「ランニングコストを忘れている。基本料だけ安いのは見せかけ」──イー・モバイルの千本会長(1/2 ページ)

» 2008年06月11日 03時04分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

発表会の様子

 「iPhoneの独壇場の時代は終わった」「iPhoneなどのレベニューシェアモデルはオペレータにとってほとんど利益が出ない。共存しがたいビジネスモデル」「音声の時代はそろそろ終わる」「頭(基本料)だけ安い料金は所詮見せかけ」「日本の携帯、世界では孤立状態」──。イー・モバイルは6月10日、新機種2モデル「EMONSTER Lite」「H11HW」と新サービス「イー・モバイル国際電話」を発表。Appleの「iPhone 3G」が発表され、世間がiPhone 3Gに注目する中、おりしも同日に開催した記者発表会に登壇したイー・モバイルの千本倖生会長兼CEOから上記のような“節”が次々に飛び出した。

 イー・モバイルは13年ぶりの新規参入キャリアとして2007年3月に開業。2008年3月に始めた音声サービスも含め、開業から約1年2カ月で累計契約数は55万5400(2008年5月末時点)に達した。

 今回の新機種は「各社の大量の新機種や販売動向、今日発表されたiPhoneの動きも含めて、携帯のトレンドに大きく2つの流れが見えた。それをふまえた機種となる」(千本氏)という。


photo イー・モバイルの千本倖生会長兼CEO

初期費用+ランニングコストを安価に──でも、データARPUも稼ぐ計画

 HUAWEI製のH11HWは下り最大3.6MbpsのHSDPA通信に対応する、折りたたみスタイルの音声端末。QCIF+(176×220ピクセル)の2インチ液晶や200万画素カメラなど、スペックは携帯他社の新機種に劣る箇所もあるが、これはあえてだという。仕様をスタンダードなものにした分、非常に安価に設定できる。これが1つ目の「機能を絞ったシンプル携帯+極めて魅力的な料金」(イー・モバイル)だ。

photophoto デザインとベーシックな機能、価格を重視した「H11HW」。ブガッティ・ヴェイロンからデザインアイデアを得たという。2008年6月14日発売

 初期費用は5980円で、月々の追加割賦料金はなし(2年間の定期契約制度「新にねん」加入の場合。店頭キャンペーンで、より安価とする可能性もある)。月額料金は基本プラント「定額パック24」の加入で1980円。イー・モバイル加入者同士で24時間通話無料、固定宛て30秒5.25円、他社携帯宛て30秒9.45円、1000円分の無料データ通信といった料金体系で、月々のランニングコストも含めた「安価」をアピールするベーシックな端末に仕上げた。

 H11HWはBluetoothやUSB接続によりHSDPAデータ通信モデムとしても使用できる(データ通信中も通話やテレビ電話を同時に利用可能)。PCでデータ通信を行うと無料の1000円分はすぐ尽きてしまい(2万3825パケット分。日に数通ほどの一般的なメールのやりとり程度ならまかなえる範囲だという)、以降は0.042円/パケットの従量課金となるものの、それも4980円(定額パック24込みで月々5960円)が上限となる。

photophoto H11HWは新にねんの契約で初期費用5980円とする価格と、下り最大3.6MbpsのHSDPA通信とBluetooth、テレビ電話、メディアプレーヤーなどの機能を備える

 音声サービス対応の第1弾端末「H11T」は“ケータイ”としての基本スペックもそれなりだが、高速かつ定額(あるいは上限あり)のデータ通信用Bluetoothモデムとして使える端末でもあった。H11HWはさらに小型・軽量化を図り、機能を厳選した結果、かなり安価に販売する予定。これは、音声サービスでなく、ブロードバンドデータ通信サービスをメインとするイー・モバイルならではの端末展開といえ、他社携帯ではまかないにくいニーズにも対応できる可能性が広がる。データ通信端末が好調のイー・モバイルだが、音声サービスのメリットも含めると、データ通信のみを望むユーザーも「意外に汎用的に使えそう」と思うかもしれない。

 加えて、「日本の携帯戦争の1つの盲点は“ランニングコスト”だ。今までが高すぎた。これを変えないと日本の携帯料金は安くならない」と千本氏。ソフトバンクモバイルのホワイトプランや、いきなり月額基本料を半額にするドコモやKDDIの料金プランにより月額基本料が安価になった認識はあるものの、携帯を分割購入すると約2年間、毎月加算される割賦金や他社携帯宛ての通話料金、データ通信料金なども合計した月々のランニングコストは、実はどうなのか──「それほど変わっていないのではないか。イー・モバイルはこれを変えたい」という。H11HWは、安価に購入できる新にねんの適用で、2年間の継続利用条件が課せられるものの月額料金に加算される割賦金が必要ない販売方法で展開するのがポイントだ。

photophoto 中国や台湾、アメリカ、韓国などの世界57の国や地域への国際電話を可能にする「イー・モバイル国際電話」を7月1日に開始。H11HWはテレビ電話サービスにも対応。「業界最安値レベル」の通話料が特徴

 例えば、主要国への国際電話を割安で提供する「イー・モバイル国際電話」(7月1日開始)。アメリカや中国、韓国などの主要国向け通話料金を36円/分とする、国内通話料と同水準の価格で展開し、既存のイー・モバイル音声端末ユーザーも申し込み不要で利用できる(なお、7月1日から9月30日まで対応する57の国と地域への通話料を、一律18円/30秒とするキャンペーンを実施)。音声サービスの開始当初から展開する「定額パック24」とともに、自社同士は24時間無料、他社携帯へも9.45円/30秒と低価格に設定する点をアピールする。

 H11HWはテレビ電話にも対応。「テレビ電話、今まで使われていなかったのは料金が高かったから」(千本氏)。定額パック24加入の場合で18.9円/30秒と、他社のテレビ電話通話料より安価にする。

photo 満29歳以下のユーザーを対象にする割引キャンペーン「U-29 若者応援キャンペーン」

 そして、満29歳以下のユーザーを対象にする割引キャンペーン「U-29 若者応援キャンペーン」も実施。期間は2009年4月30日まで。こちらはデータARPUが高いという学生ユーザーを月額料金3年間無料、データ通信料の上限いっぱいまで使える無料の専用コンテンツを用意することで、新規ユーザー獲得とともにARPUを確保する考えの「ホワイト学割」と似ている。端末初期費用を割り引くほかにデータ通信料の下限を0円に、また、2008年6月から7月の期間限定でデータ通信料を完全無料とする特典を設ける。

 このように、流動的な通話料とデータ通信料に魅力的と思わせる価格とサービスでAPRU向上も一緒に考えている。このあたりはソフトバンクモバイルと同様に、なるほどと思わせるところはある。

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