基板からパッキンまで――中身を“いじめて”完成した回転2軸最薄防水「BRAVIA Phone U1」開発陣に聞く「BRAVIA Phone U1」(1/2 ページ)

» 2009年12月24日 09時58分 公開
[田中聡,ITmedia]
photo 「BRAVIA Phone U1」。ボディカラーはサファイアブラック、ゴールド、レッド

 auの2009年冬モデルとして発売されたソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「BRAVIA Phone U1」は、auでは初めてBRAVIAブランドを冠したモデルだ。高画質化技術を採り入れた「モバイルブラビアエンジン」や、ワンセグのフレームレートを30フレーム/秒に補間する「モーションフロー Lite」を搭載するなど映像機能を強化したのはもちろん、IPX5/IPX7等級の防水性能にも対応しており、より幅広いシーンで映像コンテンツを楽しめる。

 BRAVIAブランドに込めた意味とは。そして回転2軸型の防水ケータイでは最薄(2009年9月時点)となるボディを実現した秘密とは。ソニー・エリクソンに話を聞いた。

photo 左からソフトウェア担当の向井氏、商品企画担当の田中氏、デザイン担当の鈴木氏、機構設計担当の今井氏

「防水」と「おでかけ転送」で2つの“自由”を提供

photo 商品企画担当の田中氏

 ソニー・エリクソンはこれまで、「ウォークマンケータイ」や「Walkman Phone」「Cyber-shotケータイ」などのブランド連携モデルを投入してきた。BRAVIA Phone U1も、これらのモデルが築いてきた“AVエンターテインメント”を軸にしている。その上で、「BRAVIA Phoneを出すからには新しいユーザー体験を提供したかった」と商品企画担当の田中氏は話す。

 田中氏によると、ケータイで映像を楽しむ人は、カメラや音楽の利用者に比べて少ないという。「BRAVIA Phone U1は、そういった人たちにも映像エンターテインメントを楽しむきっかけを作りたいという思いから開発をスタートしました」と同氏は振り返る。そのために、高画質映像だけでなく、ユーザーのライフスタイルに合わせて映像を楽しめる自由を提供する必要があると考え、「防水」「おでかけ転送」を採用した。

 防水というと、バスルームでケータイを使うシーンが思い浮かぶが、防水を求める理由で最も多いのは「ケータイを水没で壊したくないから」だという。1台あたりの端末の利用期間が延びつつある中で、防水は長く愛用してもらうための大きな訴求ポイントといえる。

photo ソフトウェア担当の向井氏

 おでかけ転送は、ソニーのBlu-ray Discレコーダーで録画した映像をBRAVIA Phone U1へ転送できる機能で、“映像を持ち出す自由”を提供する。これまでも、同社はNTTドコモの「SO906i」でアナログ映像をケータイへ転送する機能は提供していたが、BRAVIA Phone U1ではデジタル映像を転送できるのが大きな特長。ソフトウェア担当の向井氏は「デジタルの暗号処理をしながら、30フレーム/秒の高フレームレートを実現するのが大変でした」と話す。

 「エンコード(暗号化)したデータを復号すると、暗号化と復号化がバッティングして負荷がかかるので、当初は理想的なフレームレートを出せませんでした。ただ、高負荷な環境でのエンコードは過去のワンセグ端末でもやってきたので、そこで培った技術を活用しました」(向井氏)

photo まだケータイで視聴していない映像は、サムネイル上に「NEW」アイコンが付く

 お出かけ転送の便利機能として、レジューム機能も採用した。例えば、自宅で録画した番組を途中まで見た状態でケータイに転送すると、ケータイでは中断した個所から再生が始まる。このほか、1度も見ていない動画にはサムネイル上に「NEW」アイコンを付けたり、ビュワースタイル時の操作ガイドを画面に表示するなど、細かい操作性にもこだわった。

大画面+タッチパネルを搭載しなかった理由

photophoto 「画面設定」から画質やモーションフロー Lite、長時間視聴などの設定ができる(写真=左)。画質設定は7種類を用意(写真=右)

 BRAVIA Phoneならではの機能として搭載したのが、コントラスト向上技術と輪郭強調技術を組み合わせた「モバイルブラビアエンジン」だ。この機能により、ワンセグやお出かけ転送の映像コンテンツを鮮やかな画質で再生できる。画質モードも拡大し、新たに「ニュース」「スポーツ」「映画」「音楽」を設けた。

 「これまでも輪郭の強調度を変える設定はありましたが、コンテンツに応じて最適なモードで映像を楽しんでもらうことを狙いました」と田中氏は説明する。例えば、画質と音声出力効果設定を「ニュース」にすると、テロップがくっきり表示され、アナウンサーのナレーションが聞こえやすくなる。「スポーツ」では試合場に芝が多いことを考慮して緑を強調し、アナウンサーの声よりも歓声が聞こえやすくなる。また、音声を「バスルーム」に設定すると、音の反響が抑えられクリアな音声になる。「今までの防水ワンセグとは違う体験を提供できたと思います」と田中氏も自信を見せる。

 ワンセグではバッテリーの持ちを気にする人が多いことから、画質、音声出力効果、明るさ設定を無効に、モーションフロー Liteもオフにして消費電力を抑える「長時間視聴モード」を新たに搭載した。このモードを利用することで、ワンセグの連続視聴時間(4時間)が最大5時間に延びる(モーションフロー Liteをオンにすると連続視聴時間が若干下がる)。また、ワンセグの連続視聴時間と、録画したワンセグ映像・おでかけ転送で移した映像の連続再生時間は同じだ。

 この冬モデルでは3.2〜3.4インチのディスプレイを搭載したモデルが増えているが、BRAVIA Phone U1のディスプレイは3.0インチ。映像に注力したモデルならもう少し画面が大きくてもよかったのではとも思う。この点について田中氏は「今回は映像を楽しむきっかけを与えたかったことを重視しました。画面が大きくなると本体も大きくなるので、初心者向け機種としても使えるサイズ感を重視しました」と説明する。

 タッチパネルについては、利用することでかえって操作が煩雑になることを懸念し、搭載を見送ったという。「分かりやすいサイドキーで、これまでと変わらず操作できることに主眼を置きました」と田中氏は話す。また、「映像美を楽しむにあたって、液晶はきれいなまま保ちたい」という意図もあったようだ。今後のモデルでタッチパネルを搭載するかについては「お客様のニーズや市場のタイミングから検討する」とのことだ。

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