──ドコモが生まれ変わるとなれば、一般ユーザーが率直に期待するのは“料金値下げ”や、他社との“価格競争”だと思います。この点について、どのようなスタンスで臨みますか。
荒木 料金については大きく2つの考え方があります。1つは「ドコモ独自の料金体系を模索していく」ということ。そして、もう1つが「他社の値下げに対抗していく」というものです。
──独自の料金というと、具体的にはどのようなものですか。
荒木 例えば、“長く使っていただいた方がお得になる”という部分ですね。ここはドコモの料金体系がリードする分野にしたいと考えています。今回の発表ではポイントやバッテリー交換といった特典を用意しましたが、そういった施策です。
また、他社との価格競争でドコモのお得感をどう創出するかという点では、単なる値下げをするのではなく、バリュー(価値)を上乗せする形で提供していきたいと考えています。
──同一価格帯ならば、バリューがあるのはドコモである、ということですね。
荒木 そうです。携帯電話の料金は「安ければ安いほどよい」というお客さまもいらっしゃいますので、そういった方々に対してもバリューの大きさで価格に対する納得感を持っていただけるようにしていきたいと思っています。
──災害時の対策がしっかりしている、災害後の復旧が早いといった部分も、普段は見えにくいですけれどドコモのバリューですね。震災などのあとに、その地域のドコモのシェアが急拡大するというのは過去に何度も例があります。
荒木 ええ、非常時の対応や復旧に命をかけている人間がドコモには多くいますから。インフラをしっかりと作り、しっかりと守る部分なども含めて、ドコモのバリューとして訴求していかなければならないでしょう。
──一方で、価格競争をしていくと「料金体系が分かりにくい」という問題も生じます。先日も各種通信サービスの中で携帯電話料金に対する苦情が最多になったという総務省の報告がでましたが、新たなドコモブランドが目指す“親しみやすさ”として、料金も分かりやすくなるのでしょうか。
荒木 今の料金体系に条件や注意書きが多く、分かりにくいという認識は持っています。ですから、新たなドコモの取り組みの1つとして、料金のシンプル化は目指していきます。料金体系の改革は、今後の重要な課題の1つであると認識しています。
──新たなブランド戦略では、ユーザーとのタッチポイントが重視されており、中でも対面窓口であるドコモショップの位置づけが重要視されています。しかし、その一方で、現在のインセンティブ制度は「市場拡大期」のものであり、契約獲得数や端末販売数が販売店のビジネスの指標になっています。誤解を恐れずに言えば、“時間をかけてお客さまにケータイの操作を教えても、販売店の収益にほとんど結びつかない”状況です。ここが変化しないと、新ドコモ宣言が目指すべき姿にならないと思うのですが。
荒木 おっしゃるとおりです。ですから、インセンティブモデルや販売店との関係は見直さなければならなりません。
2007年から導入した新販売モデルによって、ドコモショップと量販店で果たすべき役割や(ユーザーの)利用傾向が分離し始めています。今後、ドコモショップはお客さまとのコンタクトポイントとして、ドコモとお客さまのきずなを深める活動をしていただけることに対してインセンティブがつくような形に変わっていかなければならないでしょう。
──販売店とのビジネス関係も変わってくる、ということですか。
荒木 変わっていかなければならないと思います。しかし、それには時間がかかります。地域ごとに違いもありますし、体制の変更も必要になるでしょう。いずれはインセンティブ制度も、(ドコモの)ブランド向上への貢献度も含めるような形で変えていかなければならなくなります。ただし、インセンティブ制度の改革では、ショップの評価方式も変えなければいけないので、今まさに検討している段階です。ここはさらに時間がかかります。
──今後は市場の飽和により純増ペースが鈍るというのが、今回のブランド戦略刷新の前提にあります。であるならば、販売チャネルの統廃合を促して販売コストそのものを圧縮するという選択肢がドコモにはあると思いますが、この点はどうお考えですか。
荒木 販売代理店の整理統合については、私どもが関与する領域ではありません。しかし私どもとしては、ドコモが目指す新たな方向性にできるだけ多くの販売店に共感・賛同していただき、パートナーシップを築ければと考えています。
──新たなブランド戦略を発表し、ドコモは変わっていこうとしているわけですが、これから始まる変化において課題と感じている部分はどういったところでしょうか。
荒木 大きな課題は、社員の意識や行動を変えることですね。意識改革への取り組みは2008年1月から行っていますが、そこでもコンセンサス作りの大変さを感じました。ドコモの社員全員が、前を向いて意識を変えられるか。ここが(新生ドコモの)勝負だと思っています。
──最後にユーザーへのメッセージをいただけますか。
荒木 お客さまにドコモが変わったという実感をどれだけ持っていただけるか。そう感じていただけるものを今年いくつ出せるかに、ブランド刷新の成否がかかっていると考えています。
「ドコモが次に何をするのか」を期待しつつ、楽しみにしていただきたいですね。新しいドコモの取り組みは、これから始まっていきます。
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