.365Mbps0.365Mbps

 やはり大幅に速度が制限され、下り速度はおおむね580kbpsほどに留まった。ただ、上り速度はほぼHSDPAの理論値であり、Bluetooth接続による影響はほとんどなかった。また、別途並行してA2DPによるワイヤレス音楽再生(P905i+ソニー「DR-BT21G」)を行うと30kbpsほど下り速度が落ちたが、致命的になるほど大きな影響はないようだ。

 ちなみにこの場所は、USB接続すると下り2Mbpsほどは出る。USB接続とBluetooth接続の速度を比較すると確かに結果はかなり違う。500kbpsほどでもWebアクセスやメール送受信などの一般的なインターネット利用において大きなストレスを感じないとは思うが、速度を望む時はUSB接続と切り替えながら使うとよいだろう。なお、上り通信においてはオンラインストレージ(ジャストシステム「Internet Disk」)に10Mバイトのファイルをアップロードするテストも行ったが、「EM・ONE」で指摘されているような“パケ詰まり現象”を起こすことはなかった。また、Bluetoothが要因と思われる強制切断もこの計測時には1度もなかったことも付け加えておく。

 ではBluetooth接続時、バッテリーはどのくらい持つだろうか。自動リロード機能を備えるPCのブラウザを利用し、ITmedia内の5つのページを30秒おきにリロードさせて通信時のバッテリーの持ち時間を計った。

 結果は2時間17分で電源がオフになった。このテストはほぼ常にパケットが送受信されるような状況なので、一般的なWebアクセスやメール送受信を行う使用シーンの場合はもう少し長くなるとも思われる。

 この結果についての評価は難しい。おそらくモバイルユーザーが使うノートPCのバッテリーライフより短いと思われる時間だからだ。ただ、H11Tに関してはFOMAやソフトバンク3G端末向けのさまざまな充電グッズも同じように流用できるので、致命的ではないともいえるだろうか。移動中に短時間ずつ何回かインターネット接続に利用するといった使い方であれば十分といえ、長時間のインターネット接続が前提なら、充電対応のUSBケーブル接続でPCで充電しながら利用することもできる。


photo  

 今回はPCやスマートフォンなどからのインターネット接続用モデムとしての使い勝手を検証した。

 イー・モバイルのデータ通信専用端末──今回は手持ちのD01NXと比較としたが、通信速度が若干劣る点を除けば使い勝手に大きな不満はなかった。付属のUSBケーブルがPC接続時に充電できる点も付属品として親切だ。細かく言うならばパケット使用量をH11T自身や付属ユーティリティソフトで管理できない点は不満だが、これはほかのソフトを利用することでカバーする事も可能であり、パケット通信の上限額もそれほど高額にはならないので大きく気にするまでもないといえばそうなのだが。なお蛇足だが、試しにテストPCにインストールしてあるauの「パケットカウンター」を使ってみたが、問題なく動作した。

 もう1つ、H11Tは“Bluetoothモデム”として考えると非常に魅力的だ。

 受信速度が制限されるデメリットはあるが、実利用時においては利便性が圧倒的に勝る。できれば10時間くらいBluetoothモデムとして動作してくれるとうれしいのだが、H11Tはそもそも音声端末なのでそれは酷な要求か。幸い、音声端末の外部充電環境はある程度整っているといえるので、バッテリー動作時間もさほど利用の障害にはならないだろう。

 とにかく昨今のインターネット利用に必要な実用的な通信速度を備え、なかなかリーズナブルな販売価格、および定額料金で利用できる「Bluetoothモデム」が国内でも利用可能になったというだけでも、H11Tに大いに価値を感じる人は少なくないのではないだろうか。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年