新UIのカジュアル端末やWiBro後継技術も展示――韓国「World IT Show 2008」リポート(後編)韓国携帯事情(2/2 ページ)

» 2008年06月25日 01時45分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]
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Wave2サービスが秒読みの「WiBro」

photo SKTによる「WiBro Wave2」のデモ

 世界に先駆けてスタートした韓国版モバイルWiMAXの「WiBro」。サービス開始から2年たち、思ったよりもエリアもユーザーも拡大できてない現状については前回お伝えした。World IT Show 2008には

WiBroに関する展示も、いくつか見受けられた。

 SK Telecom(以下、SKT)はWiBro Wave2のデモを公開。WiBro Wave2はMIMOに対応し、下り最大37.44Mbps、上り最大10.08Mbpsというデータ送信速度を誇る次世代WiBro規格だ。SKTは展示会以前に、同規格でHD/SD映像を転送する実験を成功させており、ソウルでの商用サービスを2008年下半期中にもスタートさせる。

 同社は転送実験を実施した際、WiBro Wave2専用USB端子付きモデムや専用モバイル端末の販売をアナウンスしており、SKTブースにはWiBro Wave2モデムが登場した。見た目はこれまでのWiBroモデムと変わらず価格なども未定だが、専用の料金プランが新たに登場する見通しだ。

 WiBroで転送しているIPTV映像を見てみると、確かに途切れることがなく滑らか。ただし展示場内のデモは静止状態で電波も強く、安定した環境下のものであり、実際に街に出て利用してみた際の実態が気になるところだ。

photophoto WiBro Wave2のモデム。USB端末でノートPCなどに接続できる

photophoto WiBro Wave2でIPTV映像を再生しているところ。ストリーム映像は途切れなく滑らかで、現在のWiBroより高品質であることがひと目で分る。実際の転送速度は右側が上り89.6kbps、左側が下り6.4Mbps
photo Samsung電子の「SPH-P9200」。5インチのワイドVGAタッチパネルディスプレイの右横には、回転可能な1.3メガピクセルのカメラがを備える。OSはWindows XP Home Editionで、30GバイトのHDDを搭載

 Samsung電子は、WiBro対応端末の「SPH-P9200」を展示していた。これは以前「Deluxe MITs」と称して2006年11月に登場した端末の後継機で、機能が若干向上している。

 キーボードを中央から折って、3つ折りにして持ち歩けるというコンセプトは以前のまま。新モデルではキーボードを折り曲げた際にボタンが現れ、このボタンでも簡単な操作ができるようになっている。

 キーボードは間隔が十分にとられているが、折りたたみ型であるせいか、キーストロークが浅くて硬く、押し心地はいまひとつだった。またキーボード右上についているトラックパッドは、指先での操作を便利にしてはくれるものの、やや小さすぎる感もある。便利だったのは折りたたんだ際に出てくるボタンで、WiBroの接続から画面の拡大/縮小やWebページの移動など、一通りの操作が可能だ。

 またWiBroだけでなく、HSDPAやIEEE 802.1b/gなどにも対応しているので、WiBroサービスが提供されていない地域でも無線でのデータ通信が利用できる。

photophoto 静止状態で利用する際はキーボードを開き、移動中にWebサイトを見るだけといった場合はキーボードを閉じて――というように使い分けできる。キーボードを中央からスライドするように3つ折にすると、画面の5インチ大のサイズにまでコンパクトになる

photophoto キーピッチは十分にとられているが、キーストロークが浅い。またキーボードの右上には、小さなポインティングデバイスがある

photo カメラを回転して操作しているところ。画面の右は現在カメラが映し出している映像、左は撮影した写真や動画をアルバム表示しているところ

3G携帯を利用した新サービス

photo SHOW Care専用端末。左上に丸いスピーカー、右上に丸いモーションセンサー、中央にカメラがある。カメラの下にある画面は、モーションセンサーで動きをとらえ、持ち主の携帯電話に緊急連絡しているところ

 KTFはコンテンツを中心とした展示を行っており、その中には興味深い展示があった。

 「SHOW Care」は、専用端末を置くことで、リアルタイムでその場を監視できるサービス。専用端末はHSDPAに対応しており、モーションセンサーやカメラ、スピーカーを備える。この端末から、映像などのデータが送られることで、遠隔地も監視ができる仕組みだ。

 例えば留守宅に不審者が侵入した際には、モーションセンサーで動きをキャッチすると、すぐさまユーザーの電話番号に自動的に連絡する。、また、カメラで映像を送ることで、遠隔地にある売り場の監視するといった設定も可能だ。専用端末自体が1つの携帯電話としての扱いを受けるので、緊急時には音声通話もできる。

 まだ商用サービスは提供していないが、不審者を監視するほかにも、子どもの監視や観察などといった具体的な用途も考えられており、試験的なサービスも行われたということで、近々のサービスインが期待できそうだ。

photophoto モーションセンサーで動きをキャッチした情報が持ち主の携帯電話に届くと、専用端末で撮った映像が、持ち主の携帯電話に表示される。持ち主の携帯電話から、専用端末に電話をかけることも可能だ(写真=左)。専用端末を利用して、生態観察をしているところ(写真=右)

 さらにSKTでは、個人認証が可能なSIMを利用した決済や証券サービスを紹介していた。これを利用すれば携帯電話で、交通カードやクレジットカードでの決済、そして証券情報のチェックが可能だ。

 すでにサービスは提供されており、証券会社や銀行などの窓口に申請して、携帯電話に専用ソフトウェアをインストールすれば利用できる。決済は通常のクレジットカード感覚で利用できるほか、証券サービスはリアルタイムでの株式情報が見られるのが便利だ。

photo SIMに交通カード機能を搭載している。携帯電話がそのまま、交通カード代わりとして利用できる
photophoto SIMのクレジットカード機能を利用し、決済を行っているところ。最初にクレジットカードのパスワードを入力し、携帯電話を該当部分に当てると決済が完了する

photo リアルタイムの株式情報をチェックできるSIM証券サービス。

 今回のWorld IT Show 2008で目立っていたのは、3G網や次世代通信規格を利用した新しいサービス、斬新な入力方法の携帯電話などだ。Samsung電子やLG電子などの端末メーカーはこうした端末を、グローバルな戦略製品として位置づけ、キャリアはWiBro Wave2やHSDPAによって世界進出を目論む。サービスや製品を、“国内向けに限定しない”傾向は、今後さらに進むとみられ、その動向に注目が集まる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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