謎だらけ? 吉野家のWAON導入(1/2 ページ)

» 2008年10月17日 13時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 先月発表された、「牛丼チェーンの吉野家が電子マネー「WAON」を導入する」というニュースに驚いた方は多いのではないだろうか。吉野家では2009年春から導入を開始し、全店でWAONを利用できるようにする予定だという。

 →吉野家が全店でWAONを導入(参照記事)

 記者もこのニュースに驚いた1人だ。ここ1年、大手コンビニチェーンでのFeliCa電子マネー導入が進み、カードや携帯を“かざして”買い物をしている人を見かけることが増えた。コンビニの次に電子マネーが多く利用されるであろう場所として注目していたのが、自動販売機と単価500円前後のファストフードだ。自動販売機の電子マネー対応は進みつつあるし(参照記事)、ファストフードとしてはマクドナルドがiD決済とFeliCa対応の「かざすクーポン」を組み合わせた店舗を増やしつつある(参照記事)

 この流れに呼応するように、吉野家が電子マネーの導入を表明したことは注目に値する。しかし、1つだけ引っかかったことがあるのだ。それは、「数ある電子マネーの中から、吉野家はなぜWAONを選んだのか?」という疑問である。

WAONユーザーはどんな人たち?

 まず、WAONについて簡単におさらいしておこう。

 WAONはイオングループが運営するプリペイド電子マネーサービスで、単体のカードのほか、イオンクレジットのクレジットカードやイオン銀行のキャッシュカードにも搭載されている。また、おサイフケータイで利用することもできる。8月末時点で、累積発行数は約560万件(カード、おサイフケータイの合計)、1カ月の利用回数も1000万件以上と、好調に伸びている電子マネーの1つだ。

 →FeliCa決済利用状況(7〜8月版)

 イオン広報部によれば、WAONの利用単価は約1600円※で、ユーザーは女性が中心だという。日銀の調査によれば、2007年に利用された電子マネーの平均利用単価は696円だから(参照リンク)、ほかの電子マネーに比べてWAONの利用単価がかなり高いことが分かるだろう。

※8月1日〜31日の平均利用単価
WAONカード(左)とモバイルWAON(右)。白い犬をモチーフとしており、リーダー/ライターにかざすと「ワオーン♪」という音(鳴き声)が鳴る。女性を意識したかわいらしいデザインだ

 WAONの利用単価が高く、しかも女性ユーザーが多いのは、使える主な場所がイオン系のスーパーやショッピングセンター(SC)だから、という理由に由来している。実施しているポイントキャンペーンを見ても「毎月10日に利用するとポイント2倍」※のほか、「セルフレジを利用するとWAONポイントが2倍」など、スーパー向けのキャンペーンが人気となっている。

※追記・・・10月10日でこのキャンペーンは終了している

 これらの情報から思い浮かぶWAONのユーザー像は、“イオン系列のスーパーやショッピングセンターで買い物をし、WAONで支払いながらポイントをためる女性客”だ。同グループのコンビニ「ミニストップ」でもWAONを利用できるが、利用単価が高いことから、コンビニよりもスーパー・SCでの利用が中心と見ていいだろう。

 実はこれ、ほかのFeliCa電子マネーと比べるとかなり異色のユーザー像といえる。例えば同じ流通系電子マネーでも、セブン&アイグループの「nanaco」の場合は、ユーザーの男女比は6:4で、コンビニ(セブン-イレブン)を中心に利用されていることもあり、利用単価は「1000円は超えない」(セブン&アイHLDGS広報部)。

 また、ビットワレットの広報部にも「Edy」の利用ユーザーについて問い合わせたところ、「男女比は出していませんが、半分よりは男性の方が多いです」という回答を得た。利用単価は「(日銀調査の)690円よりは高いが、1000円は超えていない」という。

各種電子マネーの特徴比較

電子マネー名 Edy nanaco Suica WAON
事業者 ビットワレット セブン&アイ JR東日本 イオン
累計発行数(カード+携帯) 4250万 624万 2591万 560万
加盟店数 7万8000店 2万0371店 3万9270店 2万6000店
ユーザー男女比 半分以上は男性 6:4(来店比率は7:3) 半分以上は男性(編集部推定) 女性中心
利用単価 1000円未満 1000円未満 非公開 1600円
利用エリア 全国 全国 東日本中心(首都圏、仙台、新潟) 全国
多く利用される場所
(編集部推定)
コンビニ、ドラッグストアなど コンビニ(セブン-イレブン)など 駅ナカのコンビニ、駅ビルなど イオン系スーパー、SC
累計発行数や加盟店数は2008年8月末時点での数字を引用。多く利用される場所と、Suicaのユーザー男女比については記者の推定
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