法人向け国際ソリューションの分野では、ドコモは2008年6月、中国の上海に現地法人「ドコモチャイナ」を設立。顧客開拓と業務支援のモバイルソリューションを展開する。また、在外法人向けの携帯電話サービスも提供し、邦人ユーザーの現地での生活をサポートする。
「海外には約100万人の日本人が滞在している。こうした邦人ユーザーのニーズが最も高いのが“日本語メール”。アルファベットは1文字あたり1バイトだが、漢字とひらがなは2バイトが必要で、日本語の搭載は難しい。そこで、日本語のランゲージキットを海外端末に載せたものを販売し、(現地でも)ドコモのサービスを使ってもらうようにしている」(同)。
また、ドコモUSAは米国滞在の邦人向けの携帯電話取次販売も提供している。
海外出資と提携についてドコモは、「付加価値向上を図る成熟国への展開」と「ネットワークやコンテンツ提供による成長国への展開」という2つの軸で拡大していく計画だ。
「昨年はマレーシア、インド、バングラディッシュへ出資先を拡大した」と国枝氏が話すとおり、ドコモは2008年11月に、インドの通信オペレーター、TTSL(タタ・テレサービシズ)への出資を決定し、GSMネットワークライセンスを獲得した。「ビジネスプランとして売上とシェアを維持し、音楽やビデオクリップなどの付加サービスも、先進国と同じように提供していきたい」(国枝氏)
ドコモは海外の新規事業にも出資しており、ドコモの100%子会社・ドコモインタータッチは、“Global Mobile Support”のコンセプトの元、64カ国のホテルでブロードバンドアクセスサービスを提供している。「外ではケータイ、ホテルではブロードバンドアクセスが使えるよう、お客さんにバーチャルオフィス環境を提供する」と同氏。
iモードは現在、世界16の国と地域で約5400万人の契約者がおり、4800人〜4900万人が日本のユーザーだという。「日本のメーカーが海外向けのiモード端末を作らなくなっているので、垂直統合モデルによるiモード端末は減っている」と国枝氏。そこで新たな取り組みとしてドコモは、垂直統合モデルから水平分業モデルへの移行を目指す。
「簡単に言うと、WAP端末でiモードを使えるようにする。NokiaのS60ベースのオープンOSに(ドコモが開発した)アプリケーションを載せて、iモードコンテンツを使えるようにした。iモードを徐々にオープン化していき、ライセンス収入を稼いでいく」(国枝氏)
このほか、ドコモは2007年11月からイタリアのWIND向けにiチャネルのサービスを提供するほか、2009年1月には、台湾のFar EasTone Telecommunications(FET)向けにはF905iをベースにしたモデルを投入した。
海外のiモード利用はフランスのBouygues Telecom(ブイグ・テレコム)が最も高く、海外のアクティブユーザー100数十万人の2割以上を占めるという。このほか、イタリアのWINDとアイルランドのO2(オーツー)の利用率が高いという。ただし、「世界のiモード契約者数は、オーストラリアやロシアなどが撤退したこともあり、減ってきている。今後は一定数に安定させて増やしたい」(同)
世界での競争相手、特にVodafoneを仮想敵国と考えているのかという質問に対して国枝氏は「成長国はアジアとアフリカだけなので、世界中をハンティングするような行動には出ない。去年や一昨年の競争相手は、中近東の会社やVodafone以外の欧州の会社だったので、Vodafoneは仮想敵国とは見ていない」と回答。「国内市場は成熟しているので、新しい市場の1つとして海外を獲得したい。資金余力面でドコモと肩を並べて競争できる事業者はなかなかいない」と自信を見せた。
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