孫社長「不安に答える」 ソフトバンク、6年ぶりに業績予想公表

» 2008年10月29日 21時40分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 借金を返せるのか――繰り返し問われた孫社長は「私のフィロソフィーに関わること」と人生哲学を持ち出した。「19歳の時、50年後までの人生プランを立て、それを守ってきた。50代で事業を完成させ、60代では完全に無借金の状態で後進にバトンを渡す。無借金は50代のうちに実現する」。孫社長は51歳

 「マーケットは“見えない不安”で疑心暗鬼に陥っている」――ソフトバンクは10月29日、6年ぶりに業績予想を開示した。「投資家の不安にいち早く、正面から早く答える」ためと孫正義社長は説明。決算発表は当初の予定より1週間前倒した。

 今年に入ってから2000円前後で推移していた同社の株価は、10月下旬から1000円を大きく割り込むきつい下げに見舞われ、時価総額が1兆円を割り込む事態に。連結有利子負債が約2兆5000億円に上っており、金融危機のあおりで返済能力が不安視されていることが一因だ。「借金を返しきれるか、資金繰りは大丈夫かという不透明感から、心配した投資家も多かっただろう」


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 今回開示したのは、今期と10年3月期の営業利益、営業キャッシュフロー(CF)、投資CFの予想。今期は営業利益が3400億円、フリーCF(FCF:営業CF+投資CF)が1400億円、10年3月期は営業益4200億円、FCF2500億円を見込む。

 「FCFの改善が続いており、手元流動性は4240億円、コミットメントラインの未使用枠は1010億円ある。返済余力は十分にある」と孫社長は強調する。

 有利子負債のうち約1兆2000億円が旧ボーダフォン買収関連だが、「返済は順調」という。「返済実績は見通しをはるかに上回るピッチ。返済期限は10年後の2018年だが、あと5〜6年で完済できる」

 設備投資は徐々に減らす。09年3月期の設備投資総額は2765億円(前期比6%減)、10年3月期は2200億円(同20%減)だが、この水準でも携帯電話サービスの品質は十分保てると孫社長は話す。

 「携帯電話の基地局整備のための投資は3年前倒しで行い、一番コストがかかる鉄塔はほぼ建て終わっている。これからは3.5G、3.9G、4G向けの投資が必要になるが、それは2〜4年後の話」

 旧ボーダフォンの社債に絡み、最大で750億円の特別損失が発生する可能性があることも明らかにしたが、孫社長は「損失が発生してもあくまで一時的なもの。同様な取引は社内にほかにはない」と強調した。

営業益は過去最高 携帯事業は減収減益

 同日発表した08年4〜9月期の連結決算は、営業利益が前年同期比7.3%増の1800億円と過去最高だった。

 売上高は2.6%減の1兆3289億円、経常利益は5.5%増の1173億円、純利益は11.5%減の411億円。FCFは121億円のプラスで、2268億円のマイナスだった前年同期から大幅に改善した。

 携帯電話事業の減収が連結売上高に響いた。端末販売数が減少した影響で、同事業の売上高は5.0%減の7739億円、営業利益は6.4%減の881億円。

 ただ、携帯事業の収益性は今後向上するという。第2四半期(6〜9月期)のARPU(加入者1人当たりの売上高、音声ARPU+データARPU)は4180円と、前四半期比で10円減にとどまり「ARPU下落に底打ち感がある」ほか、2年契約が終了して特別割引が適用されないユーザーが増えることなどがその理由だ。

 下期は割賦販売の契約期間が終了するユーザーが増える見込みで、営業CFの押し上げ要因になる(「ホワイトプラン」でも利益が出る理由──ソフトバンク中間期、携帯事業が好調)。

「iPhoneはもうかる」

 販売不振が伝えられるiPhoneについては「予定していた数が出ている」と話す。「iPhoneは慣れるまで取っつきにくいが、かめばかむほど味が出る端末で、私も毎日使っている。中長期でユーザーが増えるだろう」

 「iPhoneはもうからないという報道もあるが勘違い」で、ユーザーのARPUは一般の端末の2倍近いという。「iPhoneは収益にプラスになる、もうかる端末だ」

 「Android」など携帯電話のOSのオープン化が進んでいる。「オープン化はソフトバンクがPCで体験してきたこと。われわれには追い風になるだろう」

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