FeliCaはどうやって作られるのか――豊里事業所・工場見学記(1/3 ページ)

» 2008年04月23日 16時30分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 Suica/PASMOやEdy、nanacoなど、交通乗車券や電子マネーの分野を軸に急速な広がりを見せる非接触ICカード。これを支えているのが、ソニーが開発した非接触IC「FeliCa(フェリカ)」だ。同技術は日本はもちろん、香港やシンガポールなどアジア各国でも採用されており、ハワイを手始めに北米への上陸も始まっている。今年3月には、FeliCaチップの累計出荷数が3億個を突破し、日本を代表する非接触ICのインフラ技術になった。

 私たちの暮らしを支えるまでに成長したFeliCaカードは、どこで、どのように作られているのか。

 今日の時事日想は特別編として、ソニーのFeliCaカード生産拠点であるソニーケミカル&インフォメーションデバイス豊里事業所(宮城県)から、FeliCカード製造工場のようすをレポートしたい。

豊里事業所の入り口にある大きな「FeliCa」の看板。ここで生産される各種FeliCaカードは、同工場のまさに“看板商品”である

 →FeliCa/モバイルFeliCaの歴史を振り返る:前編後編

 →ソニーにとってのFeliCaビジネス:前編後編

磁気カード製品からFeliCaカードへ――豊里事業所の歴史

 ソニーケミカル&インフォメーションデバイス豊里事業所は、1973年に設立されたビデオテックが源流になっている。その後、同社は1977年にミヤギビデオテック、1990年にソニー豊里と社名変更し、2000年にソニー宮城に合流。2006年7月にソニーケミカルとソニー宮城が合併したことで、ソニーケミカル&インフォメーションデバイスの事業所になった。

ソニーケミカル&インフォメーションデバイス豊里事業所。今年で35周年となる歴史のある工場は、宮城県沖地震など震度6以上の震災を経験している。被災時の経験を生かした災害対策が行われているという
豊里事業所の敷地面積は2万5000平方メートル弱。敷地内には3つの工場があり、FeliCaカードは第3工場で生産されている(Google Mapsより引用)

 豊里事業所の歴史的な主力製品は、磁気テープ関連製品やプリントメディアである。ビデオテック設立時にコンパクトカセットの生産を開始し、その後、ベータマックスやベータカムカセット、マイクロカセット、8ミリビデオ、デジタルベータカムカセットなどの生産を手がけてきた。1995年には当時ブームだった「プリクラ」のメディアも生産開始しており、多くの人が豊里事業所で作られた製品にお世話になったはずである。なお、磁気テープ関連事業は今も健在であり、特に放送業界向けのデジタルベータカムカセットでは高いシェアを誇る。

 現在、日本や香港、シンガポールなどに流通しているFeliCaカードのほとんどは、豊里事業所で作られたものだ。FeliCaカードの生産は2000年に開始。FeliCaカード自体はそれ以前から使われていたが、SuicaやEdyを始めとする大規模需要期に向けた大量生産体制を整えたのが豊里事業所である。現在は3つある工場のうち第3工場をFeliCaカード製造に割り当てており、最新の製造ラインを導入している。生産能力は社外秘だが、24時間365日のフル稼働体制で急増する需要に応えているという。

ソニーケミカル&インフォメーションデバイス豊里事業所は、仙台市から約30キロメートル離れたところにある(Google Mapsより引用)

FeliCaカードは海外でも利用されている。写真はタイのもの(左)。もともと豊里事業所は磁気テープやMOなどの生産が中心だった。現在も業務用・民生用の各種磁気テープを多数生産している(右)

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年