地域に愛されている電子マネー――Edyアイランド・沖縄最新事情(後編) 神尾寿の時事日想・特別編(1/3 ページ)

» 2008年10月22日 09時56分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 日本で最も電子マネー・Edyが利用されている地域、沖縄。老若男女がまるで「現金のように」Edyを使い、観光客の利用も多い。後編ではさまざまなEdy加盟店の様子を見ながら、沖縄でなぜ電子マネーが盛り上がっているのかについて考えてみたい。

 →1分間に30回Edyが使われる――Edyアイランド・沖縄最新事情(前編)

チャージして決済が定着している――りゅうせきエネルギー

 沖縄ではクレジットカードの利用率が低く、その代わりの非現金決済手段としてEdyが広く受け入れられている。この特徴が顕著に感じられるのが、ガソリンスタンドでの利用状況だ。

 「ENEOS」ブランドを中心にガソリンスタンドを展開するりゅうせきエネルギーでは、県内の50店舗すべてでEdyに対応。多くの店舗で現金チャージ機を用意するほか、店内にはEdy対応の自販機も設置している。

 「Edyの利用率は10%強ですね。クレジットカードの利用率が(全国平均よりも)低く、その分、Edyの利用率が高い。特に個人向け販売では『非現金だとEdy』といった状況です」(りゅうせきエネルギー バイピーてだこ店 店長の長嶺 実氏)

 筆者が取材で訪れている間にも、数人の利用客がEdyで支払うシーンに遭遇した。よく観察してみると、現金チャージ機で残額確認・チャージをしてからレジに向かうというのが、一般化しているようだ。

りゅうせきエネルギーの運営する「ENEOS」。ガソリンスタンドでのEdy利用が多いのも、沖縄の特徴の1つ

 「ガソリン代の支払いは決済金額が高いですから、『チャージしてから決済』という利用が多い。利用者はほとんど地元の人たちです。Edyは女性のお客様への訴求力もありますね。Edyの利用率は上がってきている状況です」(長嶺氏)

 潮風が吹き、紫外線も強い沖縄では、洗車やコーティングといった油外サービスの需要も高いというのだが、そういった付加価値商品の販売でもEdy決済は使われているという。Edy利用が活性化している沖縄の中で、ガソリンスタンドは“電子マネーの利用平均額を高くする”上で貢献している。

 また、バイピーてだこ店の後に足を運んだ空港近くの豊崎店では、ガソリンスタンドの看板に「Edy使えます」の巨大な表示が掲げられている。これはりゅうせきエネルギー側が、県内だけでなく、県外から訪れるEdyユーザーにも分かりやすいように設置したものだという。

ENEOS豊崎店ではブランドの表示看板に「Edy」の文字が表示されている。これは全国的に見てもめずらしいケースだ

 ビットワレット営業統括部沖縄営業所長の小暮雅夫氏は、「ガソリンスタンドの設備で、元売り会社のブランド管理も厳しい表示看板に、単独の電子マネーの名前が掲げられているのは全国でもここだけではないか」と話す。確かにほかの電子マネーはもちろん、VISA/MASTERなどクレジットカードブランドと比べても、ガソリンスタンドの“顔”である表示看板に特定の決済ブランドが掲げられている例は筆者も聞いたことがない。

Edyとは関係ないが、りゅうせきエネルギーでは独自の会員サービスを構築。その利用促進のために、おサイフケータイの3者間通信を使った登録システムを用意していた

 また、りゅうせきエネルギー以外のガソリンスタンドでもEdyへの待遇は別格で、例えばゼネラルを扱う伊れい産業では、ガソリンスタンドの広告スペースをビットワレットに無償提供。Edy/おサイフケータイのQRコード入り広告が、スタンド内に大きく掲示されている。これらは沖縄におけるEdyが特別な存在であることが、印象付けられる光景である。

ゼネラルでは無償で広告スペースを提供。QRコード入りのEdy広告が掲げられている
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