2009年春の携帯電話商戦が激化する理由神尾寿の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年01月14日 12時10分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

 そしてもう1つ、ドコモには積極的に新規契約者を獲得しなければならない“内なる事情”もある。それが、既存ユーザーの買い換え需要減少による影響だ。

 ドコモでは2007年冬商戦から分離プランの「バリューコース」を導入し、端末販売に割賦制を用意した(参照記事)。そのため当時の最新機種だったFOMA 905iシリーズは大ヒット。2007年冬から2008年春にかけて多くのドコモユーザーが“24回払いの割賦で最新機種を購入”した。しかし、これにより今回の冬商戦は「携帯電話を積極的に買い換える層が、(2年割賦払いの)1年目に当たる。ドコモユーザーの端末買い換え需要の落ち込みは大きい」(ドコモショップを経営する販売会社幹部)という状況になったのだ。

 ただでさえ、携帯電話の販売市場は冷え込んでいる。それに加えてこれまで安定的なパイだった買い換え需要が目減りしてしまったため、販売会社や端末メーカーは苦しい状況にある。キャリアであるドコモは買い換え需要減で端末総販売数が落ち込んでも、契約者数が伸びれば収益的にはプラスだが、最新機種を中心に流通在庫が膨らみすぎるのは将来的な“投げ売り”の増加につながるため、好ましい状況ではない。これらの事情が絡まって、ドコモの矛先が“新規ユーザーの積極的な獲得”に向けられたのだ。

熾烈さが増す春商戦。過度な乱売合戦の恐れも

 むろん、いくら復調したといっても、市場競争がすべてドコモの思惑どおりにいくわけではない。

 対KDDIではauのブランドイメージ失墜や不手際に乗じられたものの、対ソフトバンクモバイルではそこまでドコモの狙い通りにはいかないだろう。特にソフトバンクモバイルで定着した「キャリア内音声定額」の利用スタイルは、ドコモにとって崩しにくい壁だ。また、広告宣伝や店頭キャンペーンの手法も、ソフトバンクモバイルはドコモよりはるかにうまく、2年目を迎えるホワイトプラン初期ユーザーの囲い込みに向けて新たな施策が打たれる可能性は高い。

 今年の春商戦は、反転攻勢にでるドコモとソフトバンクモバイルが激突、これ以上の凋落は何としても防ぎたいKDDI、そして新興市場を軸に大手3キャリアの付け入るすきを狙うイー・モバイルがぶつかりあい、かなり熾烈な店頭競争が繰り広げられそうだ。ユーザー視点では、こうした競争の活発化は割引キャンペーンといった恩恵につながるが、その一方無節操で過度な乱売合戦はユーザー間の新たな不公平の種にもなりかねない。キャリア各社がバランス感を持ち、まっとうな競争をすることに期待したい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年05月22日 更新
  1. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  2. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダーを実際に試してみた 画質やWi-Fiスマホ連携の使い勝手を検証 (2024年05月21日)
  3. Apple Watchを外出時にほぼ持ち出さなくなった理由 (2024年05月19日)
  4. ミッドレンジ「Xperia 10 VI」の進化ポイントを解説 デザイン刷新でも21:9ディスプレイ続投の理由は? (2024年05月20日)
  5. ダイソーで買える550円のスマホ向けカメラグリップを試してみた “あのライカ監修スマホ”が気になってしょうがない人に向いてる? (2024年05月20日)
  6. 「Galaxy A55 5G」のそっくりスマホ「Galaxy A35 5G」が海外で販売中 何が違う? (2024年05月21日)
  7. 「iOS 17.5.1」配信 削除した写真が表示されるバグを修正 (2024年05月21日)
  8. 「Galaxy S24 Ultra」のカメラを徹底検証 2億画素の10倍ズームは常用できるレベル AIやSペンを駆使した機能も秀逸 (2024年05月20日)
  9. ドコモが「dポイントクラブ」を改定する真の狙い “d払い併用”でも損する場合あり (2024年05月18日)
  10. 身に着けられる小型ドライブレコーダー&防犯カメラ「ライフレコーダー128」、クラウドファンディング開始 (2024年03月21日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年