ホントにやるの? といわれた──「フォンブレイバー 815T PB」はどうやって生まれたか企画者に聞く「フォンブレイバー 815T PB」(1/3 ページ)

» 2008年04月23日 23時23分 公開
[三浦一紀,ITmedia]
Photo 「ケータイ捜査官7」のキャラクター、フォンブレイバーセブン。ソフトバンクモバイルの製品名は「フォンブレイバー 815T PB」。ボディカラーはX07(ゼロナナ)シルバー
(C)WiZ・Production I.G・バディ携帯プロジェクトLLP/テレビ東京

 テレビ東京系で毎週水曜夜7時から放送されている特撮テレビドラマ「ケータイ捜査官7」は、テレビ東京が長らくアニメを放送していた、子どもをメインターゲットとする時間帯に、約20年ぶりに実写の連続ドラマを放送するという新しい取り組みから生まれた番組だ。もちろんメインターゲットは“子ども”になるのだが、大人も十分に楽しめる緻密に計算されたリアリティも盛り込まれた点が非常に興味深い。放送期間は1年間、51回を予定しており、1クールで終わる“普通の”ドラマとは一線を画している。

 その制作に携わるのは、「たまごっち」や「デジタルモンスター」「プリモプエル」といったエンターテインメントを生み出したウィズと、「攻殻機動隊」などを手がけるProduction I.G。そして「妖怪大戦争」「ゼブラーマン」などの監督で、実写版の「ヤッターマン」の監督も務める三池崇史氏がシリーズ監督。そのほか、各回の監督には押井守氏や「デスノート」の金子修介氏、「ポケットモンスター」の湯山邦彦氏など、そうそうたる顔ぶれが名を連ねる。

 このドラマの中で重要な役割を果たすのが、主人公の相棒として登場し、ロボットに変形するバディケータイ「フォンブレイバー」である。

 ドラマの制作発表会で披露されたこの端末は、そのユニークな発想と、変形するケータイが実際にソフトバンクモバイルから発売されるということで大きな注目を集めた。しかも製品版のフォンブレイバー 815T PBは、人工知能型の待受アプリ「バディトーク」を搭載し、ケータイが持ち主に日々話しかけることでさまざまな学習をするほか、放送中のテレビドラマと連動するコンテンツなども備えるという。

PhotoPhoto フォンブレイバー 815T PBは、「フォンブレイバーセブン」ことX07(ゼロナナ)シルバー(左)と、「フォンブレイバーゼロワン」ことX01(ゼロイチ)ブラックの2色展開

 おそらく世界で初の試みを実現した、ソフトバンクモバイルのフォンブレイバー 815T PB企画スタッフ、マーケティング本部 プロダクト・マーケティング部 プロダクト戦略課課長 由本昌也氏、マーケティング本部 プロダクト・マーケティング部 プロダクト企画2課の吉田真佑氏、マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション統括部 宣伝部コミュニケーション企画&ブランド課課長 宮園香代子氏、マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション統括部 宣伝部の大下憲一氏に話を聞いた。

PhotoPhotoPhotoPhoto 左からマーケティング本部 プロダクト・マーケティング部 プロダクト企画2課の吉田真佑氏、マーケティング本部 プロダクト・マーケティング部 プロダクト戦略課課長 由本昌也氏、マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション統括部 宣伝部の大下憲一氏、マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション統括部 宣伝部コミュニケーション企画&ブランド課課長 宮園香代子氏

「ホントにやるの?」──当初は社内会議で失笑も

ITmedia 「ケータイ捜査官7」は、バディ携帯プロジェクト有限責任事業組合(バディ携帯プロジェクトLLP)という組織が中心となって制作しているわけですが、まずはここにソフトバンクモバイルが参加することになったいきさつを教えてください。

由本昌也氏(以下敬称略) もともとは、ウィズの横井(昭裕)社長が、携帯電話とおもちゃを融合したものを作りたいという話を社長の孫に持ちかけてくださったのが始まりです。「今、子どもが一番気になっているものとして携帯電話がある。その携帯電話を、子どもの目線から開発した商品を企画したい」ということでした。最初にそのお話をいただいたのは2年以上前になりますね。

ITmedia 携帯電話がメインで登場するテレビドラマを製作して、なおかつそこに登場する携帯電話を作る。これをやろうという話が持ち上がったときはどう思われましたか?

由本 最初は、そんなのあり得ない、と思いましたね(笑)。それでもやろうと思ったのは、LLPにウィズさんやProduction I.Gさんなど、超一流の会社が参加していたからです。やはりそこを信用するしかなかったですね。三池監督もそうですし、Production I.Gの石川社長、ウィズの横井社長などのお話からものすごい熱意を感じまして、だんだん“これはいける”と思えてきました。制作陣の布陣はものすごいですよね。

大下憲一氏(以下敬称略) 一番最初の企画の段階では、実写のドラマではなく、アニメでやる予定だったんですよ。

由本 そうでした。かなり話が具体化するまでは、周囲に「ホントにやるの?」と言われていました。

吉田真佑氏(以下敬称略) 当時は社内の会議で報告するたびに失笑がもれていました(笑)

ITmedia みなさんは今回のプロジェクトでどのような役割を果たしたのでしょうか?

由本 私は初期の段階から企画に参加して、全体を統括しました。

宮園香代子氏(以下敬称略) 今回、テレビドラマと連動した携帯電話を発売することになったので、宣伝側と開発側で綿密なコミュニケーションが必要でした。その宣伝の窓口が私の役割ですね。

大下 私は、実際にテレビのどの時間帯で放送するのか、どういう風にプロモーションするのかなど、LLPができてからの細かい実務作業に関与しました。開発と宣伝の間の潤滑油のような感じです。いろいろな調整をするのが僕の役割です。

吉田 私は開発周りの責任者という形になります。この815T PBの開発には、東芝さんやウィズさんを始め、さまざまな会社が関わっていますが、それらすべての品質管理ですとか、製品全体の世界観の統一といったところを担当しました。

fanfun. 815Tがベースモデルに選ばれた理由は“形”

ITmedia ベースモデルは「fanfun. 815T」ですよね。815Tを選んだのにはどんな理由があったのでしょうか。

由本 一番の理由は、物理的な要件を815Tが満たしていたということです。フォンブレイバーがケータイからロボットに変形するためのパーツ(フォンブレイバーパーツ)は背面に取り付ける仕組みになっているのですが、815Tは底面のほぼ全体が取り外しできるカバーになっていて、パーツの取り付けに非常に都合がよかったわけです。また、815Tのデザインが、キー配列を含めて近未来的なもので、非常にしっくりきたというのもポイントです。決してfanfun.だからというわけではないんですよ。

PhotoPhoto 815Tがベースモデルに選ばれた理由は、この底面のカバーにあった。手足を折りたたんだ状態を裏から見るとこうなっている
PhotoPhoto 横から見るとこうなっている。厚さはfanfun. 815Tの約2倍になるが、底面積は変わらない。残念ながら815Tの裏側とフォンブレイバーパーツの裏側の撮影は許可されなかった。興味のある人は是非製品を購入して確認してほしい

ITmedia では、「キャラケー」の一環として生まれたもの、というわけではないんですね。

由本 そうです。企画の初期から、キャラケーとして展開しているラインとはまったく別のものです。

ITmedia 最も重要だったのは、どうやってケータイに手足を付けるのか、という点だったわけですね。それに一番ぴったりなのが815Tだったと。

大下 機種に関しては、本当にたまたま合致したんです。

由本 シャープの端末も含めて、当初はいろいろな可能性を模索したのですが、今考えると815Tという選択は大正解でした。これ以外では考えられないですね。

 デザインは、もっとかっこよくすることはいくらでもできました。しかし、かっこよくすると逆に近未来っぽくないというか、現実離れしてしまいます。今ある携帯電話が変形するとしたらこうなるだろう、というのを完全に分かりやすく、ある程度リアルに表現したのが、今のデザインです。

宮園 最初は違和感があったんですけれど、だんだんこの形がかわいらしく見えてきますよ。デザイナーの方もうまくまとめたなと思います。

ITmedia 東芝さんは、815T PBの開発にはどのような形で関与しているんですか?

由本 ウィズさんと東芝さんとソフトバンクモバイルの3社は、週1回以上のペースで会議をしていますね。今もそうです。

吉田 端末のデザイン自体はウィズさんですが、東芝さんにはウィズさんのデザインをもとに、出荷する際の箱のデザインなどを助けていただいています。815T PBも、“シャア専用ケータイ”として発売した「913SH G TYPE-CHAR」のような特別仕様の箱になっているので、この周りの部分などですね。あとは変形に関する取扱説明書とかも別途用意して入れなくてはいけないので、そのあたりでご協力いただきました。アプリのプリセットなどでもお手伝いいただいています。

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