X03HTは、Windows Mobile 6.0 Standard Edition(WM 6.0 Std)端末なので、ディスプレイはタッチパネルにはなっていない。このあたりは、ストレートタイプのX02HTと同じだが、X01HTやX01T、そして 一連のW-ZERO3シリーズなど、同じスライドボディを持つデバイスと比べてX03HTは異色といえる。W-ZERO3ユーザーが思わずディスプレイをタッピングしたくなる気持ちもよく分かる。
ただ、ボディサイズがコンパクトで、両手でホールドした状態ならすべてのキーやボタンに無理なく親指が届くため、慣れてしまえば、タッチ操作を必要とする場面はほとんどない。かえって、スタイラスペンを“出したり入れたり持ち替えたり”という動作が不要になるので、取り扱いが簡単になるように思えた。タッチパネルの操作にはあまり縁がないケータイユーザーからすれば、キー操作だけでひと通りの作業ができるWM 6.0 Stdは、WM 6.0 Professional Editionより扱いやすいかもしれない。
ただ、WM 6.0 Stdの標準環境では、なにかと不満を感じることも多い。その典型的なケースとして、テキストのカット&ペースト、もしくは、コピー&ペーストができないことが挙げられる。このようなとき、数多くあるツールアプリを使って操作性を改善できるのが汎用OSを導入するデバイスの強みだ。オンラインソフトを利用することで、不満に思うところをある程度は補完できる。
例えば、X03HTに用意されたボタンにアプリケーションの起動やマクロ機能を割り当てる「StdLink」を使って、テキストの範囲指定、コピー、切り取り、ペーストを実行する「Easy Clip」を終話キーの長押し操作(Long_END.lnk)に割り当てると、文字入力中に終話キーを長押しすれば、Easy Clipが起動して、カットアンドペーストもコピーアンドペーストも可能になる。ちなみに、終話キーに割り当てることで、横持ちのQWERTYキー入力でも縦持ちのダイヤルキー入力でも、自然な指の動きでEasy Clipを呼び出せる。
同様に、右ソフトキーに任意のアプリケーションを割り当てられる「migiMenu」を使って、ランチャーツール「KTPocketLaunch2」をリンクさせれば、こちらも、テンキー入力でもQWERTYキー入力でも押しやすい右ソフトキーでKTpocketLaunch2を起動できる。カーソルキー操作で多数のアプリケーションやデータファイルを呼び出せるので、Windows Mobileのスタートメニューを使うより操作性は格段に向上する。
また、QWERTYキー入力なら、使いたいアプリケーションや開きたいファイルの名前を入力するとインクリメンタルサーチで対象ファイルが絞られてリストされていく「KTPocketLaunch」も便利だ(筆者のX02HTでは、KTPocketLaunch2より重宝している)。これを、StdLinkで発話キーに割り当てておけばすぐに起動できる。両手持ちの親指タイピングにおける“ホームポジション”から発話キーは離れているように見えるが、コンパクトなX03HTなら、左親指の行動圏内に十分入っているので問題ない(カメラボタンの短押しに割り当てるというのもいい)。
ソフト名 | 配布先サイト |
---|---|
StdLink | OFFISNAIL |
Easy Clip | KOTETU's Hatena |
migiMenu | 闇忍日記 |
KTPocketLaunch2 | KOTETU's Hatena |
KTPocketLaunch | KOTETU's Hatena |
……できることなら、これらのソフトが最初から導入されていればいいのだが。
(なお、この記事で紹介しているツール類は、実際にX03HTで動作することを確認していますが、筆者もITmediaもツール類の作者もその動作の保証をするものではありません。導入においてはユーザーの責任において使用してください)
このように、フリーのツールを組み合わせることでダイヤルキー操作でも使いやすい入力環境が構築できる。通常のケータイユーザーにとって、QWERTYキーしか持たないスマートフォンよりX03HTへの移行は容易にできるだろう。
皮肉なことに、Webページやメールの「閲覧」、音楽や動画の「再生」という操作に限っていえば、ダイヤルキーとカーソルキーで操作して縦長のディスプレイを利用していたほうが使いやすかったりする。筆者も評価作業中、最初はQWERTYキーをメインに使っていたのが、だんだんとダイヤルキー操作が増えていき、最終的に、ブラウジング利用ではダイヤルキーを、文字入力が求められるときにだけディスプレイをスライドさせてQWERTYキーを使うという使い方に落ち着いた。
以上、「入力環境」を中心にX03HTを紹介してみたが、従来の携帯電話とほぼ同等のコンパクトなボディにダイヤルキーとQWERTYキーを搭載することで、携帯電話の「気軽な操作感」とQWERTYキー搭載デバイスの「容易な文章入力環境」を両立させている。QWERTYキーを搭載した携帯電話として「インターネットマシン 922SH」が注目されているが、携帯電話に近い操作感の実現という視点では、X03HTの方が優れている部分もある。
携帯電話ユーザーからWindows Mobile端末を見ると、「動きがもっさり」「標準状態では使いにくい」「かといってカスタマイズは面倒」というマイナス面がどうしても強調されてしまうようだ。ただ、その一方でQWERTYキーボードに対する興味や、PCで利用しているメールアドレスや個人管理情報を携帯電話でも利用したいという要求もある。その解として登場したのが922SHであるが、「ユーザーによるカスタマイズ」という面で物足りなさを感じているユーザーの声も少なからずある。
「ソフトウェアを導入してユーザー自らがデバイスを使いやすくしていく」という、“スマートフォン”が持つ最も重要な側面を楽しめるデバイスの中では、携帯電話に一番近い使い勝手を提供してくれるのがX03HTだ。「自分で育てていく携帯電話」の面白さを、X03HTで多くの携帯電話ユーザーにぜひ知っていただきたい。
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