手のひらで電脳航法!──X02HTと「PathAway for GPS 4」で海を渡る勝手に連載!「海で使うIT」(1/2 ページ)

» 2008年04月30日 12時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

苦しいときほど、手元で位置を把握したい

 この一連の「勝手に連載!」で、PCを使った電脳航法を紹介してきたが、TOUGHBOOKのような防水ノートPCならいざ知らず、通常のノートPCはキャビンに設置せざるを得ない。設置場所や操作デバイスを工夫すれば、コックピットからでもPCに表示された航法情報を参照できるが、「狭視界の強風下で入港アプローチ」という切羽詰った状況では、手元で自船の周囲を把握しておきたい。

 と思って、VAIO type U(UXモデル)が登場したときに、「手元で電脳航法」を実現するべく鳴門海峡から潮岬、そして御前崎から伊豆半島を目指す航海で実験を行い、その利便性を大いに享受した。しかし、本体から発生する熱のために密閉した防水パックに長時間収納するのが困難であったのと、長距離航海を共にするにはバッテリー駆動時間が短いことなどなど、改善を望みたい点も少なからずあった。

 「手元で電脳航法」を実現しているデバイスに、Garminをはじめとするメーカーからリリースされている地図表示機能を持ったハンディGPSがある。サードパーティが独自にカスタマイズして日本近海の電子海図を表示できるようにしたパッケージも販売されているが、こちらは価格が10万円超と高い。

 そういう高額商品に手が出せない筆者の手元にソフトバンクモバイルの携帯電話「X02HT」がある。OSにWindows Mobile 6.0 standard(WM 6.0 std)を導入しているので、その上で動くGPSアプリケーションをインストールすれば、携帯電話がGPSプロッターとして動いてくれる。

今回は、WM 6.0 stdデバイスでもあるソフトバンクモバイルのX02HTにPathAway GPS 4をインストールして“手のひら電脳航法システム”を構築した。左は長年筆者と連れ添ってきたハンディGPSのGarmin eTrex
X02HTと接続するGPSユニットはソニーのBluetooth GPSレシーバーの「VGP-BGU1」を利用した。Bluetoothのありがたいところは、GPS本体をキャビンの中に設置しても問題なく、かつ、航法デバイスと接続ケーブルで悩まなくて済むところだ。なお、キャビンの中でもGPS信号は滞りなく受信できた

WM 6.0 stdのストレート端末「X02HT」を航海機器に使う

 GPSと連携したWM版アプリケーションは多数存在する。モバイル版のGoogle MapにGPSで取得した位置情報を表示する機能などは有名なところだし、GPSロガーとしてTrackデータを保存して、それをGoogle Earthに転用できるデータフォーマットに変換するソフトなどを利用して楽しんでいるユーザーも多い。

 オンラインマップが全盛の昨今であるが、WMデバイスにローカルマップを持たせてGPSプロッターとして使えるようにするソフトも少なくない。航海用としてリリースされているソフトも何種類かあるが、こちらは、筆者が利用しているX02HTにはインストールできなかった。

 タッピングに対応しないWM 6.0 stdデバイスにインストールできた数少ないソフトが今回紹介する「PathAway GPS 4」だ。Muskoka Techが開発したこのGPSナビゲーションソフトは、WM版とPlam版がリリースされていて、PathAway GPSの専用Webページから15日間有効の体験版がダウンロードできる(体験版ではGPSトラッキングが1回の起動に対して10分までという制限がある。いったんPathAway GPS 4を終了して再起動すれば再び10分間のGPSトラッキングが行える)。

 PathAway GPS 4は、電脳航法ソフト「Fugawi Marine ENC 4.5」とセットになったパッケージがソフト開発メーカーのFugawiから販売されており、Fugawi Marine ENC 4.5側で作成したルートデータやウェイポイント、Fugawi Marine ENC 4.5で利用している電子海図のENCをWMデバイスにインストールしたPathAway GPS 4で使えるようにコンバートして転送する機能も持っているが、ParhAway GPSそのものは、登場してから長らくユーザーに利用されてバージョンアップも重ねている汎用のGPSナビゲーションソフトだ(Fugawi Marine ENC 4.5とPathAway GPS 4を連動させた使い勝手を試したいときはFugawiのWebページで用意されているFugawi Marine ENC 4.5とParhAway GPS 4がセットになった体験版を利用できる。ただし、Fugawi Marine ENC 4.5を日本近海で利用するときは、別途“同社”が用意するENCを購入しなければならない)。

まずは、電子海図からPathAway GPS 4のマップを作成

 PathAway GPS 4のインストールイメージは1つのexeファイルで、WMデバイスをPCと接続した状態でこれを実行すると、PathAway GPS 4をWMデバイスにインストールすると同時に、PC側で使うユーティリティもインストールする。この「PathAway MapManager」を使って、PCに保存されているイメージファイルからPathAway GPS 4で使うマップデータを作成してWMデバイスに転送する。

 PathAway MapManagerで扱えるインポートファイルは、BMPやJPEG、GIFなど汎用のイメージファイルなので、紙海図や港湾案内などをスキャンして使える一方で、電子海図のENC、もしくは C-MAPなどはそのまま使えず、別途ユーザーが用意した海図ビューアで表示した状態をキャプチャーして画像ファイルとして保存してからPathAway MapManagerで変換する手間が必要になる(Fugawi Marine ENC 4.5を使うとその手間が省けることになる)。

 画像ファイルをPathAway GPS 4で使えるようにするには、画像ファイルに緯度経度情報を組み込まなければならない。この種の汎用GPSナビソフトでよくあるように、PathAway GPS 4のMapManagerでも画像ファイル上の任意の箇所の座標とその場所の緯度経度を指定する。座標の指定方法も「左上端と右下端の緯度経度を指定」「画像中央の緯度経度と地図の縮尺を指定」「複数の任意点の緯度経度を指定」と複数用意されているが、海図を利用するときは、緯度経度が確定している灯台を3箇所ほど指定するのが確実だろう。

PathAway GPS 4のインストールファイルを起動すると3種類のインストールが促される。これはすべてチェックを入れておこう。ただし、ダウンロードサイトから別途用意されているCABファイルを入手しているなら、「PathAway GPS4」のチェックをせず、CABファイルをWMデバイスにコピーして実行すればいい
事前にキャプチャーして用意した海図イメージ(ここでは、航法ソフト「Software On Board」で表示したC-MAPを利用した)にPathAway MapManagerで緯度経度情報を設定してPathAway GPS 4で使えるデータに変換する

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