スタートから4年――海外展開も視野に、新たなステージに入るおサイフケータイ神尾寿の時事日想・特別編(1/2 ページ)

» 2008年05月09日 12時46分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 「iモード登場以来の大きな進化」

 その宣言とともに、おサイフケータイが登場(参照記事)してから4年の月日が経過した。ケータイを通じて、“ネットとリアルを繋いでいく”。このコンセプトは、リアル側のインフラ整備に時間がかかることやユーザーの利用促進という課題にぶつかりながらも、ゆっくりと、だが着実に進展してきたと言える。基幹技術である「FeliCa」が、交通や電子マネーで急速に普及したこともあり、“おサイフケータイが使える場所”は、ふと気がつけば日常の至る所にある。

iモードFeliCa端末、通称「おサイフケータイ」は、2004年6月16日に発表された。当初、iモードFeliCa端末は“iCシリーズ”と呼ばれており、このとき発表されたのは「SO506iC」「P506iC」「SH506iC」「F900iC」の4機種。プレゼンテーションを行ったのはドコモの退職が決まっている夏野剛氏(参照記事)
2007年3月にPASMOがスタート、Suicaとの相互利用が可能になった。わずか1年数カ月で、首都圏では券売機に並ぶ人の数が激減した

 むろん、いまだ完全に乗り越えられない壁もある。

 FeliCaインフラの普及に比して、おサイフケータイの“上手な活用”ができているリアルビジネスは少ない。また、利用者の裾野の拡大も、まだ道半ばである。今や「ケータイ+非接触IC」の組み合わせは世界的なトレンドになりつつあるが、その草分けであるおサイフケータイでも、潜在的な可能性のすべてを引き出しきれていないのが実情だ。

 おサイフケータイは今後どのような未来を切り開いていくのか。また、携帯電話業界のグローバル化が急速に進む中で、どのような位置づけになるのか。

 そこで今日の時事日想は特別編として、おサイフケータイ分野を牽引するNTTドコモにインタビュー。プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部EC戦略担当部長の野村晴彦氏に話を聞く。

NTTドコモプロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部EC戦略担当部長の野村晴彦氏

利用環境整備だけでは稼働率が上がらない――ドコモの読み違い

 おサイフケータイの稼働台数は、3キャリアの総合で約4700万台(2月末時点)、ドコモだけでも約2850万台を数える。日本の携帯電話契約数の合計が約1億300万台なので、携帯電話型の端末で見れば、“ほぼ半数がおサイフケータイ”という状況だ。日本のケータイにとって、おサイフケータイは標準機能になったといってもいいだろう。

 さらにこの1年で見れば、おサイフケータイを使う場所が増え、加盟店インフラの整備が急速に進展してきたと、野村氏は話す。

 「昨年の段階で、ほぼすべてのコンビニエンスストア、家電量販店やスーパーなどのリーダー/ライター導入が進み、今は(端末環境と対になる)インフラが整った段階です。ユーザーに対するおサイフケータイの認知度も十分に向上しています」(野村氏)

 しかし、その一方で、おサイフケータイはその認知度の高さほど、ユーザーに使われているとは言い難い。ここに「我々の読み違いがあった」(野村氏)という。

 「(おサイフケータイを利用する)インフラが整えば、自然とユーザーの利用も増えるのではないかと考えていたのですが、これがうまくいきませんでした。我々の想定以上にプラスチックカードとの差別化ができず、またICアプリの導入・設定のハードルが高かった」(野村氏)

 これらの反省点を踏まえて、昨年からドコモでは「おサイフケータイを使うユーザーメリットの訴求」と「おサイフケータイ活用による加盟店メリットの拡大」に軸足を置いた取り組みに着手しているという。

 「例えば、端末という部分では、らくらくホンのような企画端末への展開やICアプリのプリインストール化の推進を行っています。また、加盟店向けとしてはCRM分野での活用をお奨めするとともに、カシオ計算機とともにCXDネクストを立ち上げて(参照記事)『レジスター』の分野からFeliCa対応をしやすくするなどの取り組みを行っています」(野村氏)

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