携帯ビジネスの転換期、シャープは“ここ”を攻める――シャープ 長谷川祥典氏ワイヤレスジャパン2008 キーパーソンインタビュー(1/2 ページ)

» 2008年07月17日 01時23分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 携帯電話メーカーを取り巻く市場環境は、激流のように流れを速めている。

 各キャリアの割賦販売・分離プランの導入、コンシューマー市場の飽和、そして“外来種”である「iPhone 3G」の上陸。ユーザーニーズの面で見ても、ひと頃の「ワンセグブーム」は下火になり、次のヒット要因を手探りしているのが実情だ。

 こうした中で、携帯電話メーカーは“どこを目指す”のか。

 国内最大のシェアを持ち、かつての「カメラ付きケータイ」から先の「AQUOSケータイ」まで、常に“次の一歩”を先取りすることで携帯電話メーカーのリーダーシップを取り続けてきたシャープ。同社 常務執行役員 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏に、シャープそして携帯電話メーカーの未来について話を聞いた。

操作性向上だけでなく、カメラ機能の強化にも取り組む

Photo シャープ常務執行役員 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏

ITmedia 2006年から2007年は、番号ポータビリティ制度(MNP)やワンセグブームという要素が端末市場の活性化要因になりました。しかし、それらの影響はだいぶ落ち着いてきているようにも見えます。この2008年の新たな活性化要因や、注目ポイントとなるものは何でしょうか。

長谷川氏 2007年は「ワンセグ」と「薄型化」の年でした。シャープとしても、この2つの要素をしっかりと取り込めたと自負しています。

 その上で、2008年の重要ポイントは何かと申しますと、1つは「操作性」になります。これはAppleのiPhone 3Gによって注目されているということもありますが、それを抜きにしましても、ここまで携帯電話が進化しますと機能を使いこなせない人が増えてきます。“いかに使いやすくするか”に、本腰を入れて取り組まなければなりません。

 もう1つ、シャープとして(2008年に)取り組みたいのが「カメラ」です。これまでワンセグと薄型化の優先度を高くしていたために、カメラ分野への注力は一時停止していたところがあるのですが、もう一度、カメラの進化に取り組みます。

ITmedia まずUIについて詳しくお聞きしたいのですが、AppleのiPhone 3Gはコンセプトからして“電話機から進化した携帯電話”とは別物です。そこにおける優れた操作性(UI)やユーザー体験というものは、今までの携帯電話とは別のコンテキスト(文脈)にあります。

 では、シャープが目指す操作性向上への取り組みというのは、今までの携帯電話の延長線にあるUIの進化なのか、それともiPhone 3Gのように別のコンテキストになるのか。このあたりはいかがでしょうか。

長谷川氏 おっしゃるとおりで、iPhone 3Gは(従来の携帯電話とは)まったく別のカテゴリーです。メディアプレーヤーやインターネット端末としての機能が直感的に使える。このあたりのUIのセンスは革新的だと思います。

 その上で、シャープにおけるUIの進化が今後どのような方向に進むかというと、(従来の携帯電話の延長線上と、iPhone 3Gのような新たなコンセプトの)両方向があると考えています。

 従来の携帯電話UIにも、改善すべきところが多々あります。特に機能が多すぎて使いにくいという部分を改良し、直感的に使えるようにするというアプローチは、従来型の携帯電話でも必要です。

Photo 携帯電話としての基本機能を備えながら、インターネットとの親和性を高めた「インターネットマシン 922SH」。“新しい形のケータイ”として注目を集めた

 一方で、iPhone 3Gのような今までの携帯電話とは違うカテゴリーの製品にも取り組んでいきます。その端緒がソフトバンクモバイル向けの「インターネットマシン 922SH」であったわけですけれども、大画面液晶とQWERTYキーボードが搭載された端末というのは、これから(市場への)浸透が進む新分野だと思います。

ITmedia 今後はフォームファクターの拡大も含めたバリエーションが出てくる、ということですか。

長谷川氏 これは少し時間がかかるかもしれませんが、今後のケータイはインターネットとの接続性が非常に重要になってきます。iPhone 3Gはここが優れているわけですけれども、シャープとしても、インターネットとの親和性の高い製品作りに注力していきます。

ITmedia 一方で、もう1つの注力分野の「カメラ」ですが、歴史をひもとけば、シャープは“カメラ付きケータイ”をヒットさせた草分けで、もともと強い分野でした。“原点に立ち戻る”ということでしょうか。

長谷川氏 最近は薄型化・小型化の影響で、カメラを犠牲にしてきてしまった部分があります。その反省もあり、今後はカメラ機能を強化します。

 具体的なアプローチとしては、「ケータイとして使いやすいカメラ」と「コンパクトデジカメに負けない高性能」の両方を模索していきたいと考えています。

ITmedia シャープらしい、新たな“ケータイ+カメラ”の利用提案にも期待したいですね。

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