── 「美しい」つながりで、P001は画面の表示が大変きれいですね。こちらは何が違うのでしょう。
液晶デバイス担当の桑野伊織氏(以下、桑野氏) 液晶ディスプレイは、バックライトモジュールの上に液晶パネルを重ねて構成します。バックライトが発光する光を液晶パネルが受け、それを透過して絵や文字を表示するという仕組みです。
液晶パネルを拡大していくと、1ピクセルの中にRGB(光の三原色である赤、緑、青)の画素があります。この各RGBのカラーフィルターをどのくらい開け、バックライトの光をどの程度透過させるかによって何色が表示されるかが決まります。これが液晶ディスプレイの大まかな構造です。
ここで重要なのは、バックライトです。従来の液晶ディスプレイのバックライト(携帯に使う白色LED)は赤、緑、青のうち、赤と緑の光の成分が少ない弱点がありました。今までは青と黄(赤と緑を混合)の2色を主成分にして白い光を構成していたわけです。
今回の「高色再現性液晶」はこの弱点を克服すべく、きちんと赤、緑、青の3つの成分を出すバックライトを開発することから始まりました。
── 液晶ディスプレイのバックライトに使う白色LEDは、ただ白く光ればいいというものではないのですね。
桑野氏 そうです。従来のバックライトは青と黄色で白色を出していました。黄色の成分が多いので、例えば白く表示する部分はやや黄色っぽく、赤もややオレンジ色っぽくなりがちでした。
一般的な白色LEDは、青色ダイオードの周りに黄色の蛍光体(粒子)を塗布して構成しますが、P001のバックライトは黄色の発光体の代わりに緑と赤に発光する2つの蛍光体をブレンドして仕上げてあるのが大きな違いです。赤、緑、青の3色で白色を形成するので、バックライトの特性が液晶パネルの特性と一致させやすく、結果として非常に高い色再現性を得られるようになりました。
── 高い色再現性が特徴というと、au端末に採用例が多い有機ELなどもありますが。
桑野氏 P001の高色再現性液晶は、有機ELディスプレイに対しても劣らない発色性能があると思います。
バックライトとともに改善した液晶パネルのカラーフィルターも重要です。カラーフィルターは色味の濃さを調整するものとなります。色の濃さそのものはカラーフィルターを単に濃くすればいいという話になりますが、そのままですと明るさやコントラストに大きく影響してきます。ここを犠牲にせず、いかにカラーフィルターを濃くするかといった調整もかなり苦労しました。
新たに開発したこの2つの要素で、前機種のW61Pと比べて色再現範囲が約1.8倍(NTSC比)に向上しました。実機で確認していただくと、果物はよりみずみずしく色鮮やかに、肌色もより明るく自然に表示できるのを感じていただけると思います。
── 確かに実機で比べると、同じ画像なのに見た目の印象がかなり違いますね。では、Webやメール画面など、普段よく使う画面でもメリットはあるのでしょうか。
桑野氏 ここも、はっきりとよさが感じられると思います。色再現範囲が広がるということは、中間階層も総じて広がります。この効果で、単調なWeb画面なども鮮やかな色味を実現できます。
原理としては簡単な話ですが、グループ会社のバックライトメーカーによる設計段階から関わり、蛍光体そのものの選定から行ったので、開発には相当苦労しました。バックライトだけでも100種類以上もサンプルを作り、蛍光体のブレンド比はどうか、波長が緩やかなのかピーキーなのか……など、P001の開発が始まる約1年前からディスプレイは先行して開発していました。
── これを聞くと、なんだか欲しくなりますね。今後、ほかの“P”端末への採用などもあるのでしょうか。
堀江氏 もちろん検討しています。携帯電話のディスプレイは解像度やサイズだけでなく、弊社が重視する“人の目で見た表示の美しさ”も、より進化させていきたいと思っています。
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