第10回 「自分を更新してホッとする」なんて――自分がケータイサイトに求めていたものコンテンツ業界の底辺でイマをぼやく

» 2008年08月11日 22時16分 公開
[トミヤマリュウタ,ITmedia]

 前回から少々時間が空いてしまいました。すみません。お盆前進行で死にかけまして……。さて、今回は前回の続きです。新聞・雑誌・テレビをすっかり見なくなり、ニュースの多くをネットで取得するようになった32歳の男。そんなマスメディアとの接触時間が著しく減ってしまった人間に、どんな企画をもってして、コンテンツや広告を届けるか。

 「ケータイは24時間持っているわけだから、ケータイを通じて何かしらアプローチすればいいんじゃない?」という方向になりがちだと思うんですけど、「じゃあそいつはどんなとき、どんな気持ちでケータイいじってるのでしょう?」というのをまとめていこうと思います。

 今回は前回と異なり、ニュース取得以外の部分も含めて、「ケータイをいじっているとき全般の使い方と気持ち」という感じで見ていきましょう。最初に謝っておきますが、前回最後にケータイでの「広告」とか「プロモーション」をどうするかという感じで振っていたのですが、広告というよりはコンテンツの話になりました……。一応その点、ご了承いただいてお読みくださいませ。

日々の生活とケータイと私

 さて、まずは、自分のケータイの使い方を見ていきましょう。

 ご多分にもれず、朝はケータイのアラームで起きます。すぐにシャキッとは立ち上がれないので、ベッドの上でしばし悶絶するわけですが、昔はこのとき、テレビをつけるようにしていました。リモコンをいじって、何か朝のニュースやワイドショーを垂れ流す。うつらうつらしながら聞いていると、興味のわくニュースが耳をかすめて、それに気をとられるうちに目が覚める……といった案配でした。

Photo 主に下の方のニュースやら経済やらスポーツやらをぐるぐるして、気になる記事が見つかると意識がはっきりして起きる……という毎日。見つからないと2度寝

 しかし、今はどうでしょう。今は、ケータイのアラームを止めたらそのままネットに接続します。自分の個人ケータイはソフトバンクモバイルの端末なので、Yahoo!ケータイのトップを立ち上げて、ニュースをあさることが非常に多いです。7月にリニューアルされたY!ケータイですけど、「“ワイドショーのように楽しめる”ポータルを目指す――『Yahoo!ケータイ』刷新の狙い」という+D Mobileの記事のとおりに、ケータイのYahoo!でニュースだけでなくエンタメ情報やら星占いやらをチェックしている自分がいます……。いやぁ、踊らされてますな(笑)。

 そういえば、最近はベッドの横にリモコンを置いていないですね。昔と違って「寝る直前までテレビを見る」という習慣はすっかりなくなってしまい、「寝る前はPCでネットを見て、ベッドに入ったらケータイでネットを見るか、マンガを読むか本を読むかして撃沈」というパターンが多い。あらためてテレビ離れを実感します。

 そして「いざ出勤!」となるのですが、自分は自転車で5分の距離にオフィスがあるので、そこはあっという間です。仕事を始めたら目の前にはPCがありますからネットはPCで見ます。大きな会社さんのように規制がかけられていたりもしないので、2chだろうがなんだろうが、仕事に必要なものはガンガン見ます。

 一方、仕事中のケータイは、すっかり電話扱いになります。Webブラウザでもメーラーでも、スケジューラーでもない。あ、電卓としては利用頻度高いですけども。

 一応仕事のメールをケータイに転送してはいますが、外出中にメールチェックしたいからで、ケータイから仕事のメールを送ることはめったにありません。ここら辺は、人によって千差万別でしょうけど、自分は、基本的にプライベートユースですね、ケータイメール。

「マクドナルドでオーダーするための順番待ちすら暇」と考えている自分に驚き

 平日の日中は仕事の電話用途がメインのケータイ。とはいえ、個人的用途でまったく使っていないかというと、そうでもありません。

 「打ち合わせに向かう移動中の電車で」「昼休みに飯を食べながら」「トイレにこもっているとき」など、ちょっとしたスキマ時間には大概ケータイをいじっています。あぁ、PCの再起動待ちも該当しますね。ちょっとした空き時間にはケータイをいじくるわけです。

 よく、「ケータイをいつ、どんなときに使いますか?」という類のアンケート調査がありますが、それを見ていつも不思議に思うんです。個人的には「どんなときもこんなときも、空き時間にはいつも使ってますがな」と思うので……。

 ただ、この空き時間という概念がくせ者でして。

 例えば「休日、出掛けるまで2時間ある」というシチュエーションが生まれたとします。そのときに、「じゃあ2時間ケータイサイト見てつぶすか!」とは思いません。家にいれば「ゲームでもするか」となりますし、外にいれば「喫茶店で読みかけの本を読むか」となります。

 じゃあ、ケータイを見ようと思う空き時間ってなんなのさと言われたら、それは「コンソールでゲームしているときのロード待ち時間」であったり、「マクドナルドで注文するまでのレジ待ち時間」であったりといった、ごくわずか、ミクロ的な空き時間なんです。

 空き時間というかスキマ時間という世界なんでしょうけど、ここら辺の感覚のズレを、非ケータイ世代の方との間で感じることは、ままありますね。

 もちろん、ケータイでも、大作ロールプレイングゲームなどであれば2時間の空きを、それで埋めようと思いますよ。そこはTPOに合わせてという感じですが、ことケータイの“サイト”に関して言えば、このミクロなスキマ時間のなかで接することが圧倒的に多いんですね。時にケータイサイトがメールチェックに変わることも含めて。メールの多い方は、メールとサイトが逆転するのかな。

 話を前に進めます。仕事が終わると、自転車で自宅まで帰る、もしくは定食屋に寄って帰って午前さま……、というとってもプライベートゼロな毎日を送る自分ですが、夜もまたメシ屋でケータイをいじっていることが多い。ごはんを頼んでから出てくるまでの間にいじるわけです。これまたスキマ時間ですね。

 昔は、その時間に本を読んだり雑誌を読んだりしていたはずですが、最近では「持ち歩くのがめんどくさい」「5分、10分のスキマ時間では小説を楽しめない」という理由から、平日のこうしたタイミングに、本や雑誌を読むことはなくなりました。本を読むのはもっぱら長い時間がとれる休日の昼下がり。しかも家にいると、You tubeやらニコニコ動画やら誘惑が多いので、喫茶店などで読むようにしています。ネットの誘惑は強いですなぁ……。

「30秒の暇」を埋めるために何を求めてケータイを見るのか

 自分が普段、どんなときケータイに接しているのかをざっと思い返してみましたが、途中でも記したとおり、結論から言うと「スキマ時間のすべて」でケータイを見ていることが分かります。あくまで“空き時間”ではなく、“スキマ時間”。時間の単位が違います。「電車通勤の30分でニンテンドーDSをする」のは空き時間の過ごし方。自分にとってケータイは、3分、5分、いや、下手をすると1分、30秒のスキマ時間に楽しむものというイメージです。

 いやー、それにしてもです。「マクドナルドでオーダーするために1分待つ」という、その待ち時間すら、「なんか暇」と思う自分がいることに、今回あらためて気づかされました……。ケータイを持つ前は、そんなこと思ってはいなかったはず。なぜ、1分、30秒という、ミクロな暇すら埋めたいと思うようになってしまったのでしょうか……。

 ここでちょっと、自分は何を求めて、どんな気持ちでケータイを見ているのか、自問自答してみましょう。1分の待ち時間に、自分はいったい何を見ているのかと。

一分の待ち時間があったとき、ケータイでしていること、見ているもの

  • ニュースサイトの見出しチェック
  • 自分が出入りしているミニブログの発言チェック&自分のログ更新
  • Y!ケータイトップの各種レコメンドやニュースをチェック
  • 仕事のメールチェック
  • データボックス開いて、愛ウサギの写真を眺める

 こうしてみると、「ウサギの写真を眺める」以外の行為は、どれも最新情報チェックですね。どうやら、

  • 5分ネットに接続しなければ、最新の自分ではない
  • スキマ時間にケータイをいじって、自分の情報をアップデートすることでホッとできる

そんな感覚が自分の中にあるようです。ニュースサイトが、ブログが毎分毎秒更新されていくなかで、常に自分自身も更新しておきたい、そんなことを思っているのかもしれません。今回、自分で自分に驚きますわぁ、本当に……。

 しかし、これで余計に思いましたが、やはり「更新感の薄いケータイサイト」じゃダメですね。いくらいいものを作っていても、小まめな更新を放棄して、「月に一回更新でいいや。その分大量にアップすればいいんでしょ?」というのはよくありません。ユーザーにアクセスさせる動機付け、その大きな部分を、自ら手放しているようなものです。

「自分更新欲」に対応するケータイサイトってどんなもの?

 この「自分更新欲」に対応するため、多くのケータイサイトは上の方にニュースを並べています。でも、それはキャリアのポータルサイトでもやっていること。ネット上では、空気のようにどこにでもあるのがニュースですから、違いを生み出すものにはなりにくい。

 何かもっと、別の方法、例えばサイト内で更新された記事が、トップページの一番上に来るといった、ブログのような構成になったりはしないもんですかね。アクセスしたら、昨日一番上にあったコーナーは1つ下に移動していて、今日更新されたものが一番上に来ている……といった案配に。もちろん、そうなっているサイトもあります。ですけど、多くのケータイサイト、しかも玄関となるトップページの構成って、

 「レイアウトがずっと変わらず、それぞれのコーナーが、その場所でひたすら更新されている」

という感じじゃないですか? トップページで下のほうにリンクを置かれてしまったコーナーは、いくら更新しても、人目に付かないということになってしまいます。

 「そのためにWhat’s Newを付けているんじゃないですか」というのも分かるんですけど、もっと大胆に……というか、「トップにアクセスしたら最新の記事が上から順に並んでいる」という、PCサイトやブログでは当然の構成にできないものなのかなぁと。

そうすると、自分的にはきっと「自分更新欲」のツボが押されて、定期チェックサイトリストの1つに入れたくなるのではと思うのです。もちろんそのサイトが、「毎日(のように)更新されている」必要性はありますけどね。やはり更新の頻度は大事ですね。1回で大量に更新されていなくてもいいから、頻度が大事という。

 つまり、週に1度、5本のネタを一気に更新するよりは、週5回更新の方が圧倒的にいい。もしくは、1日1回、5ネタを一気に更新するよりは、2時間おきに1ネタずつ、5回に分けて更新した方が「自分更新欲」のツボを押せる。そういうものじゃないかなと。

 広告やプロモーションサイトについても、そのツボを押すような作りが求められるでしょうね。例えば、バナー広告/リンク広告でユーザーを誘導したいならば、広告上で「その先にあるサイトは、どれくらいの時間で(どんなものを)楽しめるのか」を伝えるべきでしょう。

 あぁ、今回もやたらと長くなってしまいました……。でも、今回は書いていて結構参考になりました(笑)。そうかぁ、自分には「自分更新欲」なんていう欲求があったのかぁと。ちょっと、これ参考にしてサイト作ってみようかな、なんて。ではまた。

プロフィール:トミヤマリュウタ

ときにライター、ときにデザイナー、ときにプランナー。某携帯電話関連会社にて某着メロ交換サイトを企画するなどといった若気のいたりを経て、2001年に独立。2004年には有限会社r.c.o.を設立。書籍、雑誌、ウェブの執筆・デザインなど、各種制作業務を中心に活動。2006年あたりから始まったケータイ業界再編の波にもまれていうるちに、近年では大手携帯電話会社のコンテンツ企画を手がけることになっていたりと、なんだか不思議な毎日。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年