“断片化”したモバイルインターネットの世界で、Googleが目指すものとはmobidec 2008(1/2 ページ)

» 2008年11月29日 03時11分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo グーグル 日本およびアジア太平洋地域 モバイルビジネス統括部長 ジョン・ラーゲリン氏

 世界のGoogleが日本のケータイ向けにリリースするサービスには、どんな狙いがあるのか――11月28日に行われたモバイルカンファレンス「mobidec 2008」において、グーグルの日本およびアジア太平洋地域 モバイルビジネス統括部長であるジョン・ラーゲリン氏が「モバイルインターネットにおける、Googleのアプローチ」と題した講演を行った。

 冒頭でラーゲリン氏は、「Googleのミッションは世界規模で情報と人を結びつけること。どうすれば情報を包括的かつ効率的に共有できるのか、そのことを日々、検討している。これはPCでもモバイルでも違いはない」とし、携帯電話に対するリテラシーが高く、ハードウェア(端末)だけでなく、インフラやサービスなどすべての面で高い品質を求める日本のユーザーが「モバイル向けサービスの世界をリードしていると思う」と述べた。

 「Googleの事業は、検索/広告/アプリケーションの3つをインターネットで提供することで成り立っているが、日本のケータイ市場はGoogleがサービスを提供する前からすでに大きな規模になっていた。そこでGoogleは、キャリアというパートナーを介して日本でサービスを根付かせることになった。例えば今年は、NTTドコモと提携し、ポータルサイト(iMenu)にGoogle検索を提供したのが大きなニュースだ」(ラーゲリン氏)

photophotophoto 日本でのGoogleの取り組み(写真=左)、検索を始めとするGoogle事業の3本柱(写真=中央)、提供中のケータイ向けGoogleサービス(写真=右)

モバイルの世界は断片化している

 日本ではすでに飽和状態と言われている携帯電話市場だが、世界規模でも成長の鈍化が指摘されている。しかしラーゲリン氏は、データ通信に限ってはまだまだ成長する余地があると見る。

 「世界には30億台のケータイがあるが、テレビはその3分の1(10億台)ほど。テレビと比べてみるとケータイのポテンシャルはもっと高くてもいいはずだが、残念ながらそれが生かされていない」(ラーゲリン氏)

 その理由としてラーゲリン氏が挙げたのが、携帯電話の環境がバラバラという点だ。キャリアごと、また端末メーカーや対応サービスごとに環境が異なることで、30億台という巨大市場に“フラグメンテーション”(断片化)を引き起こしているというのだ。

 「例えば世界には携帯電話の通信事業者が500社近くあるが、各社の環境は技術面でも運用面でもそれぞれ違う。携帯電話向けのOSは10種類くらいある上に、同じOSでも(ミドルウェアやソフトウェアを組み合わせた)実装の仕方もいろいろ。ケータイ向けのサービスを開発するには、この“環境の違い”を克服しなくてはならず、リソースが分断されてしまう。GoogleはPC向けサービスで成長してきた会社なので、開発部隊にケータイ向けサービスの企画を相談しても『せっかく作っても、キャリアが拒否すればそれまでじゃないか』と、PCではあまり意識することがない“環境の違い”をとても嫌がる(笑)」

 そのため、Googleが現在の日本で提供しているモバイル向けサービスは、基本的にケータイブラウザ上で動くものに限られている。中には「モバイルGoogleマップ」のように専用アプリを提供する場合もあるが、これは例外だという。

 「PC向けのGoogleサービスもその性質に合わせて、ブラウザ上で動くものとアプリケーションを作って提供するものに分けている。Googleのケータイ向けサービスも、中には専用アプリにしたほうが良い物もある」(ラーゲリン氏)

 ラーゲリン氏によると、“今の携帯電話”であればアプリケーション形式で提供したほうが快適に動作するという。というのも、現状のケータイブラウザは標準化されておらず、HTMLの再現性やAjaxへの対応に難があるためだ。

 「いずれ、ケータイブラウザがフルHTMLに対応し、標準的なものになれば、もっと多くのGoogleサービスがブラウザベースで動くだろう」(ラーゲリン氏)

ユーザーが検索するものは何か

 さまざまなサービスを展開するGoogleだが、その軸となるのが検索サービスでこれはモバイルでも変わらない。しかし、ユーザーがいつ、どこでケータイインターネットを使っているかを調べると、興味深い結果が出てくるという。

 「“モバイルで検索”というと、通勤通学途中とか外出先に利用しているイメージがあるが、意外に自宅からの接続が多い。1日の中では、お昼休み過ぎからアクセスが増え、夕方から夜にかけてピークを迎える。おそらく、帰宅後の夕食時に、テレビ番組やテレビCMでみたキーワードを検索しているのだろう」(ラーゲリン氏)

 また平日ではなく、週末にも検索の利用が延びるという。特に多くの人にとって休日である週末は、余暇としての外出が増え、購買意欲も高まるなど、企業にとっては格好の消費タイミングといえる。

 そこで広告主はキャンペーン情報をPC向けだけでなく、モバイルにも打つわけだが、そこで威力を発揮するのが、テレビCMの最後や交通広告などで特定のキーワードが入力された検索フォームとボタンを表示する手法の広告だ。2006年ごろから米国で普及し、いまでは採用例が2倍になったという。

 「ユーザーがネットで検索するのは、何か情報を見つけてそれを共有したいから。キーワード検索はテレビの影響が大きいが、友人や家族との会話から検索につながることも多い。何か分からない言葉を見たり聞いたとき、PCよりもケータイが身近にあるので、ケータイで検索するのだろう」(ラーゲリン氏)

photophotophoto モバイルインターネットの目的はメールを抜いて検索がトップになる(写真=左)。モバイルインターネットは自宅にいる時間に多くアクセスされる(写真=中央)、また週末の利用も多い(写真=右)

 PCのようなネット検索をケータイでしたいというニーズは非常に高く、またその欲求は満たされつつある。ラーゲリン氏はモバイルならではの検索機能として「新しい切り口が必要」と述べ、その1例として音声でGoogle検索が可能なiPhoneアプリ「Google Mobile App」最新版を挙げた。

 「声で検索するのは、通話が可能なケータイならではのもの。音声認識や、情報検索など、1つ1つははGoogleが開発する前からあったが、Googleがそれらをまとめた。実際に声で検索するかどうかは、人それぞれで、ユーザーのニーズ次第だ。だが技術が許すかぎり、新しいイノベーションを提供していきたい」(ラーゲリン氏)

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