Samsung電子の日本市場本格参入は、2006年にボーダフォンジャパン(現ソフトバンクモバイル)向けに投入した「804SS」が始まりだ。
この804SSは、海外で同時期に発売された「SGH-Z540」を日本語ローカライズしたモデルであり、ハードウェア仕様はグローバル版とほぼ変わらない。当時は驚異的だった、厚さ14.9ミリの薄型ボディを実現し、「Samsung電子 イコール 薄型」という印象を与えることにも寄与した。その後のモデルも薄型・スリム路線を踏襲することになる。ちょうどSamsung電子が海外で、薄型プレミアムモデルの“Ultra Edition”をブランド展開していたこともあり、日本市場向け製品は海外市場と歩調を合わせたモデルが投入されていった。
その後、海外メーカーとしていち早くHSDPAに対応(707SC II)し、ワンセグの搭載(805SC)や“最薄”を謳うモデル(XS 707SC、708SCなど)など、技術やデザイン面でも日本メーカーに劣らぬ製品を立て続けに投入。そして2008年1月に500万画素+顔認識AF+光学3倍ズーム+キセノンフラッシュ+有機ELディスプレイを搭載した「PHOTOS 920SC」が登場した。これは海外では定評ある同社の高画質カメラモデルの日本初上陸モデルでもある。そしてPHOTOS 920SC以降、同社の日本向けモデルは海外モデルとはややテイストが異なる、日本人の嗜好に合わせた、悪く言うと当たり障りのないものになっている。
このようにSamsung電子は、当初グローバルモデルと歩調を合わせたものを日本市場向けとしても積極的に投入していたが、ガラパゴスとも呼ばれる特殊な市場において苦戦。最近は、機能やデザインを日本市場向けにカスタマイズしたモデルを投入する戦略に変更したようだ。海外メーカーの中で、ワンセグや絵文字など、日本では標準機能になりつつある独自機能を搭載するノウハウを多く持っているメーカーの1つといえるだろう。
Samsung電子は海外市場で「BlackJack」シリーズなど多くのスマートフォンを発売するが、日本におけるスマートフォンの市場規模を考えると、同社のグローバルスマートフォンがそのまま日本市場に投入されることは考えにくい。
これらのことから“日本版OMNIA”はまず、Windows Mobileスマートフォンをそのまま日本語対応させただけのものとなるのは考えにくい。すでに日本市場に参入しており、“ガラパゴス”を目の当たりにもしている同社だけに、単なる日本語化だけでは売れないのは分かっているはずだ。
対して可能性がありそうなのは、韓国のHapticや、F480、F488のように、スマートフォンではなく“ハイエンドケータイ”として展開する方法。大画面のタッチパネルディスプレイ+最小限のキー+ミニマルデザインといったOMNIAの先進性のイメージは残しつつ、一部機能と本体サイズ、デザイン、カラーリングなどを日本市場向けにカスタマイズするのではないだろうか。
予想される機能として、まずはワンセグ。ディスプレイはVGA(640×480ピクセル)以上で、カメラは携帯ハイエンドクラス。キセノンフラッシュや顔認識AFなどもPHOTOS 920SCですでに実現しているので、もちろん“込み”。またTouchWiz UIの特徴ともいえるウィジェット機能は日本ユーザーにとって使いやすく、便利と思えるようなオリジナルのものを多数用意し、日本語入力システムや絵文字といった日本語入力、表示に関連する工夫も当然してくるだろう。
2008年8月、「930SC」という型番のSamsung電子製の端末がBluetooth認証を通過した。こちらは、型番命名ルールからソフトバンクモバイルのハイエンド機種と予想される。スマートフォンかそれ相応の端末に与えられるXシリーズではなく、ワイヤレスジャパン 2008で関係者が語った意向ともかなり合致する。もちろん、第三者試験認証機関のテュフ ラインランド ジャパン(テュフ)を通過したものの日本市場には登場しなかった例(910SC)はあるが、当時の状況とは異なることと発売時期を2008年内目標とすることから、“日本版OMNIA”はこの型番となる可能性が高いといえそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.