「このページ、ちょっと縦に長すぎるでしょー」
「いやいや、ケータイサイトのトップページなんてどこも長いですよ」
「でも、3〜4スクロールくらいが限界じゃない? それくらいに押さえてよ」
「は、はぁ。ただ、機種によっては表示範囲が違いますから、必ずとはいえませんが……」
「そもそもさ、みんなは長いページいやじゃないの?」
「う、うーん……」
こんな感じで、新規クライアントさん(もしくは新担当さん)の元でケータイサイトを作ると、毎回のように「ページの長さ許容範囲問題」というのが話に登ります。先に言ってしまうと、個人的には「トップは長くて中は短い」が好みなのですが、考え方は人それぞれですし、答えも“状況”によって違うと思います。
ユーザビリティ、回遊性、更新感、情報量、表示可能容量の問題、メモリの問題などなど……と、この議論を進めるにはいろいろな検証が必要で、サイトのコンセプトやターゲットによっても答えが変わります。つまり「答えは1つではない」と思うのですが……。というわけで今回は、ケータイキャリア各社のポータルサイトを例に、「ページの長さ問題」をちょっと考えてみたいと思います。
まずは、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルのトップページを横に並べてみましょう。
ソフトバンクモバイルのトップは、「1画面主義」なので他者と比べて短いわけですが、かといって、ほかの2社と歴然とした差があるとも言えません。ドコモもauも2画面程度の長さしかなく、3社ともにトップは短いです。
話が入り組むので、軽く触れる程度にとどめますが、トップについては「リンクの数」を比較した方が面白いでしょうね。PCのポータルサイトの延長線上で考えられている……と、わたしが勝手に思っているau、ソフトバンクモバイルはリンクの数が多く、ドコモは少ないのです。次ページへのアクセス導線が絞り込まれているように思います。
少ない分スペースを大胆に使い、「ニュース」から「DCMX ID」と下部のPRエリア(ex恋うた診断)では、それぞれのリンク先に何があるのかをチラ見せしています。ソフトバンクの「ニュース」から「ランキング」と下部のPRエリア(exエッチ度、悪魔度にヘンタイ度)も同様の作りですが、ドコモのトップは、ソフトバンクのその部分を持ってきて拡大し「天気」や「株価」などの“名称のみリンク”をばっさり削ってしまっているような感じです。
一方auは……と書いていくと、別の話題になってしまうので自重します(笑)。これはまた別の機会に。ここでは、これだけ押さえておきます。
さて、「ページの長さ」というところだけに絞って、3社の違いを見て行くと、その差は2階層目に現れます。ここでは、3社の「ゲーム」ページを比較してみましょう。
いかがでしょう。ディスプレイの解像度の違いや表示サイズの違い、文字の大きさの違いなどもありますから、上の画像をそのままの比較するわけにもいかないのですが……、
「ドコモ長っ!!」
と皆さん思ったのではないでしょうか。こうした傾向は、ニュースやミュージック、動画のページでも同じことで、総じて2階層目は「ドコモ長っ!!」「au、ソフトバンクはどっこいどっこい」というあんばいです。
当然、3社にはそれぞれ狙いがあり、このページの長さになっているのでしょう。その狙いをここで推測してもなんなのでこれまた自重しますが、少しだけ触れると、ドコモはとにかく外のコンテンツプロバイダ(CP)へとアクセスを誘導させる作りを目指した結果、長いページに落ち着いたのかなと考えられます。
auとソフトバンクモバイルは「ポータルサイト内を回遊させ、CPにもアクセスさせる」という感じですけれども、ドコモのページを見ると「とにかくCPへユーザーを流します!」という意思を感じます。人の流れ=アクセスの流れを考えるとそう思えるんです。
前段で触れたとおり、ドコモはトップページのリンク数が絞られていますよね。これは、第2階層の限られたページ(ニュース、天気、ゲーム、動画ほか)に多くの人を流入させるためなのかなぁと。そして、人で賑わう第2階層ページに、できるだけ多くのCPコンテンツ棚だししている……という。まぁ、本当は単に、iメニュートップに情報を載せまくって容量を重くすると「トラフィックが……」とかそういう話でしかないのかもしれませんけども。
ただ、間違いなく言えるのは、au、ソフトバンクのように、トップにたくさんのリンク=選択肢があると、その分、第2階層の人通りは分散しますよね。トップページでの自由度が高いのはau、ソフトバンクですが、自由度の高さはユーザビリティと比例しません。ではどちらが正解なのか……。底辺の私にそれは分かりませんが、個人的な好みでいえば、ドコモさんが使っていてしっくりきます。
ちなみに、仕事でクライアントさんに「長いのはユーザビリティ悪いんじゃない?」といわれたとき自分は、「次のページへアクセスして、読み込みを待つよりも、スクロールしていろんなネタを流し読みする方が早くて便利だという人もいるんじゃないですかね」と、答えています。つまり、それがユーザーとしての私の意見です。
インデックス的なページは、容量とメモリの許す限り長くていいとすら思っています。もちろん、「固まらずに操作できる快適さ」が担保されているレベルでの話です。ボリュームが多いと思えば、ユーザーは途中から見なければいいだけですし(もちろんパケット代の問題もありますけども)。
ただ、そこから先にあるコンテンツは、長くも短くもない、「一口サイズ」にされていてほしい。ユーザーの立場になるとすっかりわがままに、あーだこーだ言えます(笑)
一方で、「インデックスにあたるページでリンクが多いと、どこを押したらいいのか分からないから、見づらいよ」という意見も理解できます。あとは、ターゲット層がどんな人たちなのか、どういうページを好むのかをリサーチしたうえで、自分たちがどんな狙いを持ってこのサイトを運営するのか、という点と照らし合わせながら、落としどころを探していくという作業ですよね。
こうして、3社のサイトを並べてみると、それが改めて分かります。同業者のみなさま。クライアントさんに、「あそこのサイトは長いから」とか「俺は短いのが好きだから」とか言われ、ちょっとコンセプト的にもターゲット的にもコンテンツ的にもその選択はどうなんだろう……となってしまったときは、3社のケータイをそろえて、クライアント様に見比べてもらうようにしましょう。
ときにライター、ときにデザイナー、ときにプランナー。某携帯電話関連会社にて某着メロ交換サイトを企画するなどといった若気のいたりを経て、2001年に独立。2004年には有限会社r.c.o.を設立。書籍、雑誌、ウェブの執筆・デザインなど、各種制作業務を中心に活動。2006年あたりから始まったケータイ業界再編の波にもまれていうるちに、近年では大手携帯電話会社のコンテンツ企画を手がけることになっていたりと、なんだか不思議な毎日。
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